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SBG 12  道草や寄り道をしよう!

遠回りの効用
 「寄り道こそ近道」。もしくは近道ではない場合であっても、新しいフェーズを迎えて新たな自分として出発できるきっかけとなることは多くあります。
 スマートフォンのずっと前に「電話機」を発明したベルは “Leave the beaten track behind occasionally and dive into the woods. Every time you do, you will be certain to find something you have never seen before.*「ときには踏みならされた道を離れ、林の中に分け入ってみなさい。そうすればその度に、今まで見たことがない何か新しいものをきっと見出すでしょう(著者訳)」と残しています。

 学校でも、先生の余談話からその科目に興味が湧き、もっと知りたいという意欲につながることの経験もあるのではないでしょうか。私は、脱線ばかりで生徒から注意を受けることもありますが、かつて教材で「APOLLO 13」*を扱った年がありました。

 映画と、掘り起こしたセリフの英文原稿を冊子にして4週以上に渡って授業で展開しました。他の先生からは、何でAPOLLO 13なのかと冷たい眼差しを受けましたが、インターネットが普及する前の当時は、生の英語の教材は、映画などから取り込むのが方法のひとつでした。クラスの3分の1は、教科書を使うのとは異なる授業を喜んで、楽しんでいたように見えました。文系進学に特化したカリキュラムのクラスでしたが、なんと某大規模大学の理工学部、宇宙工学学科(当時)に進学するきっかけとなった女子生徒まで出ました。

 生徒というより、私が好きで、ロケットの原理から、「月」の科学、アポロ計画と当時の社会情勢(スプートニクショック以降の動き)、アメリカ国民の日常など、文化論満載に盛りに盛って楽しんだ記憶があります。申し訳ない言い方になりますが、教師が楽しんでいることほど生徒に与えるポジティブな学びの見本は無いと思っています。そんなことからも、特色のある生徒が出るきっかけになるのだなあと。

 さてビジネスの世界では、とっくにその「変化力を持った人材」が会社の持続的発展に必要不可欠であると気付いて動き出している企業もあります。脅すわけではありませんが、この「力」は「就活」を始める直前になってから、スキルとして覚えて対処できるものではないでしょう。

 高校生のキミ達が、このような社会の変化に気づいてなく、「変化できる力」を身に着けようとしないまま大人になったら、社会の中で「美しく輝いて」いられるでしょうか?

 「異文化コミュニケーション」とか「多様性を受け入れる」とか「自分の価値判断と異なるものを持った他者と相互理解を持とう」とか叫ばれていますが、前項SBG6で触れたように、皆さんが委ねてしまっているインターネット社会そのものが、安心して、信じてしまっていていいものでは既になくなっているのです。
 変化力をつける手段は「自分で考えることを放棄しない」ことです。自分の人生をAIに委ねないでくださいね。
 そして本項で引用したベル氏の言葉が意味している「寄り道」や「脱線」することも、時々思い起こすことが必要です。
「成功」や「成果、結果」の為には、出来るだけ効率よく、最短の近道を進みたくなるものです。しかし、それら「結果としての成功」や「望んでいた結果」を得るヒントは意外にも効率性を追求しつくした先に生まれるものではなく、特別な理由や目的もなく、ちょっと寄り道してみた所に潜んでいるかもしれませんね。

ここがサスティナブル!
 2010年代以降から現代の世界を表す言葉として、「VUCAワールド」というのを皆さんは授業で聞いたことがあると思います。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)、それぞれの頭文字から取ったものでしたね。
企業は「不安定さ」や「見通しの立たないこと」を最も嫌います。「予想不可能」は「どうお金儲けをしたら良いのかがわからない」ということを示しています。
 そのような企業がどんな人物を欲しがるかと考えれば、当然「変化に対応できる人」となります。
 既に述べてきましたが、AIがはじき出した「おすすめ」、「あなたにピッタリ」にひたすら頼っていると、自分で考えることをやめて、AIにあなた自身を委ねることになります。そのことに慣れきった人間から、新しい発想や、激しく変化する社会に対して「変化できる人間」はうまれません。あなたという人間が、人として美しく輝いて生きる術(すべ)をこの社会で身に着けるには、できるだけAI任せ、他人任せにしないで、あえて遠回りしたり、AIの推奨を選ばない訓練も必要でしょう。


原文(英語)引用先:*Gotta Wanta: Make Changes for Quality of Life; Inspirational Quotes and Remedies (English Edition) Kindle版 Shira Rister (著)

APOLLO 13 Directed by Ron Howard, Starring Tom Hanks. Universal Pictures 1995 (United States). 


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