三百三十八話 会いたかった

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


訳あって謹慎が明けて、学校に登校した私…。

教室に登校する前に、理事長先生に呼ばれた…。

理事長先生から謹慎のことを少し聞かれたりして。

その後に謎の天使のカードを頂いた…。

カードはプリズム色に輝いていて…。

大天使の絵が描かれているのであった…。

綺麗な女性が祈りを捧げている絵…。

女性の背中には天使の羽が生えている…。

誰もが想像するよであろう典型的な天使像。

そんな不思議な天使のカードを理事長先生に頂いた。


女悪魔グレモリーがスマホを魔改造されて.。

天使のカードから大天使ガブリエルを召喚できるようになった。

スマホの側面でカードをスキャンすると召喚できるようになった。

自分でも何を言っているかわからないけれど……

そうなってしまったから致し方ない…。

グレモリーから召喚の仕方を教えてもらって…。

試しにガブリエルを召喚してみたのだけれど…。

スマホの画面にガブリエルの姿が映し出されて…。

なんと実際にもガブリエルが召喚されているのだった。

私の背後に大天使ガブリエルが召喚されていて…。

私と一緒にいた花子さんもビックリしてしまい…。

背後にいるガブリエルを消したいのだけれど…。

やり方がわからない…。


グレモリーにやり方を教えてもらおうと…。

アイコンタクトを送ってみたけれど…。

何か勘違いしたグレモリーさんは…。

大天使ガブリエルのステータスの見方を教えてくれた…。


大天使ガブリエル(属性風及び万物)

レベル99

HP9999

MP9999

腕力23

知恵55

魔力56

体力22

素早さ47

運60


レベルカンストだし…。

HPとMPも最高値らしい…。

さすが大天使というところだろうけれど…。

ガブリエルは攻撃型ではなくて…。

回復が得意な回復型らしい…。

スキルは全体回復魔法の慈愛の風と…。

弱体化を無効化してくれる百合の祈りという。

典型的な回復型スキルを持っているらしい…。

何か天罰的なすごい攻撃スキルがあるかな?と思ったけれど。

何もないから、私は少しがっかりした…。

ガブリエルのステータスの下に…。

ガブリエルの召喚を取り消すボタンがあった…。

私は躊躇なくそのボタンを押した…。

もう一回そのボタンを押せば、また召喚できそうだし…。

このまま大天使を召喚していてもしょうがないと思ったのだ。


ボタンを押したら、ガブリエルは煙のように消えていった。

スマホのガブリエルの画像も消えていった…。

ふぅ、私はなんだかすごいホッとしてしまった。

はぁぁ、なんかガブリエルがいた時は緊張してしまった。

大天使を召喚できるのは、普通なら喜ぶところ?

でも、私は悪魔側の人間だからか…。

また大天使を召喚したいかというと…。

そうでもないというか、なんというか…。

すごい危機的状況の時だけ召喚しようと思った…。

できれば召喚に頼らないように生きていきたい。

できればガブリエルを召喚しなくていいような…。

平和に生きていきたい…。

藍さんと花子さんとで普通の女子高生として…。

平凡に生きて行きたい…。

なんて私はふと思った…。

東京に来る前は他の魔王に会いたいと思っていたけれど。

あと、いつか翼さんとも会いたい…。

私がそんな平凡な生活を願うなんて…。

らしくないと思うけれど、これが今の私の本心…。


「たっだいまー!カラオケ疲れたー!」

その時、玄関が勢いよく開いて藍さんが帰ってきた…。

私は立ち上がって、藍さんに抱きついていた…。

身体が勝手に動いていたのだ…。

今日はすれ違いばかりで、あまり藍さんと会話できなかった。

すごい寂しかった…。藍さんともっと一緒にいたかった…。

「どしたの?ノアっち…?」

藍さんが不思議そうに、私の顔を見てくる…。

藍さんの身体は、すごい温かった…。

ここまで走ってきたのかな…?

藍さんの身体の温もりを感じたら…。

寂しかった私の心も溶けて、温かくなってきた…。

ううん、なんでもない…。と答えたけれど…。

私の頬を一雫の涙が伝っていくのを感じる…。

それだけ、藍さんに会いたかったのであった…。

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