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心むしばむ就職活動。②会社への疑念と社会への不信編

就職活動の何もかもが、受け入れがたいことの連続だった。

夢や目標をむりやり作り出すあの感じ。これまでの人生のつじつま合わせをするようなあの作業。

嘘をつくことは悪ではない。でも、自分の過去や未来を偽ったとき、生命としての気高さとヒトとしての雅やかな心は失われるんじゃないか。

就職留年を経て25卒になったわっしの就職体験、続きです~。

大学3年8月~

この時期の就職活動は、多くの企業が開催するサマーインターンシップへのエントリーが中心となる。

インターンシップというのは、職業体験のこと。
1日だけの、簡単なグループワークで就業イメージをつかむものもあれば、1週間くらいかけて、しっかり1つのプロジェクトに取り組むものもある。

このワークを通じて自分の職業適性を見たり、参加特典として本先行での優遇を受けたりすることが、インターンシップの目的だ。

優秀な学生を早く確保したい会社側としても、良い会社に就職したい学生側としてもね。

もちろん誰でも参加できるわけではなく、エントリーシート(ES)や面接での選考を突破しなければならない。

ともかく、この夏を経て、志望業界や職種を徐々に絞っていくのが典型的な就職活動の進め方になる。

色々な選考を受けたり、色々な会社の様子を知ったりすることで、社会に抱いていた違和感は、やがて疑念や不信感に昇華していく……。

勤務地

これは完全に価値観の話だが、わっしは全国転勤を受け入れることができないなと思った。

だって、全くゆかりのない場所で、初めての仕事をするなんて、どうやってもパフォーマンスが低くなってしまうよ。

それに、住む場所や生活地域を他人に指定されるという状況が、きっと耐えられない。

大学で友人を2人しか作れなかった自分が、新しい土地や新たな出会いを楽しめるわけもない。

だから、この夏の時点で、多少収入を抑えることになっても、全国転勤のない会社に行きたいなと思うようになった。

そりゃ、彼を転勤させたらその部署にとって大きな損失になる……!!というくらいの人材になれば、転勤せずにすむのかもしれない。

だけど、業界によっては数年おきに支社⇔本社を往復しなければならないようなところもある。やっぱりそういうところに身を置くのは、自分に合っていないよな。

実際、全国転勤のある会社の座談会に参加して、転勤についてどう思っているかという質問を何人もの社員さんに投げかけた。

「新しい環境にどんどん『飛び込み』たい!だから、全く気にならないよ」という社員さんがいた。
共感はできないが、まあ理解はできる。それに加えて、大きな会社だったら人脈とか出世ルートとかの事情もあるのだろう。

「旅行が好きだから、転勤も楽しめる」という社員さん。
これはとても納得できる。

「ああ……あんまり気にしてなかったなぁ」という社員さんもいる。
わけがわからない。自分の住む場所やライフプランが気にならない、なんてことがあるのだろうか。

自己分析と人生の抽象化

多くの学生は、インターンシップ選考や本選考の前に、自己分析という作業に取り組むことになる。

例えば、幼少期から今までを振り返り、一貫してきた自分の性格を再確認したり、何か大きな変化があったときに考えたことを思い出したりする作業だ。

これは、もちろん面接で長所や過去の経験を尋ねられた時にすぐ答えられるようにするためでもあり、自分自身を客観視して企業や職種とのマッチ具合をおおよそ判断し、キャリアプランを描く基礎にするためでもある。

自分のことを相手にわかりやすく話すためには必要な準備だし、志望動機などに説得力を持たせる材料集めとして、重要な作業だ。

それはわかる。

でも、自分の人生を抽象化させたときに浮かび上がってきたものが、会社の業務を抽象化させた文言に、ピタリと当てはまることがあるだろうか。

人生のターニングポイントに「なぜ?」を繰り返して出てきた答えが、説得力のある予定調和なものになるだろうか。

ちょっと話が飛躍しましたね。

まず、具体的な企業の求める人物像を見てみます。

求める人材像:多様な強い「個」
 01 ユニークネス(一人ひとりがユニークな個性を持つ)
 02 インディペンデント・シンカー(自立的な発想で物事やビジネスを考えることができる)
 03 インクルージョン(一人でできることは限られている、だからこそ異なる得意技をもった人材が力を合わせる)

三井物産採用ポータルサイト

こんな感じ。元のサイトにはもっと詳しく書いてあります。

私は三井物産の選考を受けていないし、上記の文言を批判する気もない。

むしろ、採用サイトをよく見るほどに、三井物産という会社で働くにあたって必要な力や目指すべき姿を端的に言い表した、素敵な文言だと思う。(ちょっと横文字がキザだけど)

では、ある学生が自分の人生を振り返って、「ああ、俺って自立的な発想で物事やビジネスを考えてきたし、まさにインディペンデント・シンカーだな。じゃあ、三井物産にエントリーしてみるか」となるだろうか?

きっとならないだろうし、面接の際には、求める人物像に近い部分を自己分析から持ってきて、形を整えて話すのだろう。(本当にぴたりと一致する人が入社しているのなら、とても良いと思います)

これは仕方ないことだ。

だが、この「自分の過去や未来に多少でも偽りを含めて話す」のが、わっしには耐えられなかった。

例えば、転職時に自分の仕事内容をかいつまんで、きれいに並べて話すのは、たぶん大丈夫。

でも、仕事とは関係なかった今までの人生を、仕事向きに作り替えて話すなんてできない。

それどころか、学生たちがよくやりがちな、ガクチカ(学生時代に力をいれたこと)を盛って話すとか、やりたくもないのに「3年後にはリーダーになりたい」と言ったりとか、本当に信じられない。

だって、それは自分の過去や未来に嘘をつくってことでしょ?

面接官に対して嘘をつくのは、もう仕方がない。わっしも、家族構成を突っ込まれて嫌な気分がしたから、適当にかわしたことはある。

でも、かつて頑張ったことを改変するのは過去の自分を否定することだし、思い描いていない計画を語るのは、未来の自分を裏切ることだろ?

それは、先天的な『気高さ』を捨てることだし、精神的な死の忘却を迎え入れることと同義だ。

わっしは高校の時にギターを死ぬほど頑張った。

RADWINPSの「前前前世」のMVがかっこよかったからギターを始めたし、校内で1番のギタリストになりたかったから練習を続けられた。

「MVの何がかっこよかったの?」と言われれば、「全部」だし、
「『1番のギタリスト』を具体的に定義すると?」と聞かれれば、「最強のギタリスト」のことだ。

当時は本気でそう思っていた。説得力など微塵もないけど、これが事実だ。

このエッセイもそう。書きたいから書く。書くのが楽しいから書く。

それ以上の理由も目標設定もない。

そもそも、何かを決めるときに、何かを頑張るときに、自分でなく誰かを説得できるような理由探しをする奴がいるのか?

ビジネスなら必要だ。でも、そうでない場合は?

面接官、あなたはそうなのか?

あなたの人生の決断は、ローンの審査が通過するように、誰が見ても納得する形で決めたのか?

あなたは何か、本能や直観に突き動かされて、他人に理解されないような理由だけど、全力で取り組んだことはないのか?

仕事や公的な決めごとをする基準と、生活の決めごとをする基準は全く異なるから、同一視しないでほしい。

でも、そうなると会社側は学生を判断する材料がなくなってしまう。はぁ。

こんなことを考えていると、どこにもエントリーできなくなってしまうので、気をつけてくださいね。

選考イベントの不信感

ある会社説明会に出席したときのこと。

就活支援サービスからの紹介で参加した会社で、説明会はzoomにて実施された。オンライン就活、現代っぽい。

ちょっと特殊なマーケティングの仕組みを取り入れているらしく、少し興味も沸いたし聞き逃してしまったところもいくつかあったので、後日別の日程で再度参加した。

おや?と思った。話の内容が変わらないのは当然だが、間の取り方やちょっとしたジョークも前回と同じように感じる。台本を精密に作りこみ、忠実に読み上げているのだろうか。

疑惑が確信に変わったのは、説明終了後10分ほど設けられた、質疑応答タイム。

学生がzoomのコメント欄に質問を送り、そのいくつかを社員さんが選んで答えるという方式だったのだが、1回目と2回目で読み上げられる質問が一言一句同じだった。

それに、画面をよく見れば、普通は[話し手+話し手の画面共有]が表示されるところが、[話し手の画面共有]しか表示されず、画面を共有しているはずの話し手はミュートになっていた。

つまり、あたかもリアルタイムで説明会をやっているように見せながら、実態は事前に録画していた内容を配信していただけだったのだ。

質疑応答の始まるタイミングで、「お、今続々と質問が来ていますよ~」などとのたまいながら、自社に都合のよい自作の質問に答えているだけ。

なんて不誠実なのだろう。

他にも不誠実なイベントとして、「グループディスカッション練習会」があった。

30名ほど集まった学生がチームに分かれて何度かグループディスカッションをし、その様子を数社の人事が確認する。

ディスカッション終了後には人事からのフィードバックがあり、優秀な学生には優先して選考枠が与えられるかも……!?という趣旨のイベントだ。

グループディスカッションとは、学生4~6人ほどが1つのグループとなって、与えられたお題に対してグループとしての回答を導き出し発表する、という選考フローの一つ。

ほとんどの本選考・インターンシップ選考に組み込まれている。

当初、わっしはこれに苦手意識があったので、練習会に参加することにした。

当日は優秀な学生が集まり、その日2回目のディスカッションでは、あまりにハイレベルな会話内容から全く議論についていくことができず、終始無言になってしまった(これは本当に良くないことです、チームのみんなにも申し訳ない)。

色々反省しながらイベント終了を迎え、メールボックスを見るとイベントに参加していた4社ほどからメールが来ていた。

そのうち2社からは、【イベント参加者のうち優秀者5名のみに送信しています】【優秀な結果を残した方限定のご紹介】という件名が。

全く議論についていけず黙りこくっていたわっしが、イベントで優秀だと判断されるわけもないのに、こんなことを言われるのである。

おそらく、参加者全員に送っているのだろう。

こんな件名詐欺メールを送っていて、恥ずかしくないのだろうか。

これでは、ディスカッション後にいただいたフィードバックも、適当なことを言っていただけなんじゃないかという気がしてくる。


進路決定において、こんな不誠実な態度をとる会社もいる、たくさん話を偽る学生がいる、という事実が私を苦しめる。

就職活動って、本当にこんなに不健康な仕組みなの?

就活開始から抱いていた違和感は疑念に、疑念はやがて会社や社会への不信へと育っていく。

こんなに膨れ上がった負の気持ちを抱えながら、自分の進路を決めたくないよ。

19世紀末、見通しが悪く息苦しい霧のロンドン・シティを、かすかなガス灯頼りに彷徨っている気分がした。

その後はある企業のダイレクトメッセージから、エンタメ業界・企画職を志すようになり、サマー・ウインターインターンシップ期間を経て、本選考期間に突入するのだが……。


勢いで書きます。推こうしてたら書けません。

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