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オススメ映画を紹介するよ! 病と闘うラブストーリー編

登場人物に難病の人が出てくる映画はたくさんありますよね。命の大切さ、生きる意味を考えることがテーマになったり、恋愛の上でのひとつの障害になったりと、物語を引っ張る大きな要素となるものです。今回は最近見た難病を扱った映画をいくつか紹介します。当然病気で苦しんでいる人は実在するわけで、そこを深追いすると難しい問題にもなると思うので、今回は単純に映画としての仕掛け、工夫をメインに考えてみたいと思います。【ネタバレ】全開になります。登場人物の生死について言及することもあるので、ご留意ください。

余命10年

数万人に1人という不治の病に冒され余命10年を宣告された20歳の茉莉は、生きることに執着しないよう、恋だけはしないことを心に決めていた。ところがある日、地元の同窓会で和人と出会い恋に落ちたことで、彼女の最後の10年は大きく変わっていく。

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小松菜奈演じる茉莉は肺動脈性肺高血圧症。日常生活は普通にできるけど、余命が10年という短くはないけど有限であるというのがポイントになってきます。恋をすることはできるけど、結婚や将来のことは約束できない。茉莉も大切な人ができますが、最終的には自分から別れを告げます。

とにかく小松菜奈が可愛いからなあ。彼氏は茉莉が病弱であることは知っているのに、海に行ったりスノボ旅行に誘ったり気が利かないなあとか、突っ込みたいところはいろいろあるのですが、小松菜奈の魅力に粉砕されてしまうのです。

先ほど「短くはないけど有限である」と余命について書きましたが、考えてみればそれは病気の人だけでなく、全ての人に共通すること。それを考えさせてくれる作品でした。

マイ・ダディ

小さな教会で牧師を務める御堂一男は、8年前に妻に先立たれ、中学生になる一人娘のひかりを男手ひとつで育ててきた。優しく、面白く、お人よしで誠実な一男は、牧師として皆から慕われ、掛け持ちのアルバイトでも頼りにされ、ひかりも素直で良い子に育ち、決して裕福ではないが幸せな日々を送っていた。そんなある日、最愛の娘が病に侵されていることが判明する。

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主人公の一人娘ひかりが白血病に侵されます。骨髄移植が必要になり、血液検査をしたところ、ひかりと父親の一男(ムロツヨシ)に親子関係がないことが判明します。

骨髄移植のための血液の型(ここでは白血球の型)が家族では一致せず、骨髄バンクにも適合者がいない。先行きの見えない将来を悲観したひかりの葛藤がテーマのひとつになります。しかし主人公の一男の視点としては、「娘と親子関係がない」=「亡き妻への不信」につながるのです。牧師として神への信頼の揺らぎ、妻の愛への揺らぎ、そして娘への愛情。これらを抱えたままドナーを探す一男の姿が印象的です。

個人的にかつて骨髄バンクに登録をしていたので、白血病や骨髄移植については割と知っているのですが、移植前後はもっと辛いはずだよなあ、と思いました。この映画はそこが主題ではないので許容範囲内かな。

ムロツヨシは存在感がありすぎて、どこを切り取ってもムロツヨシなので、コントの匂いを感じてしまいます。また亡き妻として、奈緒がキャスティングされています。亡くなっているので浮気の疑いをかけられても(実際には不貞ではありません)反論できないのが映画ながら可哀想でした。因みに奈緒は「余命10年」でも主人公の親友役を演じていました。エキセントリックな役をすることも多い奈緒ですが、がっつり主演も見てみたいです。

君の膵臓をたべたい

高校時代のクラスメイト・山内桜良の言葉をきっかけに教師となった“僕”は、教え子の栗山と話すうちに、桜良と過ごした数カ月間の思い出をよみがえらせていく。高校時代の“僕”は、膵臓の病を抱える桜良の秘密の闘病日記を見つけたことをきっかけに、桜良と一緒に過ごすようになる。そして桜良の死から12年後、彼女の親友だった恭子もまた、結婚を目前に控え、桜良と過ごした日々を思い出していた。

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桜良は膵臓癌(?)と思われる病。それも先は長くなく、本人も「死ぬよ」と常々言っています。この頃の浜辺美波は清潔感がありすぎて、優等生感が半端ないです。それでいて「僕」と泊まりがけで旅行行ったりしちゃいます。死ぬまでにやりたいことをひとつひとつ実現していくというのは、こういった映画ではよくあるパターンです。

【以下核心ネタバレです】
しかし、咲良は病が進行する前に、通り魔に殺され、突然命を絶たれます。難病の人が主人公の映画のセオリーとしては、命に限りがあるとしても、日々を精一杯生きる姿が感動を呼ぶものです。しかしこの作品では、そうやって生きていた咲良でさえも、予期せぬ瞬間に命を絶たれてしまうのです。あまりに残酷ですが、ここで浮かび上がってくるのは、この映画を見ている私たちへの「油断していませんか?」という問いなのです。「命を大切にする」「日々を大切に生きる」というのは今更言われなくてもわかりきった命題です。でも、それが明日も明後日も続いていくもの(余命を宣告されても、その期限までは確実に)と、私たちは油断している。本当に毎日をこの日限りのものとして大切に生きているとは言えない、ということをガツンと思い出させてくれるのです。そう言った意味で、この映画の物語は確かな効果をもたらしていると言えます。

「僕」を演じた北村匠海は相変わらず良いです。というか若い頃から良かったです。登場人物が大人になったパートは必要だったでしょうか? 小栗旬と北川景子を出したかったのかなあ。若い人たちに任せても良かった気がします。

桜のような僕の恋人

美容師の美咲に恋心を抱いた晴人は、勇気を出して彼女をデートに誘う。目標に向かって頑張る彼女にふさわしい人間になるべく、諦めかけていたカメラマンの夢をかなえることを決意する晴人。そんな晴人に美咲も惹かれ、2人は恋人同士になる。しかし美咲は、人の何十倍も早く老いていくという難病を発症してしまう。

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この作品も変化球ですね。美咲に襲いかかるのは早老症という難敵。進行も早く、姿が老人のようになってしまうという病気です。美咲と晴人は恋人同士になりますが、変わっていく自分の姿を見せたくない美咲は晴人の前から姿を消します。

【以下核心ネタバレします】
姿を消す時、担当医に電話をさせて、新しい彼氏ができたみたいなことを伝えるのですが、それは流石にやりすぎかな、と。お医者様もそこまではやってくれないでしょう。そしてラスト近く、美咲は晴人と一瞬の邂逅を得ます。しかし晴人は、老婆のようになった美咲に気がつくことはありませんでした。この場面、残酷で、非情です。映画的には見た目が違っても気がつくことができたほうが感動に繋げられるかもしれません。ただ、安易な方に逃げなかったストーリーは素晴らしいと思いました。晴人のその後や美咲の想いは是非映画でご覧ください。

実はこの映画で泣いたのは、美咲の兄の恋人と、美咲の別れのシーンです。本当の姉のように美咲を気にかけていた姉の恋人(桜井ユキ)ですが、美咲からすると彼女の若さや美しさを見るだけで嫉妬してしまう。嫌いになりたくないから姿を現さないで、と懇願する美咲。早老症という病気を取り上げだからこそ起こる名場面でした。

今夜、世界からこの恋が消えても

高校生の神谷透はクラスメイトに流されるまま、同級生の日野真織に嘘の告白をする。しかし彼女は「お互い本気で好きにならないこと」を条件にその告白を受け入れ、2人は付き合うことに。やがて真織は、自分が前向性健忘症で、夜に眠るとその日の出来事をすべて忘れてしまうことを透に打ち明ける。彼女は毎朝、前日の日記を読み返すことでどうにか記憶をつなぎ止めていた。透はそんな真織と1日限りの恋を積み重ねていくが……。

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真織の病は前向性健忘症。古くは「メメント」が有名ですね。あれは10分程度の記憶しかなかったのでは。一番近いのは「掟上今日子の備忘録」。眠ってしまうと記憶がなくなってしまうしまうパターンです。毎日ゼロからの恋愛ですが、2人の間には確かに絆が生まれてくるのですが。

【以下核心を微妙に隠しつつネタバレします】
前向性健忘症は難病ですが直接命に関わる問題ではない。だからこの映画は毎日リセットされる恋愛は果たして成就するのかがテーマなんだろうなと思って見ていると。突如、透が物語から退場してしまうのです。これがね、確かに伏線はあったし、そもそも冒頭部分に透の存在が消えていたんだけど、見ている側としては割と透に感情移入する語り口だったから、正直「何で!」って思いました。ちょっとズルい気もします。こうなると、真織の前向性健忘症が、過去を忘れるためのひとつのギミックとして作用してきます。果たして真織は本当に透のことを忘れられるのか、と。でもね、何か病気をその仕掛けのために使っているような作為的な思惑が感じられて、それもまた映画としてズルいなあと感じてしまいました。

多くは省略しますが、真織も悩みます。(記憶を忘れるはずなのに何故?と思うかもしれませんが、そのあたりは本編をご覧ください) それからの後半部分のキーマンは、真織の親友で、唯一病気のことを知っている泉(古川琴音)です。映画的わざとらしさを感じてしまったこの作品を救うのは、親友の泉、いや、古川琴音の名演に他なりません。真織のために苦悩し、奔走し、ある決断を下す泉を、古川琴音が見事に表現しています。影の主役と言ってもいいですし、多分この映画を見た人は古川琴音を好きになります。

うわ、だいぶ長く書いてしまいました。どの作品も若者向けで甘いと言えば甘いです。でもあまり穿った見方をせず、ピュアな気持ちで鑑賞すれば、どの作品も泣ける映画であることは間違いありません。

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