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【オープン社内報#29】文化的健康とはなにか

 株式会社ひらくの染谷拓郎です。

 気づけば6月も終わり、FY23も1/4が過ぎようとしています。「予定していたこと/していなかったこと」が縦軸で「できたこと/できなかったこと」が横軸としたとき、「予定していて・できた」はどれくらいできたでしょうか。僕は突発的に舞い降りた「予定していなかった・できた」がいくつかあり、「予定していて・できなかった」が大きく一つあります。なんとかせねば。

 さて今回は「文化的健康とはなにか」をテーマに書いてみます。これは昨日、文喫を舞台にある企業とディスカッションをしているなかでヒントを得たもの。この考え方を整理していくと結構大きな器になる気がしていて、まだ生煮ですが、ここに残してみます。

 まず前提として、健康とはなんでしょうか。健康診断で身体の数値に異常がないことや、痩せすぎ/太りすぎなど疾患につながるような状況にないことなどが、ひとまず「健康」とスタンプを押されるようです。とはいえ、これは肉体的な健康だけの指標となり、精神的な健康にも心を配らなくてはいけません。夜も眠れなくなるような悩み事がある。誰とも口を聞かないで毎日が過ぎ去っていく。いくら身体の数値が良くても、このような状況が続くのは”健康的”ではありません。

 ことさらに言うまでもないですが、健康とは「肉体的健康」「精神的健康」「文化的健康など、さまざまな要素が絡み合って初めて成り立つものと言えそうです。WHOの定義では「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱 の存在しないことではない。」とされており、やはり健康は分解して考えるのがよさそうです。

 僕たちがつくる場や機会は明らかに文化的健康に寄与するフィールド。次は「文化的健康」にフォーカスして、肉体的健康と比較しながら考えてみます。

 例えば標準体重をオーバーしていて数値が悪い場合、お医者さんからは「食事と運動の改善」が言い渡されるはず。では、食事の改善を「文化的健康」に置き換えてみます。肉体的健康では「口に入れるもの=食事」ですが、文化的健康では「口に入れるもの=体験・経験」になるでしょうか。それを本に限って変換するとこんな感じかなぁ(すいません、これはあくまで感覚です)。

ジャンクフード=SNSで流れてきて惰性で見てしまう1ページ漫画
オーガニック野菜=きちんと編集された人文書
フルコース料理=文学全集的なものや高額の専門書籍
精進料理=古典と呼ばれるもの

*これ、映画のジャンクフードは?とか音楽のフルコースは?とか考えるのも楽しいです。

  ここで重要なのは、ジャンクフード=悪なのではなく、慢性的に摂取するのがよくないと意識することが大切です。僕はストレスが溜まると「深夜ポテチ」してしまうのですが、毎日にならないように気をつけてます。同じように、仕事終わりの電車など本当に疲れている時は軽い漫画を読むこともありますが、それ以外の読書時間はいま勉強したいテーマの本を読むようにしています。(寝る前に読む好きな作家のエッセイなどはデザートのようです。)

 食材や料理そのものにこだわるのではなく、食べ合わせや献立として考えるとこのメタファーが面白くなってきます。1週間、1ヶ月の献立を意識してみると、身体が変わってくる。何を中心に食べ合わせを考えることで体質改善につながる。三食コンビニご飯を、一食は自炊に変えてみるように、SNSしか見なかったのを薄い短編集からチャレンジしてみる。それが習慣化するともっと本が”おいしく”なってくる。

 次に運動はどうでしょうか?これもインプットとアウトプットのバランスです。食べるばかりでまったく運動しなければ、いくらオーガニックフードだとしても太ってしまうでしょう。逆に、全然食事をせずに走り込みばかりしたら倒れてしまいます。食べ盛りの時期はどれだけ何を食べても太りませんが、逆に歳を重ねると、良いものを少しだけ食べたくなります。

 10代のころを思い返すと実感します。家の近くに図書館があったので、内容がバラバラにひたすら本を読みまくり音楽を聴きまくってきました。(その結果、コーネリアスとベックとウィントン・マルサリスとエレファント・カシマシを同時に借りたりできた)そうして仕入れた知識を友人たちにシェアしたり、バンドを組んで薄汚いスタジオでがちゃがちゃと演奏していました。思い返すと、猛烈なインプットとアウトプットだったようです。いまは本も音楽も映画も展覧会も、それぞれ2~3つほどが毎月の限界で、それを「よんだみたきいた」と名付けた軽いログに残すのが精一杯です。年齢や時期、その時の事情によって、「文化的運動」にも適切な質と量があるようです。

 このように「文化的健康」とはなにかを考えていくと、いろんなことを企画に転用しやすくなりそうです。文化的健康診断や定期検診、文化的パーソナルトレーニングや筋トレ。本で、映画で、音楽で。アートで、デザインで、建築で。うーん、めちゃくちゃ面白くないですかこれ。

 ここで立ちはだかる、というか、もう一歩踏み込んで考えるためには、社会学や文化人類学を下敷きにしてみたいところです。ピエール・ブルデューの「文化資本」や「ハビトゥス」についての本がずっと積読だったのですが、今こそ読む時が来たようです。(社会学部や文化人類学卒の人、助けて!)

 最初に書いた通りこの考え方は大きな器になりそうです。「人と文化をつなぐ」という日販グループのパーパスも「その人らしい文化的健康を実現する」に翻案できそうですね。この「文化的健康」もう少し考えてみます。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。今日もがんばりましょう。

染谷


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今週の「うれしい」
TOTOギャラリー・間で開催中の「ドットアーキテクツ展 POLITICS OF LIVING 生きるための力学」を見てきました。大真面目にふざけまくってて最高でした。

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