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空気は読める

産休、育休は想像以上に苦しい時間だった。

ずっと働いてきて、こんなに保障された中で休みがもらえるなんて、夢のようだと思ってた。でも現実は違った。

赤ちゃんと一緒にいることで、社会から隔絶される。社会参加を切られてしまった。と、私は感じた。

アクティブなママだと、ママ友の輪という新しい社会の輪を広げて、この生活を謳歌するのかもしれない。しかし、新米ママ、そして年齢を重ね、新たな所へ入っていくためのエネルギー不足により、それはできなかった。

だから、育休終了は、子供を思うと、大丈夫だろうかという心配は尽きなかったが、仕事に復帰できる喜びも大きくあった。


復帰初日。他のメンバーにこれまで迷惑をかけてきた分、少しでもお荷物にならないよう頭をフル回転させてながら、無駄な動きもしながら仕事をしていた。

ふと、利用者さんから

「赤ちゃん、元気?大丈夫?」と声をかけられた。

「あー、うん。大丈夫。ありがとう」

ふっと、肩の力が抜けるのをはっきりと感じた。こんなに力を入れて仕事してたんだ。気張りすぎていた。

こうして、声をかけてきた利用者さんは、重度の知的障害と自閉症を持つ人。自傷、他害行為も併せ持つ、やり手の自閉症。会話をしていても、こだわりの会話にいつの間にか変化し、それによりパニックになることもしばしば。

そんな利用者Aさんが、ふとかけてくれた一言。これはこだわりの会話ではなく、本当に私との世間話し。私に力が入っていることがわかったのか。もっと、力を抜いて、視野を広く持てよと言われているようだった。

Aさんにはそんな深い意味はないかもしれないけれど、声をかけてくれたタイミング、話しの内容がその時の私にははまり、力が抜けた。

空気が読めないとか、言われるけれど、付き合ってみると、彼らはかなり空気を読んで生活をしている。私以上に、その場の空気を感じ、行動している。それが、いい方向に向かうときもあれば、パニックに繋がっていく場合もあるけれど、こんな風に優しく、年長者として声をかけてくれることもある。そんな時は、素直に「ありがとう」と言えるし、そのありがとうは、妹にでもなった気分で伝えている。

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