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歌い手もアスリート!? 舞台を完走するために私が心掛けた3つのこと


歌手という道を歩むものとして、自分の体や声の調子を保つことは大きなお仕事のひとつです。あんまり気にしない、という人もいれば、生活を相当制限する伝説的な歌手もいて、かなり個人差がありますが、私の場合は、少しデリケートな声ため、丁寧なケアが必要のようです。

オリンピック中継をテレビで観ながら、選手たちはこれまでにどんな練習を重ね、大変な日々があったのかと想像すると、私たち音楽家とも重なるところがあり、つい感情移入して応援しています。

最近では、『蜜蜂と遠雷~ひかりを聴け~』全20公演という今まで経験したことのない回数の舞台出演にあたり(『シンフォニー音楽劇「蜜蜂と遠雷」~ひかりを聴け~』に出演します!参照)、歌のクオリティを保ちながら完走するためにはどうすればよいか、という難題に直面しました。目標に向かって突き進むということでは、私にとってのオリンピックだったかもしれません。今回は、この大舞台を完走するために心掛けた3つのことについて記していきたいと思います。

その3つとは具体的にはこんな感じです。
1 セリフは体で覚える
2 稽古場(会場)には時間前に入る
3 体調管理と声のケアを忘れない


セリフは体で覚える


2021年3月4日に稽古が始まり、初日は3月27日。この短期間に2時間半の舞台を完成させていくため、合宿のような日々が始まりました。

まず苦労したことは、演技とセリフでした。私の演ずるナサニエルは、セリフの分量が多く、演技経験の少ない私にとって試行錯誤の日々でした。稽古場ではマイクなしですので、練習中ちゃんとセリフの声が届いていないと指摘されたこともあり、悩んだ事も。

皆さんと一つの舞台を作っていくために人一倍練習しなければ、と文字通り寝ても覚めてもセリフをブツブツつぶやいていました。駅のホームでもブツブツ、普段だったらかなり怪しい人ですが、こういう時にもマスクは便利です。歌もなるべく早く暗譜することが、自然に声を出す第一歩。セリフも歌と同じように早く体で覚えようと心がけました。

稽古場(会場)には時間前に入る

私は、ピアノのコンクールの審査員であり、このコンクールで優勝するマサルの師匠であり、同じく審査員の嵯峨三枝子とは元夫婦、という役柄。マサル役の関西ジャニーズjr.奥村颯太さん、嵯峨三枝子役の湖月わたるさんとの掛け合いが多くありました。毎日稽古の開始時間より早く会場に入り、恐れ多くも湖月わたるさんと、セリフの自主練習にいそしんでいました。公演がスタートしてからも、この練習は続行、こんなに練習にお付き合いいただき、湖月わたるさんには本当に感謝しかありません!


練習風景の動画はこちら。


歌のコンディションも毎日変わるので、調整のため私は早めに劇場に入っていました。軽く体を動かして、少し声を出し、その日の声の調子を確認。それから徐々にウォーミングアップ。

声が他のフロアーにまで聞こえていたようですが、スタッフさんも皆さん優しく協力してくださり、大阪や福岡では、会場前のホワイエの一角をお借りして歌の練習をしていました。オリンピック中継を見ていると、連日試合を続ける選手たちのコンディション調整は大変だろうなと思います。

体調管理と声のケアを忘れない


今回のお芝居で、記憶に残っている「ハードな1日」は博多座の初日前日でした。

朝9:30集合、ということで木村は9時に劇場入りし練習、10時から練習室で稽古、午後はステージ上で稽古とリハーサル、終わったのは9時くらいだったと思います。そして翌日はお昼から公演。その翌日から連続2日で1日2公演ずつ。私は、東京から持参した蜂蜜やショウガパウダー、プロポリスなどあらゆるボイスケアセットを使い、体調だけは崩さないように心がけました。

大変だと考えると大変、しかしこの大舞台をこんなに何回も踏ませて頂けるありがたさが凌駕し、1舞台終わるごとに見えてくる千穐楽の文字が遠のけばいいのに、といつしか思うほどでした。

ケアをしながらも、本番では演技や歌が守りに入りすぎずに、しっかりと最大限のパフォーマンスを発揮することこそが、本当にアスリートだな、と実感しました。過去には歌い手として歌うのがつらい時期もありましたが、今回の舞台はとても楽しかった! 以前にもnoteで別の記事に記載しましたが、妻から「毎日生き生きしているね」と言われたことも、その証かと思います。

ある選手が、メダルを獲得した後、すぐにでも練習したい、と言っていた気持ちもとてもよく分かり、私もまた舞台をやりたい、という気持ちで千穐楽を終えました。


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