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【短編】信じるということ

神様は超えられる試練しか与えない。だれかの言葉が急に聞こえてきた。テレビで観たものなのか、本で読んだものなのか、いままで生きてきた人たちから聞いた言葉なのか分からない。誰かの口がぽっかりと空いて、その空洞のような口内から希望たっぷりの言葉が溢れてきたことだけを、覚えている。そんなわけねーだろ。それが、今まで生きてきた自分の所感だった。とんだ虚言だ。そんなことはありえない。そもそも神様なんていない。偶像だ。アイドルといっしょ。地球には形あるものしかない。だから自分は自分しか信じない。ただそんな自分を、最近心許なく感じることが多くなった。不安な自分の隣には、神様を信じている人がいる。アーメンとつぶやき、手を合わせて、心安らかに微笑む人。そんな人を見ると、急激に羨ましくなる。羨望は劣等に変わり、そのまま胸におもりのようなわだかまりを抱えて生きていく。幸せなのは、本当はどっち?

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