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SL人吉「走れ!マイヒーロー!」

ふみサロ5月課題本「なぜヒトだけが老いるのか」 小林武彦 著
課題本から受けたインスピレーションを基にエッセイを書く

⇓ 以下エッセイ ⇓
「走れ!マイヒーロー!」

私には可愛い可愛い3歳の甥っ子がいる。
そして、彼には相棒がいる。
手のひらサイズの新幹線のおもちゃだ。
後ろに引いて、手を離せばピューッと走り出すタイプのおもちゃだが
甥っ子が走らせて遊んでいる姿を見たことがない。
単純に大好きな新幹線で、握りやすいのがお気に召しているようだ。

甥っ子は何をするにも、この相棒を握りしめて生活している。
無くしてしまったときは大惨事だ。
泣くわ、怒るわで収拾がつかない。
なので、外出時は子供用のボディーバッグを自分の肩に掛けて、大切にしまっている。
いわば、甥っ子にとって宝物入れなのである。

ある日、私は甥っ子と二人で熊本駅へやってきた。
もちろん新幹線に会いにいくためだったが
予想外のことが起きた

ぽぉぉぉぉぉぉおおおおおおおーーーーーーーーー
突然、駅構内に大きく鳴り響く音
蒸気機関車「SL人吉(ひとよし)」の汽笛の音だ

「SL人吉」は熊本-鳥栖(とす)間を運行する蒸気機関車(SL)で「ハチロク」の愛称で親しまれている。
営業運転している国内最古(1922年製)のSLだ。

「なんのおと!?」と、驚く甥っ子に
「SLだよ」と、両手を小さく前に倣えのポーズで
シュッ!シュッ!と、SLの動きを真似てみる。
しかし、甥っ子からは奇異の目を向けられてしまった…。

それからしばらく経って、久しぶりに甥っ子に会ったとき
甥っ子は私に「みてみて~」と、ボディーバッグから何かを取り出した
「SL人吉」のキーホルダーだった。

SL人吉は、2024年3月23日ラストランを迎える。
その前に甥っ子家族は乗車することにしたらしい。

大正、昭和、平成、令和という時代を走り抜けた「ハチロク」は
部品の調達や保守管理の技術者確保が困難などの理由で、惜しまれながらもその歴史に幕を閉じる。
しかし、100年を超える時を走り続けられたのは、たくさんの人が「ハチロク」に係わり、大切に繋いできてくれたからである。

お陰で甥っ子のバッグには新しい相棒が増え
時折、取り出しては床やら壁やらを走り回っている

私は「SLどうだった?」と聞いた
甥っ子は「かっこよかった!!」と、即答してくれた。

以上(859文字)


〈制作の意図〉

本書の「まず先輩が若手に憧れられるような存在であるべき」、「役割が変化する」という文章から着想を得ました。

憧れは「こうなりたい」「やってみたい」という原動力であり、目標への道標であり、不安な時は楽しい気持ちを思い出させてくれる
心の味方「ヒーロー」だな。と考えました。

ヒーローが傍に居てくれるから甥っ子も安心して毎日を過ごせるのです。

そして「ハチロク」は、今後もいろんな人のヒーローとして様々な人生と並走しながら道標になっているのかもしれない。という表現で
希望を感じられる文章にしたいと考えた。


反省点としては、駅の描写が全然要らなかったな。と思う

「甥っ子のバッグは宝物入れ」という部分から
「久しぶりに甥っ子に会った」のところへいってしまえば、文章がスッキリしたし
余裕を持って文末を表現できたな。と反省している。

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