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p.s. I love you

孤独。

人は、孤独を感じるとき、もっとも近くに自己を感じる。
    ー若松英輔 "悲しみの秘儀" -

社会人一年目の彼。年下で小柄の、かわいい私の男。
今日も、彼は疲れ果てて電話の約束をした時間の前に寝てしまったらしい。
電話をかけても出ない。
「もう寝たかな?ちゃんと疲れ取って朝起きるんだよー。おやすみなさい。」
そうLINEを入れておいた。既読が付くのは明日の朝だろう。

彼は今までに3人付き合った女の人がいたが、すべて彼女達から振られてしまったらしい。
こんなに可愛くて、面白いのになんでだろう。
そう考え続け、付き合って約1ヶ月、彼のマイペースなところが彼女達を不安にさせ、心が離れてしまったのだろう。そう感じた。

たぶん、今日のことも、積み重なったら、彼女達には耐えられないのだろう。
寝落ちで電話の約束をバックれるのは、この1ヶ月で数回、会う約束も、寝落ちで1回すっぽかされた。
そんな性格なのだ。まるで赤ん坊。

彼が約束の時間になっても現れず、電話をかけても出なかったその時は、私も悲しいと感じた。会うの、楽しみにしてたのにな、私の事そんなに思ってないのかな、と不安な感情にもなった。けど、どーせ寝てるんだろうなと思い直し、5分だけ待ってその後すぐ家に帰った。

何も感じないように、そう言い聞かせた。
私は彼が大好きで、大切で、愛おしい。
きっと彼も、私のことが好きで。だけど、睡魔には勝てなくて。ただそれだけ。


孤独。
彼に孤独を埋めてもらおうとは思わない。
自分の機嫌は自分でとる。それと同じ。

きっと、今感じている孤独や寂しさは、愛おしさの裏側なんだと思う。いや、愛おしさの一部か。

悲しい。

「悲し」という漢字は、「愛し」とも「美し」とも書く。
これも先の本の受け売りである。
彼を愛しているが故、悲しいという感情が芽生える。そうだね。どーでもいい人と電話できなくても悲しいとは思わないし。
この悲しいという感情は、愛おしいものであり、美しくもある。そうなんだ。なるほど。


いま、孤独を強く感じる。
孤独を感じるとき、もっとも近くに自己を感じる。
この言葉の意味を理解しつつある。
人は、孤独であるときにその人の本質が現れる。自分の本性を知ることができる。例えば、普段は八方美人なのに、孤独を感じると相手を束縛したり。あとは、他の人で気を紛らわそうとしたり、相手に怒ったりとか。
昔の私は疑り深かったから、今頃浮気をしてるんじゃないかと疑って鬼電とかしてしまうだろう。絶対に浮気は許せなかったし、不安になると電話を掛けたりLINEを入れたりして彼氏から安心を搾取していた。

でも今は違う。
まずは相手を信頼する。
「彼を信じよう。」
そう心で言葉にする。信じるのも、愛だ。相手を信じるのには、とても勇気がいる。信じるということは、相手がたとえ裏切ったとしても、それも含めてすべて許す覚悟があるということだ。
もし、彼が他の女といても。また私の所に戻ってくればそれでいい。彼が幸せで、健康でいてくれれば、それで。

私が唯一不安なことは、この先もずっと彼を愛し続けることができるか、それだけだ。
先のことは分からないが、できればこの先も彼と一緒に生きていきたいと思う。小柄で自分勝手な彼を、この先も守っていきたい。


死ぬのは、彼が先がいい。
彼に、孤独を味あわせたくないから。もう、悲しい思いをしないで欲しい。
別れは私からじゃなく、彼からがいい。

私ももう寝よう。
次に会った時には、少しだけ文句を言ってやろう。それで、チャラにするんだ。

おやすみなさい。


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