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【オープン社内報#33】箱根本箱と返報性

 こんにちは。株式会社ひらくの染谷拓郎です。 

 8月ももう終わりです。2023年8月をもって、箱根本箱は開業から5周年を迎えることができました。5年間、ずっと関わることができてうれしく思います。開業5周年おめでとう。ありがとう。おめでとう。

 2015年の秋ごろから始まったこのプロジェクトですが、いまも一緒に仕事ができている人は数人です。みんなそれぞれの道に進んでいきましたが、僕はしぶとくというか、ズルズルとこの仕事を続けています。当時のことで忘れていることもたくさんあるのですが、立ち上げをまとめた連載を読み返したら少し気持ちがキュンとしました。ああそうか、こんなこと感じてたっけなあ。気持ちも文体もずいぶん若い(写真も)。

僕らがブックホテルをつくる理由はどこにある?箱根本箱開業奔走記

 8月上旬、開業を記念したイベントウィークがありました。その最終日、お客さまに館内を案内するブックツアーと直接会話して翌朝までに選書を行うブックバーのふたつを行ってきました。最近の僕は全体的なプロデュースやマネジメントばかりだったので、直接お客様と会話をして本を選ぶということはとても久しぶり。リクエストに対してどこまで正直に返すのか、少しずらしたり転用したり。これは差し出し方が色々あるぞと脂汗をかきながらなんとか完了し、翌朝にはとても喜んでいただきました。(そういえば幅允孝さんの「差し出し方の教室」はとても面白い本でしたね)

 箱根本箱には独特の空気が流れていて、スタッフとお客様の距離感が親密です。その秘密はどこにあるんだろうと、今回考えていたのですが、そこには「いる」がキーワードになりそうです。例えばコンビニやスーパーで、提供者と消費者が関係を結ぶことはありません。セルフレジであろうが有人レジであろうが、そこで求められるのはミスなく適切に処理がなされること。そこにコミニュケーションが生まれることはほぼないはず。

 ですが、箱根本箱では、スタッフの皆さんの距離感が絶妙で、お客様とのやりとりがとても自然。「従業員感が薄く、本人感が強い」と言えばいいのかな。その結果、居心地良く過ごせていただけているようです。もちろんスタッフだけでなく、空間・本・料理・温泉、すべてがプレゼンテーションになっていて、「ただなんとなく」置かれたものはありません。そういった一つ一つも「いる」ことを感じさせてくれるようです。

 「返報性の原理」という心理作用があります。簡単に言えば、人から何かをしてもらうとお返ししたくなるのが心情だ、というもの。親切にしてもらったから、親切を返したくなる。いじわるをされたから、いじわるをし返す。僕たちは常に人や空間や環境に対してのリアクションで生きています。

 なにか暗いニュースがあったときにSNSのネガティブな意見を見続けていると、胃の奥が黒々としたもので満たされるような気持ちがします。逆に、自分自身を肯定してもらえるような場にいると、場の空気をもっと良くしていきたい、と腕まくりをしたくなることもあるでしょう。

 箱根本箱の「いる」感を受けとると、何をリアクションしたくなるのか。本来は滞在の対価として料金をいただいてその”関係”は終わるはずですが、たくさんのお客様がわざわざメッセージを残してくれたり、SNSにポジティブなレビューを書いてくれます。こうした箱根本箱のポジティブな返報性が僕は大好きです。そして、ひらくがつくっていく場と機会でも、朗らかに応答してもらえるようなボールを最初に投げていきたい。「場と機会をつくり、うれしい時間を提供する」というのは、ポジティブな返報性を引き起こせる可能性を高められるか、ということかもしれません。

 そんなことをなんとなく考えながら朝の大浴場に浸かっていると、頭のなかがさっぱりしました。箱根本箱は、開業から5年経っても魅力的な場であり続けています。僕もそうありたい。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。今日もがんばりましょう。

染谷

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今週の「うれしい」
週末はいろんなところで花火大会や夏祭りが開催されていて、今日もどこかで「真夏のピークが去った~」と口ずさむ人がいるんだろうなと想像しています。何十年経っても歌い継がれるというのは凄いことですね。

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