【コラム】南チロルの風:13

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ミラノの日常は・・・

朝10時に起きて11時から語学学校。昼過ぎに帰ってきて、切売ピザなので昼食を済ませて15時に出勤。20時の営業時間を迎えるまで準備を行い、ゲストがお帰りになり、すべての業務が終わるのが24時過ぎ。夜中の1時前に帰宅したら、シャワーを浴びてルームメイトの福本伸也から夜食を作ってもらう。そこから明け方まで学校の宿題とワインの勉強。これが21歳の山下少年の1日のサイクル。


そんな中でもゆっくり寝ることもできる唯一の日曜日。しかしそんな日曜日はほぼ部屋の掃除から始まります。

「よし!マサ!掃除するぞ!」

相部屋の福本はとってもキレイ好きなので、何の前触れもなく突然掃除が始まります。彼がキッチン・リビングを担当し、僕はトイレとお風呂場。通常レストラン業務でもトイレ掃除を担当しているので苦ではありません。

寝ているところを突然起こされて始まるこの部屋掃除ですが、休みの1日を清々しくさせるものでした。

当時福本はよく

「こまめな掃除をしていれば、大掃除がいらなくなる」

本当にそうだと実感します。自分が心がけていれば、お客様を迎え入れる空間や仲間と共に働く空間を常に奇麗に保つことができますし、常に清々しい気持ちで仕事に臨めますよね。

休みの楽しみは・・・

そして、そんな清々しい休みの楽しみはやはり「食事」です。早起きもしたし、家も掃除したし、気分のいいので、この際「外食をしたい」とほぼ毎週のように思っていました。

しかし、当時の僕たちは本当にカツカツな生活をしていました。スーパーの食材を調理して食べるのはもちろんですが、月末にもなりお給料が減ってくると安価な中華料理やパニーノで過ごす日もありました。そこで結局2人で買い物して、料理をして食べるというふうになるのです。

お給料日前で本当に2人ともお財布から砂も出て来ないようなある日、

「ニョッキ作ろうか!」

とまた突然福本が言うのです。ジャガイモと小麦粉、そしてバターが冷蔵庫に残っていたので、昼過ぎからニョッキのバターソース作りをし始めます。

蒸したじゃがいもの皮を剥き、マッシュポテトにした後に小麦粉と混ぜる。程よく生地を分けて包丁で切り分ける。それを一つ一つフォークで型をつけていく。お湯にパスタ生地を入れて、茹で上がったらバターソースと絡め、パルメザンチーズとオリーブオイルをかけていただきます。

時間にして1時間ほどかけて作りあげました気がしますが、そんな貴重なお昼ご飯を、5分もせずに食べ終えて、小麦粉で汚れた床をまた掃除します。そうしているうちにまたお腹が空いてきて、「晩ご飯は何を食べようか?」という休日。

若い頃のお金がない時期は、皆さんもそれぞれ貴重な思い出があると思います。友達と試行錯誤してお腹を満たす。この目的のために一生懸命かけた時間、作った料理は忘れがたいものです。どこの有名なレストランにも置いていない、あの時のジャガイモのニョッキ。外食では味わえない楽しみですね。

そしてここでもまた福本から名言が。

「俺たちの財布は貧しくても、心は豊かだよ」
思えばイタリア料理の原点はこういうところから生まれてきたのでしょうね。今あるもので美味しいものを作る。それが伝統の料理に繋がってゆく。肌で実感した出来事でした。

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