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マンガ編集者に求められるスキル「分析力」!ヒット作の読み方大公開【編集者座談会・前編】

編集者に必要なスキル……それは「分析力」
ヒット作を読み込み、分析し、マンガ編集に生かす力は、編集者、そして編集者を志す人にとって最大の武器といえます。

そこで今回は、桝平衣梨さん、陳宜淳さん、ペンジアシンさんの3名の編集者にお集まりいただき、編集者としてどんな視点で漫画を読んでいるのか、ヒット作の分析はどのような視点でしているのか、お話いただきました。

この記事はこんな方におすすめ!
・ソラジマの編集者に興味がある人
・編集者はどのような視点で漫画を読んでいるのか知りたい人
・編集者はヒット作をどのように分析しているのか知りたい人
・将来は編集者として活躍し、ヒット作を生み出したい人

ソラジマの編集者って、他の出版業界の編集者と何が違うの?
ソラジマで働くってどんな感じ?
漫画は好きだけど、仕事にするのはまた違うんじゃ……?

そんな方もぜひ、最後までチェックしてみてくださいね。

ソラジマ、こんな会社です!

ソラジマでは、”誰もがバカにする大きな夢を叶えてみせる―。”をログラインに、そして”今世紀を代表するコンテンツを創る―。”をミッションに掲げており、「Webtoon事業」に力を入れています。


SORAJIMAとは?
株式会社ソラジマはオリジナルのWebtoon(フルカラー縦読み漫画)を制作・配信している、2019年2月設立のエンタメスタートアップ。2022年度は約30作品を公開し、代表作は『傷だらけ聖女より報復をこめて』『かたわれ令嬢が男装する理由』『シンデレラ・コンプレックス』など。約30名の編集者と400名以上のクリエイターが在籍する(2023.03.01現在)。
2023年3月のシリーズBラウンドで累計調達額は約15億円になり、これまでに株式会社集英社や株式会社小学館、さらにライトノベル編集者・三木一馬氏や放送作家・鈴木おさむ氏らが出資している。
Webtoonとは?
縦読み、フルカラーの電子漫画のことです。
国内の有名漫画アプリでも、Webtoonの作品は注目されていて、作品数も増えています。2028年までに3兆円規模にまで成長すると言われている大注目の分野です。

根底にあるのは「漫画が好き」

ーー本日はよろしくお願いします。では、早速ですが、ソラジマの入社試験を受けようと思ったきっかけからお伺いします。

桝平:元々漫画が好きだったからです。横読み漫画の出版社も考えましたが、もっとベンチャー感のある新しい形態のものにチャレンジしたくWebtoonを作っている企業を検討しました。中でも、勢いと活気があるソラジマに応募し、今に至ります。

陳:私元々日本の漫画が好きで、漫画の続きを早く読みたくて日本語を勉強し始めました。大学卒業後日本に留学し、新撰組が好きなので日本史を学びました。漫画に関わる業界をメインで就職活動し、ソラジマとご縁があったという感じです。

ペン:私は、社会に出て最初の職場がソラジマです。研究センターで、日本文学研究をしていました。そこを卒業し、就職活動を始めました。漫画編集者の話は、幼い頃アニメで見たことがあり、いつかやってみたい仕事として印象に残っていたのです。それで、編集者を募集している企業を探したところ、数社あった中でもソラジマは選考過程がしっかりしていて、挑戦してみる価値がありそうだと考え、応募しました。

ーーみなさん、特別「自分には編集者向きの素質がある」と考えたわけではなく、「漫画が好き」「憧れていた職業」というのが根底にあっての応募なのですね。

ヒット作はこう分析する!

ーー編集者になったことで、漫画をただ「好き」なものとしてだけでなく、ヒット作はなぜヒットしているのか、これから世に送り出す作品をヒットさせるためにはどのような要素が必要なのか、といったことを考えることも多いと思います。
漫画を分析する上で、気をつけている点、意識している点があればお聞かせください。

陳:私は、新作を常に確認するようにしています。また、人気作ですと、1話から20話くらいまでの構成を分析したりあらすじを抽出したりしてみます。読んで面白いというのは感覚でなんとなくわかりますが、実際にあらすじや構成をまとめて整理してみると、散らかっているものが、きれいに見えるようになるところがいいなと思って、地味な作業ですけど、やっています。

ーー最近ヒットしている作品で、「これがヒットするのもうなずけるな」と思うものは何かありますか?

陳:LINEマンガさんの、『余命僅かだと思ってました!』(漫画:エシー、脚色:hyeyong、原作:Ari Choi)という作品です。

これまでの余命ものに対する考え方とは全然違っていて、既存のものを覆せるような発想がすごく秀逸だなと思いました。

ーーなるほど、ありがとうございます。桝平さんはいかがでしょうか。

桝平: 私もLINEマンガの『我慢してください、大公様』(原作:Jin Soye、漫画:Manta Comics)という作品です。

ロマンスファンタジーなのですが、第1話に、みんなの興味を惹くような要素が詰まっています。セクシーなシーンもありつつ、第1話第2話描かれる過去の話の絵がとても美しかったりして、全体的にバランスがいい作品だなと感じます。ドキドキさせるバランスや、絵の美しさだったり、ちょっとひねりがあったりして、ランキングで常に上位にあるのも納得というか、読者が求めるものをしっかりと分析されて作られている作品だな、と感じました。

ーーヒットの要因としては、ちょっとセクシーな要素もありつつ、絵がよく、ストーリーもよく……

桝平:平たく言うとそんな感じです。Webtoonは、マーケットインの要素が強く、読者さんの「これが見たい」が重視されます。「これがみんな好き」という王道を挟みつつも 、ただそれだけだと他の作品と似通ってしまうので、作画の美しさにもきちんとこだわっていたり、どこかにひねりを入れたりして他の作品との差別化を図る、そのバランスがとても上手いですよね。王道でありながら、みんなが好きな要素を入れて、更に新しいものも入れていて、いいなと感じました。

ーーありがとうございます。ペンさんはいかがですか。

ペン:実は私は桝平さんと同じく『我慢してください、大公様』(原作:Jin Soye、漫画:Manta Comics)が、最近グッと来た作品です。

「これは売れてて当然だろう」というより「こういう作品も売れるんだ」という感じが強いですね。
この作品って、桝平さんがおっしゃっている通り、第1話というか、プロローグのところに結構セクシーな、読者を引きつけるようなフックがあるのですが、Webtoonとしては珍しいくらいにゆっくりと丁寧に、話を展開させる手法をとっています。
ハイテンポなお話や、ハイテンポな展開が主流のWebtoon業界にあって、かなり異色だと思います。作画のクオリティの高さや、魅力的なキャラクター設定をベースに、キャラクターたちのちょっと複雑な絡み合いを、人間関係をしっかり築いた上で丁寧に描いています。そこにはやはり、ストーリー展開やイラストに対するこだわりがあるからこそ、ゆっくり丁寧な展開を持つ作品が、Webtoonでも売れるのだ、という新しい可能性が見えたように感じます。

気軽に読めることはWebtoonの利点

ーー今、ハイテンポな作品が多いというお話がありました。Webtoonがスマートフォンで縦スクロールしながら読む漫画であることと、ハイテンポな作品が好まれるというのは何か関係あるんでしょうか。
私は、心理描写が丁寧というか、なぜその感情の盛り上がりに至ったのかがよくわからないと冷めてしまうので、ハイテンポな作品が好まれるというお話を伺って「あ、そうなんだ」と意外に思った部分がありまして。
異世界異次元の設定もよく見るように思いますが、異世界設定やハイテンポな展開がWebtoonでは王道ですか?

ペン:王道と言うより、今のトレンドがそうなっているところが大きいですね。

桝平:Webtoonの読者層は、片手間で楽しむライトなユーザーさんが多いです。すごくはまり込んで読む面白いWebtoonももちろんあるんですけど、それよりは、サラサラと読みながら「楽しい」「気持ちいい」がわかりやすかったり、テンポがよかったりすると、読者さんとしては爽快感がありますよねその爽快感とテンポの速さというのがWebtoonと相性がいいのかな、という感じです。

ーー「じっくり腰を据えて漫画の世界に入り込む」というよりも、「片手間で読んでも、しばらく離れていても、楽しく読める」ということがWebtoonの世界においてはより強く求められるという事なんでしょうか。

桝平:そうですね。全員が全員そうではないとは思いますが、スマートフォンの中で全部完結して読めて、「今日はあの作品が更新だよね、じゃあ読もう」と気軽に読めることがWebtoonの利点でもあると思います。ちょっと小難しいと「あれ?前回何だったっけ」とか「このキャラは何をしていたんだったっけ」みたいなのが、わかりづらくなってしまいます。はっきりとキャラクター設定もわかりやすく、作品世界が理解しやすく、その世界に戻りやすいというのも大事なのかなと。世界を深めるのにはストーリーの複雑さもある程度は必要かとは思いますが。

読者の視点を忘れない

ーー分かりやすさが大事、なるほど……。そう考えると『我慢してください、大公様』(原作:Jin Soye、漫画:Manta Comics)のヒットに着目なさるのも頷けますね。
ちなみに、ご自身が手がける作品以外にも、他のヒット作も研究のためにお読みになると思います。着目するところや、こういうところにちょっと気をつけて読んでいるよ、というところは何かありますか?

桝平:私は最初はまずは純粋に読者の気持ちで読んで「このシーンかっこいいな」とか「セリフがいいな」とか、純粋に心が動いたところを覚えてメモしておきます。
その後に「なんでここがいいって思ったんだろう」などといったことを深掘りして考えてみます。このシーンはこういう風に練られてるんだな、とか、あのシーンとこのシーンをつなげるためにこういう風にやってたのか、みたいなのを深掘りしていろいろ考えるっていう感じで分析してます。

ーーありがとうございます。ペンさんはいかがですか。

ペン:私は、とにかく第1話。第1話は超大事じゃないかなと思っています。
これは自分の担当作の第1話で失敗したな、と思ったことがありまして、反省会でつまずいたなっていうところをめちゃくちゃ反省したんです。
先ほども話題になりましたが、Webtoonはやはり片手間で読むものなので、読者さんが漫画を読むのに当てた「片手間」を、無駄な時間にしてはいけないんです。最初から制作陣が「見せたい」ところと、読者さんが「見たい」ところをしっかりマッチさせてお話を始めることをより強く意識して、これからもまた作品作りに臨みたいと考えています。
読者さんに、くだらないと思わせたらそこで終わりなので、「最初から、1コマ目から面白いWebtoon作り」を意識しています。

ーー第1話を面白いと思ってもらえれば、2話3話と続く可能性が大きくなると。逆に1話でこれはもうつまんないなと思われてしまったら、その作品に戻ってくる可能性は低いと……

ペン:そうですね。

ーーありがとうございます。陳さん、いかがですか。

陳:第1話の要素も大事ですし、製作陣がお見せしたい旨味、作品としての面白さをきちんと読者さんに提示できていることが大事かと思います。そしてこの旨味、作品としての面白さを最後までずっとブレさせずに持っていくことがすごく大事だなと思います。しっかりと作品のログラインを守ってやっていくことかと思います。

ーーそこが守れているかどうか、というところでしょうか。

市場調査のために読む作品はこう選ぶ!

ーーこれまでも皆さんたくさんの漫画、Webtoonを読んでいらっしゃると思うんですけど、ライバル調査というか、市場のトレンド分析の目的でどれぐらいの作品数に目を通されますか?
もう、ヒットしてるとか面白そうだとかと思ったらいくらでもっていう感じですか?

陳:そうですね……新作は必ず第1話を読むようにはしてます。面白ければ読み続けるんですけど。

ペン:あとはキービジュアルかな。いわゆる表紙に当たる部分です。読者さんがクリックしそうなキービジュアルを持っているかどうかも作品の力になりますので、それも、読者目線に立って、「なんか面白そうな表紙してるな」と思ってクリックしてみる時もありますね。

枡平:私は、まずは毎日ランキングをパトロールします。ランキングの中に全て詰まっている、学ぶべきものが入っている感じがするので、今何が上がっているのかなとか、逆に人気だったのに下がってきているものは、どういう展開になったのかを読んだりもします。読者さんもランキングを見て読む作品を選ぶ方が多いと思うんですね。

ーー確かに、1位って言われるとどんな作品なんだろうと思います。皆さん、一読者としての視点と、編集者としての視点と、両方から読んでいらっしゃるのですね。なるほど、ありがとうございます。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

【取材後記】
今回座談会に参加してくださったお三方は皆さん編集業務未経験でありながら、編集者として活躍していらっしゃいます。
一読者として漫画作品を楽しみつつも、「俯瞰の視点」「冷静な視点」を失わず、なぜその作品が面白いのか、どのような構成になっているのかを分析することが、次のヒット作を生み出す力になっていることがわかりました。
この「俯瞰の視点」「冷静な視点」に関しては、後編の「ソラジマで編集者として働くということ」にも出てきますので、そちらの記事も参考にしてみてください。

▼桝平さんのインタビュー記事はこちらから!

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