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【短編小説】ほしかったもの

最近、欲しかったものを考えながら電車に乗っている。

子供の頃、床にのたうち回ってせがんだのに手に入らなかった女児アニメのおもちゃ。

給食で、休みの人がいたから余っていたゼリー。

私の方が先に好きになったはずの先輩。

ガタガタと車内で揺られながらぼうっとそんな事を考えている。

手に入らなかったものは、ずっと綺麗に私の心臓の奥でふつふつと輝いている。

でもそれは、きっと、手に入らなかったからだって私は知っている。

目を瞑ると、自然と緩やかな波が襲って来た。

このまま目覚めなければ明日仕事に行かなくて済むのに、本当にそうなったら多分私は、今見ているドラマの続きが気になって、泣き崩れてしまうんだろうなあと笑った。

そしてまた、どうせ明日が来る。


おわり

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