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ドラッカーのマネジメントについて学ぼう - ⑳【まとめ】対話からスタートし、ボランティアのようにマネジメントする

さあ、金曜日だ。
金曜日は、ドラッカーの「マネジメント」について学ぶ日だ。

この本は非常に緻密に書かれており、記事としてはドラッカーが書いた内容を順になぞっていくようなものになってしまうかもしれないと思っているが、可能な限り現代的な解釈をして、わかりやすく解説を加えていきたいと思っている。

先週は「イノベーション」について書いたが、今日は全体のまとめを書いて、このシリーズの最終回とさせていただこうと思う。


組織が守るべき6つの原則

さて、20週に渡ってドラッカーの「マネジメント」を学んできたが、そろそろ終わりが近づいてきた。

ドラッカーが説いてきた組織が守るべき原則は以下の6つだ。
①組織は透明でなければならない。
②組織には最終的な意思決定者がいなければならない。
③権限には責任が伴わなければならない。
④誰にとっても上司は一人でなければならない。
⑤階層の数は少なくしなければならない。

そしてドラッカーは、これらの原則についてこのような言葉を残している。

これらの原則は何を為すべきかについては教えない。だが、何をなすべきでないかを教える。うまくいきそうもないことを教える。これは建築家にとっての建築基準に似ている。いかなる建物を建てるべきかは教えないが、制約条件を教える。
これらのことは何を意味するか。それは、個々の人間が、同時にいくつかの組織構造のなかで働くようになるということである。ある仕事のためにはチームの一員として働き、ある仕事のためには指揮命令系統のなかで働く。(中略)
生物にいろいろな組織構造があるように、社会的な有機体である組織にもいろいろな構造がある。今日必要とされているものは、唯一絶対の組織構造の探求ではなく、それぞれの仕事に合った組織構造の探求であり、発展であり、評価である。

ドラッカー「マネジメント(エッセンシャル版)」- 第9章 マネジメントの戦略 - より

ボクたちは組織から恩恵を受けている。
現代社会においては、誰もが何かの組織に属している。フリーランスとして自由に働いていると思っている人であっても、法に守られていて、地域社会に属していて、収入を得るためにサプライチェーンの中の一部として技術や労力を提供していることは間違いない。

時代の変化とマネジメント

現代社会が発展してきたのは、複雑に関係している多くの組織が、それぞれ体系的に「技能」と「知識」を進化させてきたからだ。そういった体系化によって「マネジメント(管理や育成を行うチームの意)」は、それぞれの体系の頂点に君臨する存在と思われてきた。それは事実だろう。

しかし「技能」という点で考えると、今やそれはテクノロジーに取って代わられた。ロボットが人よりも速く正確に仕事をこなし、AIが人間に気付けないミスを発見し、それを自動で修正する時代になった。もう人の「技能」を磨くためのマネジメントは不要になりつつあるのだ。

「知識」という点においても変化が進んでいる。
技能にテクノロジーが導入されることによって、職人的な技術を有している人よりも、システムの保守運用のナレッジを有する人の方が必要とされるようになってきた。そして、企業は往々にしてそういったナレッジを有している人を派遣や外注に頼むので、社員として雇用されている人に求められるのは、ごく限られた範囲の専門分野における知識だ。

さらに言うと(昨今のブームとして)一定以上のマネジメント層の人員を、他業界から招へいする傾向がある。それによって、部下の仕事を経験したことのないマネージャーや経営者が増えている。そうなると、上司は部下にそれぞれの専門的なアドバイスを聞かなければ組織を導く方向性を見据えることができず、部下(である専門家)は上司の指示を仰がなければ、組織として進むべき方向を知ることができない、というパラドックスに陥ることとなる。

対話からスタートし、ボランティアのようにマネジメントする

ドラッカーは「人をマネジメントすることは、仕事をマーケティングすることだ」と説いている。マーケティングとは企業が顧客の欲求を満たすために、商品やサービスを販売するためのさまざまな活動のことを指す。この「顧客」を「従業員」に置き換えると、現代のマネジメントの本質が見えてくる。

つまり、マネジメントは「組織が従業員にどんなことをさせるのか」を出発点にするのではなく、以下のような対話(dialogue)からスタートすべきである。
・従業員は組織に何を望んでいるのか
・従業員にとって組織に所属する価値は何か
・従業員が組織に所属する目的は何か
・従業員が組織の中で生み出すことができる価値は何か

最後に、ドラッカーの言葉を引用しておこう。

つまるところ、フルタイムの従業員さえ、これからはボランティアのようにマネジメントしなければならない。有給ではあっても、彼らには組織を移る力がある。実際に辞めることができる。知識と言う生産手段を持っている。
動機づけ、特に知識労働者の動機づけは、ボランティアの動機づけと同じである。ボランティアは、まさに報酬を手にしないがゆえに、仕事そのものから満足を得なければならない。挑戦の機会が与えられなければならない。よりよい仕事のための訓練を受けられなければならない。成果を理解できなければならない。

ドラッカー「マネジメント(エッセンシャル版)」- 付章 マネジメントのパラダイムが変わった - より


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