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第1話 きっかけ

前書きとし、お伝えします。
これは、あくまでも私の妄想な話です。想像力、語彙力も乏しい私ですが、妄想なのでお許し下さい。


私が劇場スタッフとなり、働き始めて早8年になる。上司、先輩、後輩にも恵まれ初めはなんにも分からないまま入った会社やったけど、徐々に慣れてきて仕事も覚え、ある程度のアクシデントにも対応できるようになってきていた。辛いこともあるけど、そんな中にも楽しさもあってこの仕事好きやなぁと思い始めてもいた。

「おはようございます!」
「お疲れ様です!」
たくさんの声が集まってきた。本日、出演する漫才師、コント師たちだ。私はこのプロの演者たちが大好き!見に来てくださったお客様を皆、笑顔にできる凄い!尊敬している。
「なべちゃん、おはよう」と、声を掛けてくださる方もいる。
あーそうでした、私は渡辺 秋(あき)です。秋産まれと言うので親がそのまま付けました。安直やんね。

さてさて、今日はネタとコーナーもあるから、小道具も準備せんと…。コーナーで使う、ヘルメットとピコピコハンマーは、と、
「うげっ、なんでこんな所にあんのよ」
あったのは、低身長の私が椅子に上がってギリ届くか届かないような高い棚に置かれていた。丁寧に箱にヘルメットとか書いてあるけど、なんでそこに置くかなぁ…っ。
椅子に上り、その箱を取ろうと腕を伸ばしていると、後ろから声を掛けられた

「あーあーあー!あきちゃん危なないかぁっ」

後ろを振り向くとコマンダンテの安田くんやった。
「ちょっ、危ないから、どきや。これか?」
と、私の変わりに箱を取ってくれた。
「安田くん、ありがとう!」
いつでも優しい、安田くん。コマンダンテが東京所属になってこの劇場にもよく出演し、ほぼ毎日ここで会うようになって、歳も一緒やったら話もよくするようになり、仲良くなった。奥さんの相談もされる事もしばしば…。

「気ぃつけや。誰かに頼むとかしたらええのに。」
「んー、まぁ、なんとか自分で取れると思ってた笑」
そんな会話をしていると、コマンダンテの寡黙なイケメンが登場した。

「おー、石井くんおはよう。」
「おはよう。」

あーあ、まだ眠そうな顔して…。そんでも、イケメンやからええよなぁ。さわやか~爽爽という漢字がピッタリ。その水色のシャツお気に入りやんなぁ、と私は心の中で呟いた。ハッシュタグつきで。

「石井さん、おはようございます。今日も宜しくお願いします。」と、朝イチに素晴らしい、自画自賛の営業スマイルで挨拶をした。別に石井さんが嫌いとかではなくて、正直、何を考えてるか分からんから苦手意識を抱いてしまっているのだ。

「なべさん、今日も小さい」

石井くんは私をなべさん、と呼ぶ。それ、あんま好きやないんですけど…飲み屋のおっちゃんみたいで。そして、いつも小さいと言う。石井くんと私で身長差約30cm。なんだか悔しいので言われたら、石井くんの前に立って、つま先立ちして少しでも目線が合うように、ぐっと顔も上げて
「今日はこんなに伸びました!」と、ムキになって言うてまう。安田くんは笑い、石井くんはノーリアクション、いつものやり取り。なんかのルーティーンなのか?になりつつある。
そんな、いつものやり取りで今日は違った事があった。私がつま先立ちで少しふらつき、それでも立ち直すと石井くんが「なべさん」と、呼ぶので顔を上げると…
パチンッ!

と乾いた音と共に「イッタァッッ!」と言う私の声が楽屋袖の廊下で響いた。
石井くんが私にデコピンしてきたのだ。

安田くんポカン顔
私も何が起こったかすぐに理解できず、鳩が豆鉄砲くらうとはこの事か?!という感じで、目も口も見開いて、おでこだけがヒリヒリと痛かった。
石井くんは、してやったり顔

安田くんと私はその場で立ち止まったままで、石井くんはそのまま何も言わず楽屋に入って行ってしまった。
安田くんと顔を見合わせ、同時に

「石井くん、機嫌悪いんか?良いんか?!」
と、2人で呟き、安田くんが「これで冷やしたらええよ」と、自販機で缶のミルクティーを買ってくれた。


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