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ありきたりなベッド購入録



およそ2カ月前、年末ということもあって軽く大掃除を行っていた。「軽い大掃除はただの掃除か」とも思いながら、フローリングに敷いてある敷布団を洗おうと持ち上げたところ、布団の敷いてあった床が、湿気で濡れていたのであった。恐るおそる敷布団を確認すると、裏面は湿っており、黒い小さな斑点がいくつもあった。数日前までは無かったはずのカビが生えていたのだ。急激なカビの進行。それは、布団を毎日畳んだり、定期的に布団乾燥機をかけたりするぐらいでは防ぐことが出来なかったのだ。それは、同じ家に住む彼女の布団も同様だった。私たちはすぐにベッドの購入を決めた。



まずはベッドフレームだ。ベッドフレームに求める最優先事項は、カビにくさである。カビないという点だけ考えれば、鉄や樹脂のフレームは優秀だが、長年使うという点を考えると耐久性がやや心配ではある。鉄に関しては錆びる危険性もよく考えないといけない。次に木製のフレームだが、安価な木製のフレームではカビが生えてしまうだろう。ならばどうするか。私たちは様々な可能性を考え、対策を調べ、時には店舗に足を運び考え調べ、調べ考え考え調べ、一つの答えに辿り着いた。それは、「ヒノキ製 すのこベッドフレーム」である。



ヒノキは通常の木材よりもカビが生えにくく(生えるときは生える)、尚且つベッドフレームがすのこ状になっているため、通気性が良いのが特徴。さらに、私たちが選んだ物は床面からの高さが少し高いため、通常のベッドフレームよりも通気性がさらに良くなっている。



私は今までベッドを買ったことが無く、ベッドに求めるものなどわかっていなかったのだが、こんなにも通気性を求めるものだとは思っていなかった。ベッドフレーム以外でも、マットレスを選ぶときは干したり移動しやすいように厚すぎない物を選んだり、ベッドパットやシーツを選ぶときは洗いやすいものを選んだり、マットレスの下に敷く除湿シートを購入したりと、我が家のベッドは湿気対策を中心に作られていった。



現在、私の中でベッドフレームは寝具をカビから守るための道具という認識になった。また、マットレスやシーツ等も、ただ寝心地が良ければ良いというものではない。寝具を清潔に使い続けられるように手入れのしやすさもまた、重要なのだ。



そんなこんなで、ベッドフレームが家に届いた。組み立ては思っていたよりも簡単で、シングルのベッド2つを組み立てるのに1時間もかからずにで終わった。組み立てたベッドフレームに除湿シート、マットレス、ベッドパット、シーツ、毛布、掛布団、毛布の順でセットし、私のベッドが完成した。



いざ、完成したベッドに入り寝てみると。床に布団を直置きしている時よりも暖かかった。床冷えからくる寒さが解消されていたのだ。ベッドとはなんと素晴らしい物なのだ。今までベッドについて深く考えたことは無かったが、湿気対策、床冷え対策、寝心地向上、ヒノキの香り、コンセントへのアクセスと様々な効果が得られることを知り、ベッドへの印象が大きく変わった。今回購入したベッドを大事に使って、趣きが出てくるのを楽しんでいきたい。



...とまぁ、私が新たにベッドを購入するまでの記録を綴ってみたわけだが、特に大きな事件は何も発生しなかった。事件があったとすれば、ベッド購入のきっかけとなった敷布団のカビぐらいだ。ベッドの購入なんて人生の中でもまあまあ大き目のイベントだと思うのだが、特にこれと言って話の種になるような出来事は無かった。ベッドが部屋に入らないとか、パーツが足りないとか、組み立てに手こずるだとか、そういった類いの事件は何もなかった。ベッド購入までに事前にいろいろ調べていた結果、購入後の流れは実にスムーズだったのだ。



ベッド購入後の流れがスムーズだったこと自体はとても良いことなのだが、いざベッドが完成して暫く経つと、ベッドを購入したことを誰かに話すきっかけが無いのだ。「この前ベッド買ったんだけど、こんなことがあってさ…」みたいな話が出来ない。だって、何も無かったんだから。話せるとするならば、「この前ベッド買ったんですよ」という事実のみ。買ったベッドの良さを語っても良いのだが、ベッドなんて誰かに勧められて買う様なものじゃない。ほとんどの人は既に持っているだろうし、今回私が初めて知ったことなどベッドを持っている人ならみんな知っている。布団のカビを発見したとこからであれば話せるのではないかとも思ったが、今回の一連の流れは布団のカビを発見したところから始まる。つまりは、布団のカビが話のピークでその後はありきたりなベッド購入録だ、わざわざ自分から話す様なことじゃない。



要するに、私がベッドの話をするためには誰かにベッドのことについて聞いてもらわなければいけないのだ。「最近ベッド買ったんですよね」、「ベッドの使い心地どうですか」、「ベッド買おうと思ってるんですけど」といった質問を受けることが無ければ、私がベッドの話をすることは出来ない。



だから、少しでも私がベッドを買ったということをみんなに知ってもらうために、noteにベッド購入録を書いたのだ。だって、ベッドだぞ、そこそこ大きい買い物だぞ、それについて話せないなんてあんまりじゃないか。私は新しいベッドを褒めてもらいたいのだ。しかし、多くの人に褒められるためには事前に失敗が必要だったというわけだ。きっかけとなる失敗が。なんと皮肉なものだ。これは無事に完成したから言えることなのだが、どうせ完成するならば、途中で失敗しといた方が良かったのかもしれない。

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