見出し画像

「ミーティング?いえ、MTGですけど……」カードゲームで学ぶ仕事術

共有予定表に「MTG」と書き込み、会議室を押さえる。同僚や上司に「今日、15時からMTGですよ」と声を掛ける。「え、今日会議なんてあったっけ?」と困惑したメンバーがぞろぞろ会議室に集まったところで、机に上に並んでいるのはアジェンダでも、名刺ホルダーでもなく、60枚のカードの束である。
そこで高らかにこう宣言するのだ。

「いや、MTGって、『マジック:ザ・ギャザリング』に決まってるじゃないですか!!!

『ニューカペナの街角』もう予約しました?…え、知らない?

社会人になったばかりの頃、「MTG」という略語をあちこちで目にするたびにそんな妄想に浸ってきた。仕事中も頭の中はゲームのことでいっぱいである。ところが、今では気付けば休日も頭の片隅に仕事のことを考えながら対戦にいそしんでいる。仕事がうまくいかないとゲームの成績も不調だ。

仕事とプライベートは切り離したいなー。と思いながら過ごしていたある日、ランクマッチで鬼のように強いプレイヤーとぶつかりあえなく敗北したとき、稲妻が走るように閃いた。

ルールが複雑なTCG(カードゲーム)ができるやつ、仕事もできそう!!!


同じカードを使っていても異次元の強さ


どういうことなのか。

まず前提として、私が言うTCGとは、『マジック:ザ・ギャザリング(MTG)』や『遊戯王』といった、カードを揃えて対戦するゲームのことである。
(余談も余談だが、筆者の地元では『マジック:ザ・ギャザリング』の略称は「ギャザ」だったのだが、一般的に「マジック」というらしい。ギャザの方がオリジナリティがあっていいと思いませんか?)

「存在は知っているけどルールは分からない」「すごく高いカードがあるんでしょ?」といった方も多いと思う。そう、TCCにおおむね共通する特徴として、ルールが複雑で慣れないとぜんぜんよくわからんということが挙げられる。その気持ち、とてもよくわかる。

こういうカードを使います。何が書いてあるのかわかるだろうか

一例として、「マジック」のルールを筆者なりにかいつまんで説明してみる。
まず、カードには土地と呪文があって、呪文は土地から出る「マナ」をリソースにして発動できる。呪文にはクリーチャー(生物)やアーティファクト(機械)を召喚したり、エンチャント(呪い)を付与するなど場に残り続けるパーマネント呪文と、その場で効力を発揮して墓地(捨て場)に送られるインスタントとソーサリーに大別することができて、さらにインスタントとソーサリーはそれぞれ発動できるタイミングが異なる。これらの呪文を駆使してプレイヤー同士のライフポイントを削り合うことが目的のゲームである。

……わかる?いや、筆者の説明が下手なのを差し引いても、カードが手元にない状態でルールを頭に詰め込むのは不可能だと思われる。上記は基本の基本にすぎず、カードの種類も発動方法も効果も勝利条件もクリーチャータイプも土地の種類もエキスパンションごとのルールも各種フォーマットも覚える必要があることを考えると、とても理解が追い付かない。

さらに言えば、カードの種類が膨大すぎるので、それなりのベテランプレイヤーでも「なんだそのカード…?」という状況に陥りがちなのが、TCGの世界なのだ。

持ってるけど「英語だからよくわかんない」と封印していたカードも多い

強いやつの頭はどうなっているのか?

そんなゲームやるなよ…と思われてしまうかも知れないが、筆者はPCやスマホでプレイできる「マジック:ザ・ギャザリング アリーナ」(MTGA)をプレイしまくっている。あまり勝てないけれど、とてつもない戦略の幅広さと奥行きがあるため、「こういうデッキも試したい!」という発想が広がってくるのが面白さのポイントだと思う。

ようやく本題に入るが、このTCG、「やることが複雑すぎてミスが許されないため、遊びなのに仕事みたい」という状況に陥りがちなのだ。

マジックを例に挙げると、上でごたごたと抜かした通り、「呪文を唱えるにはコストが必要」だ。そのコストはマナと呼ばれ、毎ターンに1枚だけ場に出すことができる土地カードから、1ターンに一度だけ引き出すことができる。

つまり、1ターンにできること(使えるマナの総量)は限られている。さらに、毎ターンごとに(土地を場に出せば)使えるマナが増えていくことになる。

神河の土地カードはかっこいい

「コストの重い呪文を唱えるか、軽い呪文を二つ唱えるか、軽い呪文を一つ唱えて残ったマナは相手へのカウンターにするか、何も唱えずに無防備であるかのように見せるか」といった無数の戦略が広がる。

これはまさに、仕事のリソース管理そのものだ。マナごとの人時生産性を検討するように、組織のリソースをどう割り振り、そして先を見据えて「何をやって、何をやらないのか」を考えていく必要がある。

ゲームがうまいプレイヤーは、この検討と判断のスピードが恐ろしく早い。間違いなく仕事もデキる。

必要なのは、最適化された順序での行動

コストの話ともつながるが、TCGの戦略の上では行動の順序が非常に重要だ。

  • 土地は一枚しか出せない

  • 呪文ごとに唱えられるタイミングが決まっている

  • こちらの行動に合わせて相手もカウンターで行動ができる

ということから、極力リソースを大きくしながら、相手の手札や次の行動を予測し、「自分がやりたいことをする」「相手がやりたいことをさせない」というのがプレイのセオリーだ。

(このセンテンスは意味が分からないと思うので読み飛ばしてOKです)
「手札に"メカ巨神のコア”来た!早速場に出して…機体は揃ったけどマナが足りないから、次のターンに合体や!」などと事を急いてはいけない。1ターンも猶予があれば間違いなく除去されてしまう。マナ基盤が整ってから合体をすればそのまま攻撃もできるし、除去されても合体パーツが再度着地するので、"電圧改竄メカ"の8点ダメージで相手のファッティを除去することもできるはずだ。

電圧改竄メカ大好き

相手がカウンター呪文を持っていると考えれば、まずは軽い呪文やクリーチャー攻撃で様子見、対応を見てから本命のカードを切る、というのも基本的な戦略だ。当然、相手もこちらのキーカードを排除するために、我慢して何も対抗手段がない振りをしてくる……。

先々の自分自身の行動だけでなく、不確定要素についても考慮にいれながら順序だてて行動を行う。そんなことができるプレイヤーならば、どんなにややこしいプロジェクトであろうとスイスイこなす「しごデキ」間違いなしだ。

カッカしていては勝てない

さて、重ねての減給となるが、こんな複雑な戦略を求められるゲーム、筆者は全然強くない。負ける、負ける、負けまくる。工夫して若干勝てるようになっても、ほんの少しのミスが敗北につながる・・・。

勝てない理由は置いておいても、「勝てない!もう1戦!」と頭に血がのぼると本当に勝てない。マインドは非常に重要な要素だ。常に冷静な判断が必要なゲームだからこそ、クールな精神で臨まなくてはいけない。

渾身のコンボがサクッと除去されたり、あらゆる行動が妨害された挙句コピーした"ターシャズ・ヒディアス・ラフター"2連発でライブラリーが破壊されても、「ズルカードだろ!クソゲー!」などと叫び出してはいけない。怒りは目を曇らせ、負の連鎖に陥ってしまうことになる。

追放ってのがまた憎いんだ

もちろん、当然のことだがこれもビジネススキルそのものだ。突然のイレギュラーな要請、理不尽な叱責、ありえないミスなどが発覚しても、できるのはベストを尽くすことだけだ。そこでカッカすることなく、冷静さを保てる精神こそ、仕事のできるビジネスマンに必須な素養と言えるだろう。

「仕事術」って別に特別なものじゃない

完全なこじつけも含めて、ゲームのうまさがビジネスの能力にも結びつくのでは?という話をしてきた。「現状を把握し、未来を予測し、忍耐強く行動することが勝利につながる」ということだが、しかし言ってしまえばTCGに限らず、野球でもサッカーでもビリヤードでも釣りでも子育てでも同じことだ。一芸に秀でるものは多芸に通ずという。うまいやつは何をやってもうまい。

「ビジネススキル」「仕事術」というと敷居が高く感じるが、意外とさまざまな趣味や遊び、プライベートの経験が働く能力にもつながっていく。新卒採用でも部活動経験が評価されていたりしたのは、そういうことなのかもしれない。

そうと決まれば早速上司や同僚に「MTGお願いします!」と声を掛けてみよう。もちろん、始まるのは退屈な会議ではなく、手に汗握る高度な戦いだ。その中で見せつける強さこそが、明日の働き方を変える仕事術を生み出していくに違いない。

【この記事を書いた人】
NAME:こなごな
新卒で就活先なし・転職3回と華麗な(失敗の)経歴を持つライター。

この記事はファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。©Wizards of the Coast LLC.



「ITやモノづくりの世界を身近に感じてもらいたい」そんな思いでこのnoteを始めました。書き手は全員転職経験者。実体験にもとづくエピソードや、転職に役立つかもしれない小ネタ、気になるニュースなどをざっくばらんに更新していきます。気に入っていただけたら、ぜひサポートをお願いします!