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欧州をめぐる旅(40年ぶりにパリを訪ねてみたら- 2 - やっぱりパリはパリだった!)Sophies Zimmer

40年ぶりのパリ、変わっていなかったこと

その1- 公共機関のサービスの質は変わらず
パリの北駅で降りて、まずミュージアムパスを買おうと、構内の観光案内所に向かった。観光案内所は、意外にこじんまりしていた。スタッフは2人しかおらず、同時に2組の客しか対応できない。幸い、私たちの前に客はいなかった。だが2人はお喋りに忙しく、私たちの方をなかなか向いてくれない。
 
この光景、見覚えがあった。そう、40年前もそうだった。役所など公的機関の窓口で、職員同士が私語に夢中になり、来訪者に見向きもしないというやつ。驚いたのはビザ申請のために行った移民局。外国人が長蛇の列を作って、手続きするのを待っているというのに、担当職員の女性2人は、自分たちが身に付けているペンダントやら指輪やらを見せ合って大いに盛り上がっている。ここはアクセサリーの品評会じゃないんだよー。私は開いた口がふさがらなかったが、その光景は今なお見事に再現されていた。
 
お喋りを中断して申し訳ないという呈で、ミュージアムパスをなんとか購入し(しかも高い!)、次は、1週間有効なメトロの定期券を買いに別の窓口へ。すると、受付の女性に何だという顔をされ、1週間定期を購入したいと言うと、早口で返答された。聞き取れなかったので聞き返すと、無表情で前方のモニターをあごで示された。この金額を払えってことね。フランス語は聞き取れなかったが、彼女がマックスの省エネモードなのはわかった。

開放的な雰囲気のパリ北駅(治安は悪いらしい)


その2 - カフェ、レストランで
サービスの質と通じるかもしれないが、カフェやレストランで、ギャルソン(ウエイター)との意志疎通がうまくいかないという点も変わらなかった。
 
とにかく、こっちを向いてくれない。呼べど叫べど、ギャルソンはほかの客の対応に忙しそうだ。こちらに注意を向けるコツがあるのかもしれないが、私は2年の滞在でそれをついぞつかめなかった。ましてや40年ぶり、しかも客は当時の何倍にも増えている。当時のコツがあったとしても、完全に塗り替えられてるだろう。
 
店の前に立っているギャルソンに席に案内されるまではよいのだが、それからなかなか注文を取りに来てくれない。シルブプレー(お願いします)を10回くらい繰り返し、やっと注文が叶うが、さんざん待たせたというのに、いざ注文を聞くときは、急かされる。私は用意していた仏作文も吹っ飛び、口から出るのははアワアワ・・・。それを目にしたギャルソンはいらいらして行ってしまおうとする。一度離れると、また待たされるので、私は慌ててメニューを指さすという最終手段に出た。
 
飲食を済ませてからの会計がまた大変だ。ギャルソンをこちらに呼ぶ。もちろんなかなか来てくれない。やっとの思いでこちらに来てもらい「ラディション、シルブプレ(会計をお願いします)」と言う。それから伝票を持って来るまで待ち、その場で支払うが、お釣りがあれば、お釣りを取りに消え、戻ってくるまで今か今かと待っていなければならない。時間があり余っているならいいが、美術館などの予約時間が迫っているときはいらいらしてしまう。私の頭には何度も「非効率」という言葉がよぎった。
 
会計は一様に出入口のレジで済ますという、日本のシステムが恋しかった。テーブルに注文用のタブレットがあれば、もっといいのだが。観光名所の予約はオンラインで済ませるのが効率的と盛んに催促するのに、注文を効率的にするタブレットはなぜ導入しないのだろうか?

パリの人気レストラン、ギャルソンは大忙しで、かまってくれない(´;ω;`) 

その3 - メトロにて

パリのメトロ、薄暗く、なんか不気味

薄暗くて、淀んだ空気がもやーっと絡みつくメトロも変わっていなかった。ヨーロッパの電車は、自動ドアではなく、乗る人がドアのボタンを押して開ける。パリの電車も当然そうだ。

40年前と同じ、手動式で開けるドア

40年前は、写真のような把手を上げて開ける手動式であった。さすがに全部ボタン式に入れ替わっているかと思いきや、以前と同じ車両かは知らないが、なんと、把手を上げて開けるタイプがまだあるではないか!

 満員なのに太鼓を抱えて乗り込んできたオジサンが、突然太鼓叩いて歌い出す、そんな光景も変わらない(その後、しっかり小銭を要求)。痛い足を引きずって歩く我々の頼みの綱、エレベーターやエスカレーターも、見つけた、助かったと思ったら、故障中で動かず、なんていうのもざらである。

無賃乗車が横行するメトロの改札

堂々とキセルする(つまり、改札のターンバーを乗り越える、或いは前の人と一緒に入る)人も結構いて、やっぱり変ってないなあと思った。 出口はセンサーが人を感知してドアが開くしくみだが、そのセンサーに手をかざし、出口ドアから入るという、つわものもいて、それはさすがに驚いた。

そして、地下鉄に漂う臭い。特に、端っこの薄暗い空間、時にはエレベーターの中で、それは強烈な臭気を発していた。そう、例のアンモニア臭である。これは、公共機関のトイレが有料であり、トイレ自体あまりないことの弊害だろう。立ちションの現場を目撃したわけではないが、そこかしこに残された痕跡がそれを物語っていた。これも変わらず。 

かく言う私も、外出中、数々の危機に直面した。40年前はトイレのことなど気にしたこともなかったのに。トイレ問題といい、あちこちで待たされる苛立ちといい、40年後の私はすっかり日本仕様に慣れ、パリ仕様に適応できなくなっていた。すっかり変わったのは、私の方だったのかも(;^_^A。


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