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【小説】奇跡 ー最終回ー

「臣民諸君よ、嘆き悲しむ時は過ぎた!皇教は朕を導き給うた。それは神の導きに他ならない。而して朕は、今こそ朕の為すべきことを為すのである!」

 宮殿内の中央広場に設えられた壇上では、皇王が貴族や議員、大企業の経営者たち特権階級を集めて演説を行っていた。それは皇教の葬儀から半年が経ち、世の中が落ち着きを取り戻してきた折のことであった。

 集った人々にとっては、皇王が為そうとしていることが何であり、そしてそれが果たして自らの利益に繋がることなのかどうなのかを知りたがった。保身と野心がその場の隅々に充満していた。誰もが皇王から次の言葉が放たれるのを心待ちにしていた。

 充分に勿体をつけた後、一同を見渡してから皇王は口を開いた。

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