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【ドラマ】舟を編む 第二話(4) 「うまく言えないんですけど」についてなど

第三話はもう放送されてしまった。見たい!でも見る前に第二話の感想を書いておかないと絶対ブレてしまう。2回目に視聴した時にメモしておいたことをもろもろ書き連ねて第三話を見る準備としようと思う。

馬締にみどりが失恋をしたと言った時の馬締の反応が面白かった。それまで描かれてきた馬締は朴念仁で恋愛やロマンス関連とは無縁のようなイメージだったけれど、「失恋をした」と聞いた途端飛び上がって驚いて「それは大変だ!!!」とびっくりマークなん個分もの反応を示す。この馬締のキャラクターのギャップは原作を読んだ人にはすんなり受け入れられただろうと思う。これは原作を読んでいるものの特権かな?と密かに得をした感を得てニンマリさせていただいた。原作で馬締が香具矢さんに恋をした時にすでにもうそのギャップに驚かされて、彼の恋愛に対する態度を楽しませていただいていたから。と同時に、このドラマが初めての「舟を編む」体験だった人はどう感じただろうか?とも思った。感情の起伏がなさそうな馬締のあの飛び上がって驚く姿が突然すぎて「なぜ?」と疑問に思ったんじゃないだろうか。これから香具矢も西岡もたくさん出てきそうなので、その謎解きがされるのかな。楽しみだ。

第二話での肝になるセリフはきっと

うまくなくていいです。
それでも言葉にしてください。今、あなたの中に灯っているのはあなたが言葉にしてくれないと消えてしまう光なんです。

馬締のセリフ

という、みどりが「恋愛」の語釈に対する意見を発するときに「うまく言えないですけど」と逃げようとした時に馬締が言った言葉で、これは最後の松本先生の

岸辺さんが言葉にしてくれたおかげであなただけに見えていた光がみんなの灯台になったんです。

松本先生のセリフ

と呼応している。思いを言葉にすることの大切さが表されているけれど、思い起こすと、みどりは第一話から思ったことを不用意に口にしすぎて知らない間に人間関係を壊している人であった。彼氏の翔平に対しても同僚に対しても

朝食なんて食べる時間ない。
あとにして?カメラなんて。
そんなことなんて調べる時間ないからさ。

みどりのセリフ

というようなパッと思ったことを考えることなく口に出して、相手にストレスを与えて離れていかれてしまっていた。思ったことを何の苦労もなく口に出せていたみどりが「恋愛」の語釈に対して感じたことを馬締に説明する際には「うまく説明できない」となるのはなぜか。

彼氏や友達との会話で今までみどりがやっていた「思ったことを言葉にする」行為はどちらかというと反射的な行為で、「考えて」行っていたことではなかったということではないか。対してみどりが「恋愛」の語釈に感じたことを説明するときは明らかに反射的なものではなかった。最初にその語釈に違和感を持ったことは反射的なものだったろうと思う。辞書を読んで「え?なんで?」と思ったのは反射。それで色んな辞書を広げて他の記述を読む。みどりの異変に気づいて馬締が「どうかしましたか?」と聞いてくれる。そしてみどりは大渡海の「恋愛」の語釈を見せてくれるように頼む。そこにもみどりの違和感は引き続きいて、そこでみどりは「どの辞書にも異性同士とか男女となっているのはなぜか、そうじゃない場合もありますよね?」と疑問を口にする。そこで馬締に大渡海で今現在そうなっている経緯を説明される。馬締はそこでみどりの疑問は解決されただろうと踏むが、みどりは納得できず、さらに疑問を投げかける。このやり取りも最初のうちはみどりは反射的に言葉を返しているように思う。それが馬締の「考えて発せられている言葉」によってみどりにも考えることが自然と促されていってるように見える。馬締の応答に対して明らかに自分は意見があると感じるのに、それを口にすることはいつもやっている反射的な反応ではできない。口に言葉が降りてこない。いつもは素通りしている脳が働き始める。でもうまくできないので、「うまく言えないですけど」と逃げようとする。そして馬締に第二話の肝のセリフを言わせる。うまくなくていいから表現しろ、と。懐の深い言葉であると同時に逃げ道を塞ぐ厳しい言葉でもあった。これについての感想は前のポストに書いたのでここで書くのはやめよう。ただでさえすでに長くなってしまった。つまりこの場面からみどりが自分の考えを言葉にすることに向き合い始めるのだと思う。

「うまくなくていいです。それを言葉にしてください。・・・」の馬締のセリフの後に佐々木の表情が映される。第一話から馬締が朴訥ながらも人がハッとするセリフを発した時にいつも佐々木の表情が映されて、それが私はとても好きだ。キビキビと仕事をこなす凛とした佐々木が馬締のいいセリフにものすごく柔らかい表情を見せるのが、馬締という人がそこでどれだけ尊敬されているかが窺える。第一話でのみどりの失礼な意見「そんなことしてるなんて、工程に無駄があるんじゃないですかぁ?」に対して佐々木と天童がピリッとした空気を出したところで馬締が「そうかもしれません!岸辺さんのフレッシュな視線でどんどん意見をしてください!」という懐が大きすぎて底が抜けているんじゃないかと思うセリフを出すと、カメラが佐々木さんの穏やかな柔らかな表情を映してくれて、「ああ、この編集部で馬締はとても尊敬されて受け入れられているんだな」と一瞬で感じることができて嬉しかった。それにしても佐々木さんは馬締が「えっと。。。」と前回の例を示した方がわかりやすいなと考えついたところでのすでにそれを手元に持ってきたり、とにかく仕事ができて素晴らしい。あれだけ仕事ができて「契約社員」という肩書きに、佐々木さんにはいったいどんな物語があるのか、そのスピンオフも読んでみたいです。

「恋愛」の語釈を話し合う際に、異性同士でない恋愛関係の表現が出てくる場面がたくさんあるが、それを「同性愛」と言わないのがいいなと思った。私は今回ドラマの感想をかくにあたって、以前のポストで何度か「同性愛」という言葉を使ったように思う。今回第二話を2度目視聴してその言葉が使われてないことに気づいた。

異性ではない相手と強く慕いあっている人たち

というように表現されてた。私は同性愛に限定して捉えていたけれど、ドラマの中で深くは言及されないが、これは同性愛に限らないということだろうか。異性ではない相手、となると色々なケースが考えられるな。倫理的な問題が絡んでくるから深くは言及できないけれど、その表現はさまざまな人を包括する表現だな、と思った。

一話目でみどりが海を眺めて泣く様子を映しながらさまざまな「泣く」に関する言葉が説明されていくシーンがあって、そのシーン設定とエライザさんのお芝居にとても感動した。そして二話目では馬締がみどりに放った謎の3つの「あきらめて」がそのシーンに当てられていて、これもとても良かった。

あきらめて あきらめて あきらめて欲しいです

馬締のセリフ

あ、あの3つの謎が解かれるぞ!とシーンが始まった時にワクワクした。特に3つ目のあきらめてが全く馴染みがなくどういう意味だろう?と待っている中、とてもとても焦らされて最後の最後に出てくる演出が秀逸。とても美しく、楽しませていただきました。言葉とは、日本語とはこんなにも面白いものなのだな。

見ながらメモをとった段階ではこれほど長くなるとは思わなかったけれど、こうやって思い返しながら書いていると改めて色々考えて楽しい。上の長い文章でも実は元はもっともっと長くて何回もたくさんの文章を消した。書いていると色々な考えが浮かんできて自分の考えがどんどん枝分かれして細い枝に入っていって収集がつかなくなってしまう。そういう部分は一旦書いてからスッキリしてズバッと消した。後日上のポストも読み返して無駄な部分が多すぎて苦笑するんだろうな。それでも今はこれでよし。さてこれで楽しみに第三話が見れます。

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