三百三十五話 熱いカップ麺

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


午後の授業も終わり…。

帰ろうと思った私…。

藍さんと帰ろうと思ったのだけれど…。

藍さんはもうクラスメイトと打ち解けてて…。

これからカラオケをしに行くという…。

私は陰キャなので…。

そんなパリピの集まりに行くわけにはいかなかった。

私が歌えるのはアニソンぐらいしかないし…。

今時のカラオケで歌う曲なんて知らないし…。

アニソンなんか歌ったら、ドン引きされてしまいそう。

知ってるのはちょっと昔のアニソンだしなぁ。

藍さんは今の流行の曲なんでも知ってそう…。

カラオケも盛り上がるんだろうなぁ…。

私が行ったら、逆に盛り下がりそう…。

私は指を咥えて、藍さん達がカラオケ行くの見てるだけだった。

せっかく藍さんと一緒に帰ろうと思ったのに…。


私は一人寂しく帰ることにした…。

教室から出ると、なんと宮園花子さんがいて…。

花子さんは道で倒れていたのを私が助けた子だ。

一緒に帰ろうと言う…。

一人寂しく帰るのもアレなので、いいよと答えた…。

花子さんは嬉しいのか、私に抱きついてきて…。

大きすぎる胸を押し当ててくるのだった…。

花子さん、まだ高校生なのに胸もお尻も大きすぎる…。

胸とか垂れてるぐらい大きいのだ…。

貧乳の私への当て付けかー!?

まぁ、花子さんも悪気があってやってるわけではないだろう。

私のことをお姉さまと呼んで慕ってくれる…。

なんでお姉さまなのか、すごい謎なのだけれど…。


通学路をほんの数分歩くともう、住んでる家に着いてしまう。

花子さんが住んでいる方角はこっちではないのだろうか?

このまま私が住んでいる家に着いてきていいのだろうか?

「花子さん、このまま私の家に着いてきていいの?」

私は花子さんに聞いてみた…。

本当は私の家ではないのだけれど…。

グレモリーという女悪魔の家にご厄介になっている…。

まぁ、今私が住んでいる家だから、私の家でいいか…。

「少しでもお姉さまとご一緒したいのです…。ダメですか?」

花子さんは瞳をキラキラさせて答えた…。

そんなに私と一緒にいたいのか…。

別にダメじゃないけれど…。と私は言う。

花子さんはやったー!と喜んでまた抱きついてきた…。

「花子さんの家ってどこらへんだっけ?」

私はやれやれと思いながら、聞く…。

「あ、私は学校の寮に住んでます。今度遊びに来てくださいね」

花子さんは甘く花みたいないい匂いの息をしつつ、答えてくれた。

花子さん、髪も全身も息まで、すっごいいい匂いなんですけれど。


花子さんの寮に遊びに行くか…。

私は別に構わないのだけれど…。

と思ったけれど花子さんはものすごい私に好意を持っている。

寮に私が行ったら、何かされるかもしれない…。

そんな思いが、ふと脳裏にちらついた…。

女の子同士だから、ハグとかそう言うのは構わないけれど…。

な、なんか襲われそうな気がする…。

か、考えておくね…。と無難な返答を返した…。

ダメです!絶対来てくださいね!お姉さま!

花子さんは、拒否権などないようなこと言ってくるのであった。

私はどうしよう?と思いつつ、グレモリーの家の玄関を開けた。

開けた瞬間、グレモリーが飛びついて抱きついてきた…。

「お帰りなさいませ!ご主人様!」

すごい嬉しそうなグレモリー…。

なんか私に抱きついてくる女性多くなってない?

グレモリーは、私の横にいる女の子に気づいて…。

「あら?こないだの…。なんて子でしたっけ?」

グレモリーはわからないようなので…。

宮園花子さんです…。と紹介してあげた…。


「まぁ、お寒いでしょうから中に入ってくださいな」

グレモリーは花子さんも中に招いてくれた…。

私たちはダイニングテーブルの椅子に座った…。

「今、夕飯の支度しますからね」

グレモリーがエプロンをして、キッチンに向かう…。

エプロンなんてしてるけど…。どうせインスタントでしょう?

待っていると、カップ麺とポットを持ってきた…。

「お待たせしました!3分でできる魔法のカップ麺です!」

三人前のカップ麺にお湯を注ぐグレモリー。

「花子さんごめんなさい。うちはいつもこんな食事なんだ」

私は申し訳なくて、花子さんに謝ってしまう…。


花子さんの方を見ると、すごい瞳をキラキラさせている…。

「私、こう言ったものをあまり食べたことがなくて…」

本当に3分でラーメンができますの?と聞いてきた…。

「できますとも!私もこの世界に来て1番吃驚したのですから!」

なぜか、グレモリーがすごい勢いで答えてくる…。

花子さんもなんてすごい技術なんでしょう!?と驚いている。

案外この2人は意気投合できそうである…。

「ところで今日は鈴木藍さんはご一緒じゃないですか?」

グレモリーが不思議そうな顔をしている…。

私は藍さんはカラオケ行ったよと答えた。

多分もうちょっとしたら、帰ってくるのではないか?

3分経ったので、いただきますとカップ麺を食べることにした。

花子さんがいなかったら、今はグレモリーと2人きりだった。

ここに花子さんがいて、一緒にカップ麺を食べているのが不思議だ。

熱くて辛いカップ麺を食べながら、私はそう思うのであった…。

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