掌編「帰省盆」
「あーあったあった。あれ、あれがうちの盆灯籠じゃろう」
「あんなところで回り出したか?」
「あんなとこゆ-て、あんたあれ、あの子のとこの娘でしょうが。もう長い事一人暮らししよるんじゃけえ」
「あれほんまじゃ、よう見りゃ顔がそっくりじゃ。ほんならあれか、あそこへ帰りゃええんか?今年は」
「ほいでも待ちんさい。仏壇はあれよ、去年のとこへあるんよ。御供はあっちへ届きよる」
「ほんまじゃ、線香も焚いてあるな。じゃわしらどっちへ行きゃあええんかの」
「馬鹿じゃねえ、どっちも順番に顔出したらええんよ、たったひと駅じゃけえ」
「ひと駅言うて、え?あんた電車使こうて行くんか?」
「何がいけんの?」
「いけんとは言うとらん。わざわざ使わんでもえかろうに」
「わざわざって・・・ほんならあんた歩いてくん?歩いたらよけえ暑いじゃろう」
「ほんでもわしらあれよ、器なんかもうないんじゃけ、ぱっといけるじゃろ」
「まあーこれじゃけ歳取るといけんよ、風情も色気もなーんにも、ないんじゃけえ」
「何がね?」
「まあいいわ。近頃はあれじゃろ?分散とかずらし旅、言うんが流行りじゃろ?」
「らしいの」
「みんな好き好き回って行こうじゃあない」
「ほんならそうしようか」
「ちょっと待って」
「なんね」
「帰る前には合流するじゃろ?わしはあんたとどうやって合流すりゃあええ?」
「ーーLINEして」
皆々様、お盆です。
Fin.
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