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箸休め

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連載小説の息抜きに、気ままに文を書き下ろしています。文体もテーマも自由な随筆、エッセイの集まりです。あなた好みが見つかれば嬉しく思います。
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#日記

「からす、コアラのマーチ、雲の波」

こんなことがあった。 天気の良い午後、探し物があって街を歩いていた。行きに通った道を帰りも歩いていた。歩道の向こうからは白系のお洋服を着たお嬢さんが一人歩いてくる。行きかう人は疎らだけれど、この時は自分とお嬢さん一人だけだった。 そして、電線にはカラスが二羽、止まっていた。 植え込み沿いに差し掛かった頃、二羽のカラスが物騒な声で鳴きだした。互いに譲らない様子で、喧嘩でもしてるんだろう、どすを聞かせて・・・ 等と思いながら、しかし頭上で喧嘩は気持ちの良いものではないから、す

「だから人間」

なんでこうなっちゃうんだろう。 何回同じ失敗と反省を繰り返すんだろう・・今年これで、何回目? ああもうやんなっちゃう。 自分が、嫌いだ。 となったと同時に、物凄く真面目に、 (真剣に執筆しよう、原稿がやばい、締め切りに間に合わん) と思いました。 だから私、今毎日真剣に執筆しています。仕事よりも真面目に取り組んでいます。書くことが本業なのです。現実逃避をやめて、一生懸命になっています。時々思い出して「うっ」となって等いないと言えば噓になりますが、そんな場合じゃないの

「あずきを炊いた、そんなGW」

 懐かしさからベビースターラーメンの4連パックを買った。今日は一番好きな、というよりこの味の為だけに買ったんだけど「鶏ガラしょうゆ味」を食べた。  夜。  Tシャツの胸ポケットにベビースターの欠片が三本入ってる・・  それに今気づいた。  子どもか    そんな他愛もない連休を過ごす私。  お休み二日目の昼、かねてより機会を伺っていた「あんこ」作りを実行した。小豆を炊くのはかんたん。あんこはすぐにできる。できるのだけど、中々作れずにいた。  春分を逃した。季節と共に楽

「満開の桜を知らない、代わりに弱さを知る」

「切に自愛を祈る」  ・・・これは夏目先生が人に送った手紙の言葉だ。    頑張って下さいと言うよりも、活躍を願い励ますよりも、御自愛下さいと言うよりも、こんこんと祈るような優しさに満ちた言い回しだと思ったから、早速真似をした。自分が使うには背伸びだったかも知れないけれど、自分が知る以上に頑張っておられる方に、頑張れよりも似合う言葉を届けたいと思ったのだ。因みに自分は頑張ってと言われると頑張る人である。  未だ四月を迎える前だというのに、今年の桜は気が早い。否、桜の所為に

「ぐるりの春」

ラッパ水仙が見上げる空には、刷毛で伸ばしたようなすじ雲が広がっています。 三月の半ば、穏やかな晴れの日の一枚です。 毎年お世話をしていないのに、季節が来ればぽんと蕾をつけて、寒さの残る風に耐え、こうして陽気に花を咲かせては、我が家に春のはじまりを告げてくれます。今年はどうしたことでしょう、6つ子です。あんな土壌で、よくぞ沢山咲いたものだなあと思いましたけれど、そういえば去年、里芋を育てた土を入れ替えの為に敷地内のあちこちへほいほいかけて回った事を思い出しました。その効果な

「つかまえた」

月をつかまえた。 私は遂に、月をつかまえた。 だからごめん、今日の夜空に月はありません。                             いち

「今日とて霜」

 池の端にロープで小舟が繋がれて、それが波紋に押されるようにしては行きつ戻りつ浅瀬を揺蕩っている。池の淵の草は冬模様で枯れ草が目立つ。ただ侘しさはない。植物が順当に一度枯れ、また来る芽吹きの季節を待って静かに休んでいるだけに見える。  自然界の色にはおためごかしがないから好い。無理に出来上がった発色もなく、水に打たれれば水に打たれたように、日差しに晒されれば日差しに晒されたように、抜けたり息を吹き返したりとありのままに世界となじんでいるのがわが心に好ましい。霜柱を踏む。

「里芋日記・令和四年の土と私」

2022年4月20日。  ことしの里芋の土の準備が終わりました。後から追肥と追い土をする事を鑑みて最初の土を低めにしてみたのですがさてさて。今年も無事に育つでしょうか。里芋日記、はじまります。 気候が落ち着いて、土のすぐ下では種芋たちが毎日太陽をさんさんと浴びています。見た目には全く分かりませんが、ふかふかの栄養土は布団のような物でしょうから、大変気持ちよさそうです。見た目には全く分かりませんが。 4月28日。朝。私、目覚める。そして、 にょき。 相変わらず最初の顔

「ケチャップの呪いと野菜に埋もれる三年生」

こんにちは、いちです。少しだけあなたの目と耳を傾けて頂けますか。それは八月の事。 わがやのケチャップに呪いがかけられたのです。 ツイッターで一足先に報告したところ、親切な御方が対処法と供養の仕方を教えて下さいました。おおきに、ありがとう。 それからー 人に貰った小トトロが野菜に埋もれたり巻かれたりしててその精巧な出来に舌を巻きました。最近のフィギュアの完成度って凄いんですね。因みに自分のはキャベツトトロです。 この猫は元・母の部屋(現・図書室)に飾られている猫。母のも

令和ドキュメンタリー「牡丹雪、のち雨の日の冒険」

 ああ、とうとう降り出したと思うと、あれよと牡丹に形を変えて、雪は窓の外の景色を一変させた。自室でスーツジャケットに袖を通した私は、胸の内で微かな嵐を予感した。  その日私は、夕方から勤務先のお客様と食事の約束があった。参加者の内で自分一人だけは、電車で一時間弱の場所から駆け付ける必要があり、事前に時刻を確認して、集合時間より二時間以上早く家を出る算段であった。朝から厚い雲に覆われ、天気予報も良い事を云わない。思い切って外れる事もあるのだから、こういう日こそ的外れであって欲

「作ればいいを実行するー達磨ー」

時を遡る事十二年前― 私は猛烈に自分の達磨が欲しくなった。赤くて丸くて顔が好みで倒れても倒れてもむくりと起き上がる子が断然欲しくなった。正確に云えば達磨さんである。そういえばずっと欲しかったんだと漠然と思い出したのかも知れなかった。早速探しに行こうじゃないかと決意して、方々店を回って歩いた。と云って、達磨ってどこにあるんだろうと思いながら、出先で色んな店に立ち寄っては出会いを求めて首動かすのだが、あったと思っても、コレジャナイと思う顔ばかりで、心が一向に燥がないのだ。私はお

「執筆風景」ー脱線もする。

 大体この前へ座り込んで書いている。畳。ご推察の通り、正座。  WORDで執筆が多いけれど、noteで直接書くことも増えた。手紙は縦書きが基本。そして勿論直筆。もっと字が上手ければ良いのだけれど、中々どうして、難しい。母方の祖父は習字の先生もされていたそうで、他人行儀なのは私が写真でしか会ったことの無い祖父だからだけれど、「私に綺麗な文字を書く才能を分けて下さい」とお願いしたい。才能じゃない努力だ!なんてお叱りを受けるかもしれない。そんなありふれた事はとても仰られそうにない