兄貴の居場所
転んでも怪我をしにくく保護された場所で、ただ走り回る。2歳児はそれに加え「きゃー」と叫び声も付けている。恐らく頭の中は澄み切っているだろう。
4歳にもなると事情が違うようで、兄は無邪気に走り回るわけにはいかないみたい。周りをみて、弟の居場所を確認して。でも、楽しく過ごしたい、けど集中できる方法が見つからず、弟に絡みに行く。
大人は外野で見守り。すると弟は、知らない同じく見守るパパさんにところに愛想を振りまきに行く。とても優しいパパさんは、ニコッと笑ってくれる。これに調子づいた弟は再びそのパパさんのところに。すると、優しいパパさんは、タッチ、と手を出してくれ、これまた楽しくタッチさせてもらう。
そんな様子を、兄は羨ましそうに見て、本人もそのパパさんに近づく。同じようにタッチをしようと、そのパパさんは手を出してくれたけど、兄は恥ずかしさ先行でタッチできず逃げてしまう。その後も結局、思いっきりは楽しめず、ここでの時間は終了。
この時間を見守った私は、小さい頃の自分と重なる。そして、この時の兄の気持ちがよくわかる。
どうやって楽しいことに集中して遊べるかわからず、弟に絡みにく。でも弟は一人で十分楽しんでいるから、絡む兄貴がうっとうしいし、あまり見えていない。
優しい大人や年長者が心を開いてくれているのに、それに対して素直に反応できない。
これらは成長の過程なのか、個人の性格の問題なのか。
部活動に入れるようになった4年生。吹奏楽部に入ってみた。すると、主将の6年生のお姉さんが優しく迎えてくれた。そして、場所を与えてくれる。これまた優しく指導してくれるお姉さん付きで。
とてもうれしかった。キラキラした環境で、とても大人に見えるお姉さんたちのいるグループの一員になれて、女子力が上がっている感じだった。
そして、指導係のお姉さんが優しく教えてくれるのに、照れもあり、素直に聞かず、いたずらに走る。するとお姉さんは「ダメダメ」と優しく相手をしてくれた。これがまた、うれしさを刺激して、調子にのり、エスカレートしていく。しかし、お姉さんといえど、相手は小学生。言うことを聞かない新人は相手をしてられないと、離れてしまう。
あー、やりすぎた。。。
年に一度の親族との集まり。いとこはみんな年上。さらに、うちの家族だけ離れて暮らしている。日常、いとこ同士は会って遊ぶことがあるが、私たちだけは年に一度だけ顔を合わす。そのため、他人以上に他人。
そんな中、弟はすぐにいとこの中に入り込み、楽しく過ごし始める。私は、この環境に全くのお手上げ。母や父にまとわりつくも、相手にしてもらえず、無駄に長い時間が過ぎるだけ。つまらなさ限界で、楽しそうに過ごす弟に絡みに行くも、いとこの中に入り込んでいるため、絡みにもいけない。
自分の子供の姿をみて、ふと、これらのことを思い出した。なんだか、やるせない気持ちだよね。わかる。でもそれをどう、クリアすべきか、提案できない。私もわからないから。わからないことだけはわかる。
いとことの関りも、知らない大人との関りもそう、私は年齢の違う人と、どうやって自分を出していいのかわからなかった。自分を出す、年長者には甘える、年少者には愛でることか。
雷が家の近くでたくさん落ちていたある日。家が響き、揺れ、停電もした。元来、雷が苦手な私は、この時小学4年生。恐怖過ぎて、パニックしていたのだろう、大泣きし、父親に抱き着いていた。電気が復旧すると、自分も我に返る。泣いてる、父親に抱き着いている。
そして、父親は優しい表情でそっと、手をまわしてくれていた。温かかった。
こんなこと、してもらえるんだ。こんなことして”お姉ちゃんなのに恥ずかしい奴”って言わないんだ。
ほっとした。
こんな経験をもっとしていれば、素直に甘えていれば、家族以外の人と出会たとき、相手に好かれ、自分自身も楽しい行動がとれたのかもしれない。一番身近にいる大人、両親に対して、どうしても”お姉ちゃんでしょ、お姉ちゃんなのに”が頭をよぎり、甘える、という行動、言葉が出せなかった。
今、私は4歳の子供に、
「弟は赤ちゃんだから、わからないから」
なんて言葉をつい言ってしまう。
違うんだろう。あなたの気持ちもわかる、ごめん、と抱きしめた上で、解決策を提案しないと、親のイライラ先行で、兄だから分かれよ!!兄だろ!!と伝えるのは彼を追い詰めることになる。
強引にでも甘える場所を取りに来る弟。それができない兄。兄にこそ、両親の場所で甘えていい場所をはっきり作って、出してあげないといけないのかもしれない。
だって、長男は両親を独り占めできていた時間を急に奪われて、兄にさせられたのだから。
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