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写真小説『一日一本のバス停』

写真小説とは
一枚の写真から連想して、綴られた小説です。

山の中に一軒だけ民家があった。
そこにはお婆さんが一人で住んでおり、毎週木曜日に街の病院に通院していた。

いつもタクシーを呼んで、病院に行っていたが、料金が馬鹿にならず、年金暮らしでは通院するのが難しかった。

そこでお婆さんはバス会社に家の近くにバス停を設置してほしいと嘆願書を出した。

バス会社は熟考の末、バス停を設置することにした。
お婆さんは大変喜び、毎週木曜日はバス停の前でバスを待った。

一年が経った木曜日、バス停にバスが着いたが、お婆さんの姿が見えなかった。心配に思った運転手がお婆さんの家を訪ねた。

すると、こたつの中で眠ったように息を引き取っていた、お婆さんの姿があった。

独り身のお婆さんを気の毒に思い、バス会社がお婆さんを弔った。

数週間後、バス停にバスが近づくとお婆さんの姿が見えた。
運転手は驚いたが、懐かしさと会えた嬉しさでバス停の前に停まった。

ドアを開けると、お婆さんはんニッコリと微笑んで、スッと消えた。
その日はちょうどお婆さんの49日だった。

いつお婆さんが戻ってもいいように、そのバス停は今でもそこに立っている。


園ひさや

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