煮てさ、焼いてさ、食ってさ?
「あんたがたどこさ」という熊本が舞台の童歌に「船場山には狸がおってさ、それを猟師が鉄砲で撃ってさ、煮てさ、焼いてさ、食ってさ」という歌詞がある。私には煮てから焼くという調理の工程に馴染みがない。
私はまず、煮てから焼く肉料理にどんなものがあるのか調べてみた。すると、検索結果のほぼ全てが「スペアリブ」だったのだ。スペアリブ?いや、スペアリブ?狸を猟師が鉄砲で撃ってスペアリブ?大きな違和感を抱いたものの、煮てから焼く肉料理の代表がスペアリブである以上、スペアリブで話を進めるしかない。
「あんたがたどこさ」は幕末から明治時代の初期に生まれた童歌とされている。明治元年が1868年、日本のスペアリブ発祥の店「アメリカンクラブハウス」の創業が1979年。「あんたがどこさ」に出てくる、狸を煮てから焼いたものがスペアリブだとすると、日本の元祖スペアリブは熊本の猟師が食べた狸のスペアリブということになる。
そもそも、狸を食べることに馴染みが無い。私は「狸 調理方法」で検索した。検索結果の一番上には「たぬき汁」という料理が出てきた。これは、狸の肉を入れた味噌汁らしい。その他にメジャーな調理方法は検索しても出てこず、狸を煮てから焼いた料理など見つからなかった。また、狸の肉は臭いが強く一般的には食用に向いていないらしい。
このことから、「あんたがたどこさ」に登場する狸のスペアリブは、猟師の創作料理ということになる。よって、この猟師のことは猟師兼調理師と考えた方が無難だろう。つまり、この人物は正真正銘の「グルメハンター」なのだ。
「あんたがたどこさ」とは、熊本のグルメハンターが狸のスペアリブを作って食べるという歌だったのだ。「あんたがたどこさ」の歌詞を要約すると次の様になる。
A:あなたの出身はどこですか?
B:熊本の船場です。
船場山には狸を鉄砲で狩り、スペアリブにするグルメハンターがいるんですよ。
そのグルメハンターは最後、食べ終わった狸の上に木の葉を被せるんです。
イカれている。出身を聞かれて、地元のイカれエピソードを話し始めるコイツが一番イカれている。こんなイカれた内容の歌を、子供たちは毬をつきながら無邪気に唄っていたのだ。世界と真剣に向き合えば向き合うほど、秘められた狂気が見えてくる。
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