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「子どもなのにすごい」はもう通用しない。「U-22プログラミングコンテスト2019」最終審査会全作品感想

2019年10月22日、U-22プログラミングコンテスト2019の最終審査会が行われた。一部をピックアップした詳細な記事は以下に掲載しているのでそちらを見てほしいが、当然全部は紹介しきれないので、ここで覚書的に発表された全作品の感想を記しておく。

ちなみに、さすが最終審査に残っただけあって、全作品どれも素晴らしい作品であったことはあらかじめ申し上げておく。

HolodealCity(Rapture、日本工学院八王子専門学校)

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疑似ホログラムをボードゲームに応用したというもの。こういったおもしろい技術をゲームに応用しようという考えはとてもよい。VRもそうだが、こういうのはやってみてはじめて、おもしろさがわかるのだろう。

Satellite Traveler(team01、日本工学院八王子専門学校)

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スイングバイ(星の重力を利用して軌道を変更する方法)を使った天体シミュレーター。ゲームモードでスイングバイを実現するために太陽の重力をオフにしなくてはいけなかったり、若干課題は残っているようだが、今のところMitaka以上のシミュレーターを見たことがなかったので、これを越えられれば大いに期待。審査員の大人達が少年のような目をキラキラさせていたのが印象的。

地下楼 The First Contact Demo(瀬戸 徳、明治大学)

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幻想的な光の演出が特徴的な2Dアクションゲーム。実はゲームよりも、追加や改良がカンタンにできるように、その基盤から作っているというところが目玉。既存のものを使わずにイチから作っていることに凄さを感じた。

FindYourBusDX(酒井 駿、Greenwich High School)

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リアルタイムでバスがどこを走っているかわかるアプリ。特筆すべきはバスにあらかじめGPSを搭載する必要がないということ。ドライバー専用のアプリと乗降者用のアプリをサーバーでつなぐことで、低コストで設置可能。これ、幼稚園や保育園のお迎えバスとかでも使えるんじゃないだろうか?けっこう実用的。

ボコセル(なまこラーメン、HAL大阪)

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細胞が集団で病原体をフルボッコ(笑)にするゲーム。ピ○ミンと何が違うのかと突っ込まれ、違いを一生懸命説明していたが、素人目には同じようなシステムに見えるのだが(笑)。まあ本人達が違うというのできっと違うのでしょう。

とれつめ(布川 陸、東北大学)

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こちらも「動物タワー」を模した、もといリスペクトしたような作品。違うのは自分で写真を撮って、それが自動的に切り抜かれ(手動切り取りも可)、落ちてくる素材として使える点。画像の自動切り抜きは、別の分野でも使えそうな機能なので、なにかに応用できるとよさそう。

糸かけ曼荼羅色シミュレーター(河内 誠悟、N高等学校)

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糸かけ曼荼羅をシミュレーションできるアプリ。糸かけ曼荼羅自体はじめて聞いたが、なんだかおもしろそう。審査員も言っていたが、こういう幾何学的な動きって、(結果だけでなく)途中の動きもひとつひとつシミュレートできるとすごくキレイに見えると思う。

Security Arise of Knowledge (SAoK)(電子遊戯部、新潟コンピュータ専門学校)

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セキュリティを題材にしたカードゲーム。DDoS攻撃とかSQLインジェクションとか、セキュリティ関係者にはなじみのある言葉が並ぶので、その辺が好きな人にはおもしろいと思う。審査員が誰をターゲットにしているの?という質問をしていたが、まあ専門学校生とか、これからセキュリティについて学びたいと思っている人の取っ掛かりにはいいのでは。ひとつ気になったのは、セキュリティ情報がバージョンアップしていくたびにサーバのセキュリティもアップしていくのかな。いつしかつながらなくなる日が来ないといいのだけれど。

Cell Sheet(Toast&Fried egg、電気通信大学)

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今回の中で一番実用的だと思った作品。マークシートを効率よく集計したり、自由記述の部分も採点補助してくれる。アンケートをひとつひとつ集計するという実体験のつらさから作った作品だが、こういった実苦労から作品を作ろうという傾向はとてもよいと思う。

Capture the Elements(冨田 晴生、Hope International Academy Okinawa)

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元素を用いた早押しゲーム。小学生でありながら、元素についての知識は大人顔負け。化学がすきなんだなーっていうのがヒシヒシと伝わってくる作品。あとプレゼン練習してきたんだろうな、うまかった。

ブラウザ上で動作するDNCL処理系「Tetra」(大門 巧、東海大学)

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小学校で2020年からプログラミング教育が始まるのを受けて、おそらく今後の統一試験でプログラミング試験はこうなるんだろうなーというのを見越した作品。大学入試センターでは「情報関係基礎」の出題に当たって既存のプログラミング言語を用いずに「センター試験用手順記述標準言語」(DNCL)という独自のプログラミング言語を使うらしい(はじめて知った)。それがブラウザ上で処理できるので、どの環境でも使えますよ、というもの。ほえー。

STEAM GEAR(O.M.T.Production、日本工学院八王子専門学校)

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星の形をした機械から、五方向に鎖が伸び、それを駆使しながら面をクリアしていくゲーム。これ、ゲームの中では一番完成度が高くて、普通に売っててもおかしくないレベル。個人的にやってみたい。

mindPump(鵜狩 慧久、九州工業大学)

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マインドマップを自動生成してくれるツール。現状言葉の抽出は検索から引っ張ってるみたいだけど、ディープラーニングとかその辺と組み合わせるとけっこういいのができるのでは、と思う。使ってみたい。

コロボシ(A.L.F.A.Company、日本工学院八王子専門学校)

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こちらも完成度の高いゲーム。星が転がりながら面をクリアしていくゲーム。普通にアプリストアとかで売っていてもおかしくない。というか星が転がるのかわいい。

Blawn(上原 直人、開成中学校)

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なんか今までのプログラミング言語が使いにくかったら、自分で作っちゃいましたよ、っていうツワモノ。関数やクラスをイチイチ宣言しなくても組み込んであるからすぐ呼び出せるよ、的なことだったと思うけど(定かではない)、これを一週間〜一ヶ月で作っちゃうんだから、ちょっとヤバイ。しかも中学生。ヤバすぎる。

LOCUS(眞部 智也、ECCコンピュータ専門学校)

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GPGPUを使ったシューティングとレーシングを組み合わせたゲーム。コースづくりも簡単にできるように、UIにもこだわった作りで、とにかく美しい作りが特徴的。

「子どもなのにすごい」はもう通用しないレベル

今回審査を聞いていて特徴的だったのは、審査員の大人が「参りました……」と大きくため息をついていたことだ。今まで「子どもなのにここまでやってすごいね」という評価が、ここ数年で明らかに「大人でもここまでできない」レベルに変わってきている。

U-22の実行委員長でサイボウズ社長の青野慶久さんが、僕にポロッと漏らした言葉。

「今年はコンテストが40周年ということもあって、あえて未応募のオリジナル作品っていう条件を加えたんですよ。だからどうかなーと思ったんですけど、このレベルでしょう。もう恐れ入りました、というしかないですよ」

「子どもなのに」は、もう通用しないレベルまできている。


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