小説 呪いの王国と渾沌と暗闇の主【第四話 ラッハルツ塔の番人(2)】
大公殿下は、斧の事件が起きてから始終落ち着つかない。苛々し、胸のあたりが重い、はっきりしない靄がかかったような気分が続いていた。執務室で、ずっと座った椅子の肘掛けの上を指先でとんとんと一定のリズムを叩きながら解消する方法を模索して、ヒントを思い出した。そして、さっそく執務室から出た。立っていた二人の護衛を引き連れて宮殿内を意味もなくいったりきたりしながら考え事をする(ふりを)した。本日は都合良く大広間で夜会が開かれるというわけで支度中の家来たちが忙しそうに走り回る姿が多い。