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うつしおみ 第1話 忘却の花
忘却の花は世界に美しく咲き、
真実の根は地中で沈黙する。
世界は美しい花で描かれ、
色褪せても、また色彩が重ね塗られる。
そんな寄せ返す色彩の波に晒されながら、
忘却の花は夢の底に沈んでいく。
その花は色彩の喪失に抗って、
夢の底深く扉を固く閉ざす。
だが、時の河が扉ごとその色彩を飲み込めば、
花は黒く枯れ果てて真実の根に眠る。
忘却の花が夢の底で絶えても、
真実の根が消え去ることはない。
その根が大地にある限り、
花が自分を失うことはないのだ。
忘却の花が自ら夢の扉を開くとき、
沈黙していた真実の根に目覚める。
花と根はひとつに結ばれ、
それとして再び物語を世界に紡ぐのだ。
忘却の花は真実の花となり、
歓喜の内に世界を覆い尽くす。
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