GAZETTE4「ひとり―ALTOGETHER ALONE」
音楽を聴く。恋人と音楽を聴く。ライブで観衆の声に包まれながら音楽を聴く。
でも一番身近なのはひとりで音楽を聴くこと。通勤電車に揺られながら、車を運転しながら、家族が寝静まった深夜に、ヴォリュームを絞りながら・・・。
それは孤独でありながらも充足した時間。自分が自分に立ち戻るための音楽。この本にはそんな「ひとり」を感じさせる音楽が「SWEET」「MILD」「BITTER」に分けられて紹介されています。
取り上げられているジャンルは現代音楽からロック、ジャズ、歌謡曲まで幅広く、ミュージシャンもビートルズや細野晴臣、エリック・クラプトンといったビッグ・ネームから知る人ぞ知る存在に至るまで多種多様。たとえば、この文章を書くために適当に開いた「SWEET」のページに掲載されているのは、ビーチボーイズの静謐な佳品「フレンズ」、プリファブ・スプラウトのロマンティックな「アンドロメダ・ハイツ」といったロック・ミュージックやリッキー・リー・ジョーンズのカヴァー・アルバム、元ジェネシスのメンバー、アンソニー・フィリップスの牧歌的アルバムなどの他に、宇野誠一郎が音楽をてがけたTVアニメ「ムーミン」のサントラといった具合です。
これらの作品がもつ、静謐さ、寂しさ、甘さと、微かなほろ苦さによる味わい深さが、実際の音に接したことのない方にどれほど伝わるのか、心許ないものがありますが、それぞれのアルバムに添えられた、エッセイや詩に近い感覚で読める文章とあいまって、音楽好きにとっては「大人の絵本」的な感覚で楽しめます。
音楽を心の深いところで受け止めたいと思う全ての人に手に取ってもらいたいですね。
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