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鍵盤楽器の曲から声楽曲へ バッハ=グノー「アヴェ・マリア」

近年頻繁に私が歌っている曲の1つ、バッハ=グノーの「アヴェ・マリア」
特に昨年は、シンフォニー音楽劇『蜜蜂と遠雷』~ひかりを聴け~の20公演で歌い、多くの方に聴いていただきました。


これだけの回数歌っても飽きない(そんなことを言ったらバッハやグノーに失礼!)この名曲は、今や私の最も大切なレパートリーの1つとなり、来る10月10日のリサイタルでもプログラムに入れる予定です。


バッハ=グノー(グノー=バッハ)作曲の「アヴェ・マリア」と記載されるのは?


この曲は、バッハが作曲した『平均律クラヴィーア曲集 第1巻』の「前奏曲 第1番 ハ長調BWV 846」を伴奏にして、後世の作曲家グノーが「アヴェ・マリア」という声楽曲にしました。そのため作曲者名は、両者の名前を合体させた形で表記されることもありますが、「グノーのアヴェ・マリア」と書かれることもあります。いずれにせよ、始まりはバッハが作曲した、鍵盤楽器のため曲でした。

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
Johann Sebastian Bach
1685年~1750年
ドイツの大作曲家
シャルル・フランソワ・グノー
Charles François Gounod
1818年~1893年
フランスの作曲家


元となったバッハの「前奏曲 第1番 ハ長調BWV 846」ですが、実際どんな感じかというと、

鍵盤楽器、チェンバロでの演奏がこちら↓

そしてもう1つ、現代で最も演奏されている鍵盤楽器、ピアノでの演奏↓


 
同じ鍵盤楽器でも、チェンバロとピアノでは大きく異なります。バッハが聴いたら現代のピアノでの演奏にはびっくりするかもしれませんが、いずれにせよ美しい曲です。


グノーの手によってアヴェ・マリアに

バッハを崇敬していたグノーは、バッハの「前奏曲 第1番 ハ長調BWV 846」の上に、歌の旋律を作曲し、ラテン語の聖母マリアへの祈祷文を歌詞として付け、「アヴェ・マリア」を完成させました。

ラテン語
Ave Maria, gratia plena,
Dominus tecum,
benedicta tu in mulieribus,
et benedictus fructus ventris tui Jesus.
Sancta Maria
ora pro nobis peccatoribus,
nunc, et in hora mortis nostrae.
Amen.
日本語訳
おめでとう、マリアよ、恵まれた方よ
主はあなたと共におられます
あなたは女たちの中で祝福された方
そして、あなたの子
イエスも祝福されています
気高いマリアよ
罪深い私たちのために
今も死を迎えるときにも
祈ってください
アーメン
引用:三ヶ尻正著『ミサ曲・ラテン語・教会音楽ハンドブック』


ちなみに、今年の5月1日に開催した『木村優一・森亮子コラボレーションミニライブ』で、大学院の先輩、森亮子さんのパイプオルガンの伴奏で歌いました。今まで、この曲をピアノやオーケストラと一緒に歌ったことはありましたが、パイプオルガンで歌うのは初めて。
しかもパイプオルガンの音を生で聴くことも久しぶり、もちろん一緒に歌うことも久しぶりだったので、パイプオルガンという楽器の音の立ち上がりの感覚に慣れるまでに少し時間がかかりました。

これは本当に私の個人的な感想なのですが、鍵盤を押してから音が鳴るまでほんの一瞬、間があるように感じるのです。しかしその間のようなものがこの曲にはよく合っているような気がしました。

5月1日に開催した『木村優一・森亮子コラボレーションミニライブ』当日の演奏がこちらです↓


新たな気持ちで歌う「アヴェ・マリア」


前述したように、10月10日のリサイタルでもバッハ=グノーの「アヴェ・マリア」を歌いますが、この曲は特別なアレンジを入れず、オリジナルに忠実に歌おうと思っています。しかし、今回はパイプオルガンではなく、ピアノ。新たな気持ちで心機一転、この曲と向き合って練習を行っています。

鍵盤楽器から声楽曲になり、ソプラニスタが歌う……時間旅行をして現代にバッハやグノーが聴きに来てくれたら、目を丸くしてさぞびっくりするだろうと思いますが、感想を聞いてみたいです(笑)。

是非、コンサートホールで新たなバッハ=グノー「アヴェ・マリア」を聴いていただけたら幸いです。

コンサート情報はこちらから↓


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