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セロ弾きのゴーシュ

セロ弾きのゴーシュ
宮沢賢治
1931〜1933頃執筆。生前未発表。

ゴーシュは町の活動写真館の「金星音楽団」でセロを弾いている。楽団の中で一番下手で、いつも楽長から叱られている。十日後の音楽会で発表する第六交響曲のために練習していると、夜中過ぎに「三毛猫」がやってくる。次の晩は「郭公」、その次の晩には「狸の子」、おしまいに「野ねずみの親子」がやってくる。

「三毛猫」・・・「印度の虎狩」で脅し、三毛猫の舌で燐寸を擦って追い出す。
「郭公」・・・・音程のズレを指摘され、郭公の音程に嫉妬、怒って追い出す。
「狸の子」・・・「狸汁」にするぞと脅すも、一緒に「愉快な馬車屋」を演奏する。
「野ねずみの親子」・・・医者と言われ腑に落ちないながらも子ねずみにセロを聴かせる。

それから六日目の晩、金星音楽団の演奏会は大成功し、ゴーシュはアンコールを任される。
自宅に戻ったゴーシュは追い出した郭公を思い出し、「あゝかくこう。あのときはすまなかったなあ。おれは怒ったんぢゃなかったんだ。」と云う。

金星音楽団という集団の中で、孤独を感じるゴーシュが人一倍努力をしながら成長していく。けれども、努力のみでは解決できない部分がある。誰か他者から学ばなくてはならない。

「三毛猫」・・・・・努力と演奏への情熱。
「郭公」・・・・・・音程のズレとプロとしての自覚。
「狸の子」・・・・・弦の遅れと他者と合わせること。
「野ねずみの親子」・他者のために弾くこと。

聴衆を感動させる演奏は、高い技術を磨くだけのことではない。他人の意見を良く聞き、それを活かし、情熱を持って演奏をすることも含まれる。

他者に対しての態度が未熟である自分。なら、自分に対して反省しないといけない。
そして、自らを育ててくれたものには、言葉に感謝の気持ちを込めないといけない。

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