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ドラッカーのマネジメントについて学ぼう - ⑱成長のマネジメント

さあ、金曜日だ。
金曜日は、ドラッカーの「マネジメント」について学ぶ日だ。

この本は非常に緻密に書かれており、記事としてはドラッカーが書いた内容を順になぞっていくようなものになってしまうかもしれないと思っているが、可能な限り現代的な解釈をして、わかりやすく解説を加えていきたいと思っている。

先週は「マネジメントの限界と多角化経営」について書いたが、今日は「成長のマネジメント」について書こうと思う。


成長は自動的に起こらない

ドラッカーは以下のように述べている。

成長は自動的には起こらない。事業の成功によって、自動的にもたらされるものではない。成長は不連続である。成長のためには、ある段階で自らを変えなければならない。(中略)
長期にわたる高度の成長は不可能であり、不健全である。あまりに急速な成長は組織を脆弱化する。マネジメントを不可能にする。緊張、弱点、欠陥をもたらす。それらの緊張、弱点、欠陥のゆえに、ちょっとしたつまずきが致命傷となる。今日の成長企業が明日の問題児になるという宿命には、ほとんど例外がない。
成長そのものを目標にすることはまちがいである。大きくなること自体に価値はない。よい企業になることが正しい目標である。成長そのものは虚栄でしかない。

ドラッカー著「マネジメント(エッセンシャル版)」第9章 - マネジメントの戦略 - より

自動的に起きる成長は、成長ではなく肥満である

この章の中で、ドラッカーは「成長と肥満を混同することは、危険な間違いである」と説いている。

成長している(ように見える)企業の大半は、業界自体が成長したことによって、自分でも気づかないうちに太ってしまった企業だ。それはまるで、好きなだけ甘いお菓子を食べることができる環境で育った子供のように。

量的(売上高など)な目標を掲げる企業は多いが、成果を目標としなければ企業は正しく成長しない。誰だって盲目的に体重だけを増加させるような行為は好まない。体脂肪率などの目標値を設定し、そこに向けて食生活を整え、筋力トレーニングを積み重ねて脂肪細胞を排除するのだ。企業においても、同じように目標を定めて、地道な基本活動を継続し、その中で業績に貢献しない活動や人材を排除していくことが必要になる。

人は誰でも楽な方に流される

何も危機感を感じることがないのであれば、多くの人が一日中ソファーに寝っ転がって、スナックを食べながらゲームやNetflixに興じて過ごしたいと思っているはずだ。

それは企業も同じだ。
業界が成長している時は売り手市場なので、たいした努力をしなくても仕事が回ってくる。そして多少成果物の完成度が低くてもさほど文句を言われることはない。

しかし業界の成長には臨界点があって、いずれその成長は鈍化する。成長している業界においては、新規参入が増え、代替サービスも参入しようとしてくる。そして顧客やサプライヤーも交渉力を強めようとしてくるからだ。

そうなると、それまでの甘やかされ環境は消滅し、シビアな世界に一変する。その変化に対応できない企業は業界の下層に追いやられてしまうこととなる…

トップマネジメントがやるべきこと

まずは、成長の最高地点ではなく「最適地点」を検討しなければならない。自分の会社が、ガチのボディビルダー体形を目指すのか、スーツの似合うスリムな体型を目指すのか決めなければならない。それはその会社が置かれている環境によって異なってくる。ガチのボディービルダー体形を目指すには、いろいろなものを犠牲にしなければならないからだ。

現実的には、業界の近い将来の成長や鈍化を睨みながら、以下の2つのポイントを予測することになる。

① それ以上成長しようとすると、資源の生産性を犠牲にしなければならなくなってしまう地点
② それ以上収益性を高めようとすると、リスクが急激に増大する地点

そして、常に準備しておかなければならない。
その準備とは、以下の2つだ。

① これから起きるかもしれないことのために地道な活動を習慣化すること
② 変化すべきと判断したときには、それまでの習慣を捨て、新しい習慣に切り替える心構えを持つこと



念のため書き加えておくが…
ガチのボディビルダー体形を作るために(毎日数時間トレーニングをする時間を割くことができるだけでなく、タンパク質中心の食事を摂り続けることができるような)環境が重要であるのと同様に、太ることも環境が整わないとできない。太ることができる人もまたそれは一種の才能であり、ある意味運によるもの(力士においてはむしろ努力の賜物)だと考えている。

つまるところ、目標値をどこに置くか、そしてその目標に対して適切な努力をするかどうかと言うところになる。それは企業も同様だ。

(続きはまた来週)


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