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春ですね

出会いの春、旅立ちの春、変化の春、花粉の春、いつも通りの春。
どのような春をお過ごしですか。

ちょうど1年前の3月、初めて曽爾村を訪れました。
地域おこし協力隊の説明会です。

静岡発の始発電車に乗って名張まで。名張駅から1日5本しかないバスは貸切で、陽気な運転手のおっちゃんは、遠くからようこんなとこまで来てくれたなあ!と道々ガイドをしながら曽爾村まで連れて行ってくれました。

初めての景色、初めての空気。知っている人は誰もいない。というかそもそも(道を歩いている)人がいない。ああ、知らない場所に来たんだなあ、という感覚は、学生時代の入学式のそれとよく似ていました。

不安と緊張と少しの期待。それでも一歩踏み出してみると、物事は一気に動きだすもので。説明会の日から、選考を経て、曽爾村に行くことを決めるまで、1ヶ月もかかりませんでした。そんなこんなで慌ただしく過ぎ去った去年の3月。

それからどんなことがあったっけ。

退職して、空き家を探して、引っ越して。誰も知らない田舎にひとり。それでも少しずつ、知ってる顔が増えていって。地域の行事に参加したり、パンフレットを作ってみたり、慣れない草刈り機を振り回したり、友達をよんでBBQしたり。夏の涼しさに喜んで、冬の寒さに戸惑って。なにかをひとつ知るたびに、誰かをひとり知るたびに、この村の輪郭がほんの少しずつはっきりしていくような、そんな感じが面白い。

曽爾村に行こう、と決めた明確な理由はありませんでした。田舎でも都会でも、会社員でも協力隊員でも、今より少しだけ、わくわくする方に行きたかった。そんな自分が今ここにいるのは、本当に人生のご縁と運とタイミング。始まりの季節、あの日と同じ空気の中で、そんな初心を思い出します。

年度末のひと段落で、久しぶりに静岡に帰りました。しばしの休暇を終えて、あの日と同じ電車に乗って名張まで。名張駅からはバスではなく、自分の車で曽爾村に。思い切って一歩を踏み出した日から1年。あの日の見知らぬ風景は、いつのまにか、ただいまと帰る場所になりました。

今年はどんな春になるのかな。

~おまけ~

車とともに曽爾村に引っ越してきてからは、バスに乗る機会もすっかりなくなってしまいましたが、あの日の運転手さんとつい先日再会しました。バス停でもないところにバスを停めて(後のバス停で待っていた方がいたらすいません)、元気にしとったか、と声をかけてくれるあなたのその温かさに惹かれて私はここに来たと言っても過言ではないんです。再び出会うこのタイミング。季節はやっぱり春ですね。

inoko

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