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ポスト資本主義社会の本質的なパラダイムシフトとは?

この1年間、
私は教育学部に通っている身ではあるが、
人間の意識の発達段階や深層心理について深く学んできた。

今年の2月に、親友から
『THE MENTAL MODEL』を教えてもらった時の衝撃は、
いまだに忘れることはできない。

この本と出会ってから、
数々の勉強会、ワークショップに参加し、
そこから学んだ理論と、自らの経験との照合を通じて、
メタ認知能力を高め、自らの意識レベルの向上に力を注いだ結果、
現実で蠢く非本質的なことには、惑わされなくなってきた。

別に批判をするわけではないが、
自分にとって無目的だった就活はパッと切り捨てたし、

頭の中で無理やり構築した、
自らの「ビジョンめいたもの」に、
向かっていくことをやめることもできた。

さて、本記事では、
そんな1年間の到達点として、
人間の意識のパラダイムシフトと、
そこから見える組織や社会の展望について、
思考を結晶化させたいと思う。

具体的には、
まず人間の意識のパラダイムについて紹介したのち、
その構造が、組織に対してもそのまま転用できることを示す。

そして最後に、
議論を組織から社会全体のレベルまで昇華させた上で、
ポスト資本主義社会のあり方について、議論をしていく。

少々備忘録としての要素が強いので、
詳細を省く箇所があるかもしれないが、
この世界観に興味を持ってくれる方がもしいれば、
ぜひ気軽に連絡してください。

人間の意識段階と、
そこから見える組織や社会の展望に関心を持ち、
自らの意識レベルを高めようという強い進化欲求を持つ。
そんな同志からの連絡を、心から楽しみに待っています。

※参考文献などは、本記事の末尾に記載しております。


「適合」から「統合」のパラダイムへ

人間の意識の発達段階は、
様々な細かい区分けはあるものの、
本質的には「適合」と「統合」のパラダイムに分けられる。

適合のパラダイムとは、
不本意に降りかかってくる現実に対して、
自らの生存OSをドライブさせ、
うまく対処していくだけの世界線である。

生存OSとは、
「怖れ」や「痛み」から逃れるために、
生まれ持った信念を駆動させて、
現実世界を生き抜いてくシステムのこと。

この「生まれ持った信念」というのは、
もちろん人によって違うのだが、

主に幼少期の経験によって強化され、
私たちが成長して大人になる頃には、
この信念にがんじ絡めになってしてしまう。

親に、先生に怒られたから、
こういう自分は表現してはいけない。

友達に笑われてしまったから、
こういう自分は表現しないようにしよう。

そうやって現実からのフィードバックを元に、
どんな自分を表現するのが「いいこと」で、
どんな自分を表現するのが「悪いこと」なのか、
についての理解を蓄積していくのだ。

この世界に適合するため、
そして、何より自分が傷つかないために、
「いい」とされる自分だけを表現し、
「悪い」とされる自分は表現しないようになっていく。

そんな陰陽、二項対立の世界。
これが適合のパラダイムで起きていることである。

一方、統合のパラダイムとは、
自分が生まれ持った願いに意識が向き、
そこから湧き出てくるエネルギーをドライブさせて、
自らの望む現実を創り出していく世界線である。

人間には生まれ持った願い、核のようなものがあり、
本来それを表現することにこそ、生きる喜びを感じる。

しかし、適合のパラダイムの中では、
それがしばしば抑圧されてしまい、うまく表現することができない。

その葛藤こそが、
人生に対して感じる違和感、もやもやの正体である。

この違和感が限界に達し、
人によっては錯乱状態、パニック状態のような形に
何度か陥った先に見えてくるのが、
統合のパラダイムである、

適合のパラダイムでは、
「これはいい自分」「これは悪い自分」という二元論で語り、
「悪い自分」を抑圧することで、現実に適合してきた。

しかし、統合のパラダイムでは、
「いい自分」も「悪い自分」も「ある」よね、と存在を承認し、
その上で、自分の核となる願いに意識を向けていくのである。

生まれてからずっと囚われてきた信念を知り、
それを手放し、新しいものを自らの手で選び取っていく。

そして、
自分の核となる願いを表現するための行動を重ね、
自らが真に望む現実を創り出していけるようになる。

これが統合のパラダイムである。

次節以降では、
個人の意識の発達段階と、
組織・社会の発達の相同性を示すため、
本節での議論をパラフレーズしながら、議論を進めていく。


個人における「適合」から「統合」へのパラダイムシフト

まずもっての前提として、
人間の心がどうなっているのかについて、
簡単にモデル化したいと思う。

人間の心とは、
様々な「自分」で成り立っているものであり、
様々な個性や人格を持った「自分」が存在している。

喩えるならば、
人間の心は、様々な「自分」で構成された組織のようなものだ、
と思ってもらえるとわかりやすいだろうか。

そして、現実に何か出来事が発生すると、
それに対して様々な「自分」が発生する。

例えば、
「今日は大事な仕事がある」という現実に対して、
「頑張ろう」と思う「自分」もいれば、
「自信ないな」「テキトーにやりたいな」と思う「自分」もいるだろう。

この状況において、
後者のネガティブな「自分」の存在を否定してしまうことが、
心の葛藤につながるのだ。

これは前節における、
「いい自分」「悪い自分」を存在承認することなく、
「いい自分」だけを必死に出そうとする状態が、
これが葛藤につながっている、という議論と同じだ。

このように外からの影響、
つまりはその時々の現実によって揺れ動く「自分」のことを、
『反応本音』と呼ぶ。

一方で、前節でも指摘した通り、
人間には生まれ持った、その人の核になる願いがある。

このような、
もともと揺るがずに安定している「自分」のことを
『真本音』と呼ぶ。

つまり、
反応本音の波に飲まれているだけ、
つまりは現実に適合することに終始するだけの状態が、
適合のパラダイムであり、

一方で、
自らの核となる願いである真本音を把握し、
それがリーダーとなって反応本音もまとめあげている状態が、
統合のパラダイムである、ということができる。


組織における「適合」から「統合」へのパラダイムシフト

前節における前提として、
人間の心には様々な「自分」がいて、
その様々な「自分」を構成員とした組織のようなものだ、
という風に定義した。

そして、この構造は、
まさに実際の組織にも応用できるものなのである。

つまり、
個人の心の中を構成する要素を、
実際に組織や社会における個人として見立てて考えるのだ。

そう考えると、
適合のパラダイムにいる組織とは、
例えば資本主義化において、利益追及を至上命題とする組織が挙げられるだろう。

利益をあげなくてはならないという現実に対して、
そこに踏ん張れるメンバーと、そうでないメンバーがいて、
その軋轢が組織を歪め、結果的に利益追及のためのシステムが回らなくなってしまう。

これは個人の心の中で起きている「葛藤」と構造上全く同じであり、
これが適合のパラダイムにいる組織の限界である。

一方、統合のパラダイムにいる組織というのも、
結局は個人の心の状態と同じ構造になっている。

個人における統合とは、
『真本音』が『反応本音』をリーダーのように率いている状態であった。

組織においては、実際の人がメンバーであるので、
『真本音』の役割を果たす人、つまり統合の度合いが高い人が、
リーダーとして周りの人を巻きこみながら、本質的な方向へと向かうのだ。

つまり、組織を統合のパラダイムへと向かわせるには、
まずもって組織の構成員の統合の度合いを高めなくてはならない。

これが結論である。


ポスト資本主義社会に向けて

そしてこれは、組織を超えた、
「社会」という枠で見ても、全く同じ構造が当てはまると思うのだ。

現代社会は、ほとんどが資本主義という形状を取り、
その中で経済発展を成し遂げなくてはならない、という現実を迫られている。

そして、その結果として、
世界は未曾有の危機に晒されているといっても過言ではない。

現行の資本主義というパラダイムからの、
本質的な移行をしなければならない時が来ているのだ。

そう確信したのは、
斎藤幸平さんの『人新世の資本論』を読んでからだ。

詳述はしないが、
いかに資本主義的な活動が気候変動へ甚大な影響を与え、
かつ今後予測される被害が甚大であるかが示されており、

したがって、現状のパリ協定やSDGsなどの取り組みは意味をなさず、
もっと抜本的な、経済成長という文脈での脱成長が不可欠である、
という風に結論づけられている。

そう、経済学の観点からも、
本格的に、資本主義に変わる新しいパラダイムを創出しなくてはならないのだ。

とはいっても、
国家や民間の企業が新しいシステムを作って、
現行のモデルを外側から変えるようなアプローチでは、
また同じ崩壊の道を歩むこととなるだろう。

表層的な問題を解決して被害を軽減したり、
外側から無理やりシステムの形を変えるようなことでは、
本質的なパラダイムシフトが起きることはない。

もうそのようなことが求められる時代ではないのだ。

組織へのアプローチと同様、本質的に重要なのは、
個人の意識レベルを進化させることだ。

自らの生まれ持った願いに意識を向けられる、
統合のパラダイムで生きる人を増やすことだ。

外側の世界から、現実を無理に変えようとするのではなく、
内側の世界から、現実を理想的な形へと創出していく。

この本質は、
個人のレベルでも、
組織でも、社会のレベルでも変わりはない。

それが実現された時に、
資本主義に変わる新しいパラダイムが、
人工的に構築されるのではなく、
ある種自然発生的に創出される。そう信じている。


おわりに

遅かれ早かれ、
今後はコミュニティ分化の時代がやってくる。

自分と同じ波長を持った人、
自分と同じセンスの良さを持った人。

活動する領域なんかははるかに飛び越えて、
そういう”人間力”とも呼ぶべきものが一致する人たち同士で、
コミュニティが形成されていくのだろう。

そして私の仮説として、
それは意識レベルの高さに比例するように思う。

だからこそ、
自分もはるかな高みを目指していきたいし、
それと同時に、社会全体の意識レベルを高めることにも
なみなみならぬ関心がある。

統合のパラダイムを生きる人たちが作り出す世界。
自分の核となる願いから、現実を創出していく世界。

1人だけで見られる世界には限界があって、
多くの人と協働するからこそ、はるかに広い世界が見えるようになる。

これは高みを目指すというベクトルとは違った、
地平線を広げていく、とでもいうべき感覚。

そこには、何よりも楽しい世界が待っているんじゃないかって、
そんなワクワクが止まらないような、年の瀬に立っている。

だからこそ、
まずは自分の意識レベルを圧倒的に高めていく。

自分が到達した世界にしか、
人を導くことはできない、社会を変えることなどできない。

コーチングの手法は世の中にたくさん転がってるけど、
いくら手法を学んだところで、本物にはなれないのだ。

方法論で着飾ったニセモノではなく、
誰もが目を見張るホンモノになっていくために。

そして、人類の歴史を根底から揺るがすような、
大きなムーブメントを起こすために。

ここまで読んでくださり、
ありがとうございました。
来年も、どうぞよろしくお願いします。


参考文献等

◉適合・統合の概念

『THE MENTAL MODEL』および、その著者である由佐美加子さんのWSから学んだことをベースに記述。

◉反応本音・真本音の概念

株式会社ITSUDATSU代表取締役CEO 黒澤伶さんからご教授いただいた内容をベースに記述。

◉経済関連

斎藤幸平著、『人新世の資本論』、2020年、集英社新書

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