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リサイタルは修行のようでもあり ~CDデビュー記念コンサートを振り返って~

私は2016年に『マイワールド』でCDデビューしました。
詳しくは

「私」が凝縮されたデビューアルバム『My World』の話<前編> 

「私」が凝縮されたデビューアルバム『My World』の話<後編>

をご覧ください。

デビューCD発売に伴い、2016年8月30日渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールで記念リサイタルを開催することになりました。

過去の記事でも書きましたが、リサイタル目前に熊本地震が発生し、私にとっての2016年は激動の年となりました。眠れぬ日もありましたが、「熊本のこつは心配いらんけん、あんたは東京で頑張りなっせ!そるが皆の元気になっとだけん!」と逆に励まされ、一生で一度しか経験することのできないこのリサイタルに向け、準備に集中しました。


リサイタルの過酷さ

「リサイタルするんだ」と友人に話すと、「リサイタルってジャイアンがやってるイメージしかない」と言われ、笑ったことがあります。冗談はさておき、リサイタルは精神的にも体力的にもかなり過酷です。いろんな形式がありますが、基本的には約2時間1人でトーク進行して、ピアノなどの楽器と共に1人で歌うのです。休憩時間や、合間に共演者の演奏を入れてもらうこともありますが、その時間に早着替えをしたり、メイクを直したり、舞台裏でもバタバタしています。

デビューリサイタルでは、私にとって初めてずくめ。照明、音響、衣装、メイクなど、こんなに多くのスタッフ方たちに支えられて作り上げられていくのか、と1つずつが学びであり、経験にもなりました

アスリートのように

共演者は、ピアニストの佐藤昌仁さんカルテットの皆さん。限られた時間で効率よく合わせの練習をするため、必死で事前に個人での練習を行いました。私は所属事務所と同じグループの「NPO法人 音楽で日本の笑顔を」で常勤として勤務もしているため、「リサイタルで最高のパフォーマンスをする」こととの両立が課題でした。頭の整理、体調管理、そして練習と、大会を目指すアスリートのように、スケジュールを立てる。自分でも修行僧のような生活だな、と思うこともありました(笑)。

ちなみに、事務所所属前のフリー時代、20代半ばでリサイタルを行ったときは、約2時間のプログラムを完走することがまず大きな課題でした。マラソンのように、何曲目でどの程度の疲労があるのかを確認し、改良していくために何度も練習を重ねて本番に臨みました。それでも本番では必ず練習時以上に疲労があるものです。

しかし、プロとして臨むデビューリサイタルは、ただ完走するだけではなく、当然質がいいものでなくてはなりません。限られた時間で、後悔しないような準備をすることに専念していました。

クラシックでは経験したことのないマイクテスト

プログラムは、CDの収録曲、そしてCDには収録されていない、ライブならではの一期一会の曲で構成しました。クラシックを勉強してきた私にとって、マイクを使用したコンサートというのも慣れが必要でしたが、元来洋楽やJAZZが大好きな私は、憧れのポップス歌手のようにマイクを使ってかっこよく歌ってみようかな、とイメージトレーニングを重ねていました。

しかし、ここで直面したのが「音響の調整(マイクテスト)」です。オペラのアリア、ささやくように歌うバラードなどバラエティに富んだプログラム故、1曲ずつの音響チェックが必要になります。最高のパフォーマンスが本番の時間に来るように自分の中で調整するのですが、マイクテスト→リハーサル→本番と一日で行わなければなりません。

本番に体力を温存するため、抑え気味に歌っていると、マイクテストでは「この曲の高音もう一回お願いします」「本気で歌った時の音量を聞かせてください」とPAさんにお願いされることも。マイクを使用しないクラシックのコンサートにはない経験。今思い起せば、本番が始まるころには十分すぎるほどのアップが完了していたように思います。

いよいよ本番

しかし泣いても笑ってもやってくる開演時間。前日から心配された台風もうまいこと逸れてくれて、無事、「CDデビュー記念コンサート」の幕が上がります

途中、早着替えで息が上がったような状態になりながら、次は弾き語りだ! という感じで怒涛の2時間でしたが、大盛況で幕を閉じました(自分でいうのもなんですが(笑))。客席には熊本地震からまだ半年経過していないにも関わらず、上京してくれた両親の姿も。少しは親孝行できたのか、喜んでくれたようでした。

約1か月後には熊本でのリサイタルも行うことができたのですが、こちらも感動的でした。次の機会には、こちらのお話をしましょう。

10年後、20年後の自分を想像しながら

過去のリサイタルを振り返り、映像を観ると、リサイタルは、その時の練習量、技術、精神状態、年齢、共演者、ホールの状態、客席の雰囲気、色んな条件が重なって出来上がる時間の芸術、ある意味奇跡だな、と感じます。「へただな~」と目(耳?)を逸らしたくなる瞬間もあれば、「よくやったな」と自分でほめたくなる気持ちも(笑)。

今、リサイタルはもちろん音楽活動が自由にできない状況ですが、あの緊張感を失わないように心掛けています。これは簡単なようで、難しいです。目標、課題をどこに設定するのか。常に自問自答しています。最近は目前の目標ではなく、10年後、20年後、どのような歌手になっているのか、そういうことを考えながら練習に励んでいます。

将来「リサイタル」の日程が決まった瞬間に、その1日を目指すことが生活の中心となり、気持ちも一気にその1日のために集中することになるでしょう。またその日がくることを望んでいる自分がいます。

映像はリサイタルのアンコールで歌った I Will Always Love You
CD発売記念リサイタル in さくらホール
2016年8月30日
東京都 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

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