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千曲川のスケッチ

島崎藤村 大正元年 1912

島崎藤村は木曽路の中山道、馬籠宿の出身の作家です。藤村は明治32年、長野県の小諸市に英語教師として赴任し、六年を過ごしました。この間に修学旅行で野辺山原の馬市に出かけました。また、小諸から豊野まで信越本線に乗り、ここから飯山市まで川船で下っています。長野県を流れる千曲川沿いの旅です。これらの旅行の体験を元として写生分「千曲川のスケッチ」は書かれました。

信州の風土の美しさや人々との触れ合いが描かれています。

十九世紀から二十世紀の初め、日本に資本主義が建立される過程で、西欧の自然主義の影響を受けた小説が文壇の主力になりました。島崎藤村も自然主義文学を代表する作家でした。藤村が自分自身の青春時代を千曲川の流れに乗せて描かれた世界です。

・・・・この作品のあと、島崎藤村は「親譲りの憂鬱」と本人が語る、深い現実問題を作品に散りばめていき、告白を兼ねた暗い作品の発表を続けます。「情人と別るるがごとく」と、詩と詩的な世界からの決別を図ったのでした。

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