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オッパが日本に来た



9月。
まだまだ日本は夏の暑さ。

夏の終わりが近付いて、物悲しくなって
薄靄の中の"あの日"を引っ張り出しては、
忘れないように繰り返し繰り返し再生していた。



寝る前の電話、
朝起きておはよう。

日常に当たり前に連絡を取るようになっていた私達は、
当然毎日のように会いたいねって話した。

会いたいなら来てね、って
私のこと本気なら来てね、って
言いながらどこか半信半疑。
来るわけないハーフ
来てほしいハーフ
ハーフ&ハーフの戒めと期待。



そんなこと言ってるうちに
サクッとオッパはチケットを取った。




「来週行くよ」


えええ

わああ

驚きと嬉しさのハーフ&ハーフ。

バタバタと来る日までの段取りや仕事の調整をして、
気がついたら成田空港への道をかっ飛ばしていた。



車の運転は好き。
自分の手足のように動かす、その感覚が好き。


でもね
成田空港遠すぎるのよ、、、!!!


待て待てこの道さっき通ったよね。
いやそんなわけない一本道だわ。
でも待って、
走っても走っても畑なの。
この道ずっと見たことあるのよ既視感しかないよ。

永遠に辿り着けない、
世にも奇妙な物語の中に入ったように
永遠に同じ道のループに恐怖を感じながら
何時間走ったのでしょうか。

やっと…!
ああやっと成田空港なのですね…!
涙出そうでしたよね。


おかげさまで着いた頃にはもうゲッソリ。

出口前の円柱にもたれかかり、
ふーーっと長い息を吐く。

ああそうだった
仕事休みにするのにバタバタのスケジューリングで、
前日はほぼ寝てないんだった。
そうだった…



人の話し声や歩く音、キャリーを転がす音、
全てが優しく遠く聴こえて
体はここにいるのに頭はどこか遠いところへ。
夢うつつ、
まさにそんな感じ。


薄靄のかかった頭にあの日の優しい声が響く。
私の名前を呼ぶ。
薄靄の甘い声



顔を上げたら、
あの日と同じ。



目尻の下がる優しい笑顔で、
オッパが日本に来た


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