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なぜ「顧客体験」と「効率化」は天秤に掛けられるのか

「顧客体験を優先するには効率が下がるのを許容しないといけない」
「社内の効率化が大事なので、顧客体験改善の優先度は低いです」

なぜこのように「顧客体験」「効率化」天秤に掛けられることが多いのか。

顧客体験と効率化が天秤に掛けられる理由

顧客体験と効率化が天秤にかけられる要因は様々だが、個人的に以下の2つが原因と考える。

①顧客体験と効率化をどちらも追求できないというイメージが先行しているから
②顧客を理解していないから


顧客体験は人間味溢れる、工数かかりそう。
それに対し効率化は、機械的なイメージが強く、人間味あふれる対応と機械的な要素が共存しづらいという考えに至る。

たしかに企業において「効率化」は重要であるものの、顧客の心を動かす体験を提供するには、従業員の顧客に対する熱量や想像力といった高エネルギーが求められる。

この高エネルギーの顧客体験は、属人性が高く再現性も低いと考えられがちだ。(理由は後ほど)

そのためどうしても効率化と比べた時に「無駄」と思われ、後回しにされてしまうのだ。

しかし、顧客体験で有名なザッポスを例に挙げてみよう。ザッポスは創業から10年目で年間売り上げ1000億円を達成した靴の通販会社である。

ザッポスの戦略及び取り組みを簡単に紹介すると、

・通常の企業が普通に使っている広告宣伝費を、カスタマーサービス強化及び顧客体験の向上に投資し、顧客のクチコミを通じてマーケティングに結びつける
・電話対応のマニュアルがなく、オペレーターには顧客と自由に会話をする権利がある

このように効率化を実現する一つの手段であるマニュアルが存在せず、オペレーターが一人の顧客と数時間以上にわたり会話をするエピソードでも有名だ。

一見非効率に見えるが、顧客体験の向上がマーケティングや事業拡大のために必要な業務の効率化に寄与した。

ただザッポスの事例を挙げると、「それは理想論すぎる」という意見も少なくない。

ただ本当に理想論すぎるのだろうか。

多くの企業は顧客体験より目先の売上やCVに注力しがちだ。

それが担当者のKPIだから致し方ないかもしれない。

ただ目先のCV改善や短期的な売上向上施策をやっても、中長期的に事業が成長しなかった企業は、また延々と目先のCVを上げるような、結果的に非効率なことを続けてしまっている

だからといってザッポスをそのまま真似て、
「今日から顧客ととりあえず長くたくさん会話しよう」という単純な話ではない。

顧客体験=丁寧にたくさん会話する、お客様にやさしく接する

という安易な考え方で取り組んでしまうと結果につながらない。

もちろん優しさやおもてなしも重要であるが、顧客が根本的に求めていることは課題解決だろう。

たとえ丁寧に顧客に説明したとしても、それが顧客に不要なもので課題解決に至らなければ購入に至らない。

多くの企業で「顧客体験を頑張ってみたけど、結果が出なかった」というのは、自社のプロダクトや商品の顧客やターゲットのことをちゃんと理解できていないからだろう。
だから顧客体験=属人性が高く再現性が低いと思われてしまうのも無理はない。

意外と企業は顧客のことを知らない

顧客体験を向上させることが重要なのはおそらく小学生に言っても理解するはず。

しかし、前述したように顧客体験とは表面上で顧客に優しく接するとかそういうものだけではない。

本当に自社の顧客を理解しないと、企業がやっていることはただのお人好しで終わってしまう

今の事業をボランティアではなくビジネスとして取り組んでいるのであれば、お人好しではなく、ちゃんとした顧客体験の構築により利益を伸ばす仕組みを構築する必要がある。

そのためには顧客理解を促進するために、顧客の声に耳を傾けることが第一だ。

意外と顧客の声を聞いていない企業や担当者も少なくない。

データのみや勘に基づく施策、他社の事例を表面的になぞった取り組みでは自社らしさも顧客体験も作り出せない。

そして中途半端な顧客体験もどきで成果につながらず現場は疲弊し、組織状態や事業が悪循環に陥る。

だからこそ顧客の声を聞くという原点に立ち返って、事業を展開していく必要がある。

それが結果的に効率化に繋がっているから。

顧客との会話をコストと捉えるか、資産として捉えるのか

顧客との会話=コストとして捉えている企業も少なくない。

だからといってコストとして捉えている企業を批判するわけでもないし、
たくさん会話していることが正しいとも思わない。

中には情報をもっとみやすく提示しておくことで減る本来発生しなくても済んだであろうお問い合わせといったコミュニケーションも存在する。

ここに多くの企業がリソースを割いていたから、顧客体験まで手が回らなかったのも事実。

しかし今の時代は様々なツールやUX改善によって、顧客の負担を減らし、企業の効率化を測った上で、その従業員の空いた時間に顧客体験を向上させることにリソースを投下するといった取り組みが実現しやすくなっている。

だからこそ、効率化できる部分は思う存分効率化して、しっかりと顧客の声に耳を傾ける文化を形成していってほしい。

そうすることで、顧客の声が事業の道標となり、資産となっていくだろう。




<参考文献>

①ダイヤモンド・オンライン,広告宣伝費はすべて「顧客体験」のために!圧倒的なクチコミで育てるブランド戦略,https://diamond.jp/articles/-/38631

②従業員体験(Employee Experience)とは?企業がEXを向上させるメリットとその事例,https://jtb-hrsolution.jp/hrsupplement/evp/101



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