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変わるもの全部

久しぶりに故郷に帰った、と言っても電車で1時間ぐらいの場所に行った。そこは前来た時と変わらず穏やかで、時間なんて知らないと言うような雰囲気があった。そんな場所でも変わるものはあると知ったのは、同級生が賞を取ったと噂で聞いてからだった。今回も、少し遠のこうとする足を仕方なく動かしてきた。建物や景色は変わっているようには見えないのに人間ばかりが変わっていくこの町に対して、少しばかり寂しさを覚えた。
「今日さ、同級生が賞取ってるの見た。」
父に何気なくそう言うと「凄いねえ」と黄色から赤色に変わる信号を見つめていた。
「最近さ、私より年下の人とか同い年の人とかどんどん活躍していく人が増えてきてなんか嫌。」
私と違い穏やかに車窓に映る景色を見る父が少し嫌になって気づけば愚痴を吐いていた。
「これからどんどん増えてくよ。成長に個人差があるように同じような努力をしていても差が大きく開くこともある。君は君でマイペースにゆっくり努力していけばいい。」
そんな口ぶりからは過去に努力したが才能のある者を目の当たりにしてしまった、という過去の出来事が伺える。努力はそんなに報われないけど少しいいことがあるかもしれない、その少しのいいことを重ねていったら大きないいことになるんだよと努力を重ねてきた兄は言う。一つのことを続ける力こそ才能あってこそじゃないかとは思うが、今続けれない自分の弱い意思と向き合い、工夫して、少しずつでいいから努力を重ねるのは容易なはず。近い将来、いや今から、人と比べるのではなく、マイペースにコツコツ努力を重ねていきたいと思う。変わるもの全部に置いていかれたと感じるのではなく、変わることを楽しんでみようかと今の自分と未来の自分に笑いかけた。



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