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幼馴染との恋模様『はつ恋』by村山由佳

新年あけましておめでとうございます。今年もほそぼそと読んだ本の書評のみをずっと更新し続けていこうと思います(主に自分の記録用と文章の練習ですね)。

さて、これは実は去年には読了していたのですが書けなかったというかさぼってましたw
大好きな村山由佳先生の、はつ恋。
どうしても好きな作家に偏りがちなんですよね…まぁ仕方ない。新しい作家さんも開拓していかなければ、と思うのですが文章って好き嫌いあるから難しい。

1.幼馴染との恋

主人公のハナは離婚を2回を経験したいわゆる中年の物書きの女性。そしてその恋人のトキヲは離婚してもう大人の子持ちの中年男性だ。
二人は幼馴染、そしてハナはトキヲよりも年上で、トキヲにとってハナは初恋のお姉さんという設定。
二人は遠距離に住んでいる。そして結婚はしていない。主にトキヲがハナのもとへ遊びにくるという日常を描いた作品。
これを読んだ時に、ああ作者の自叙伝みたいな感じなのかな?と思った。
私は村山先生が好きなのでTwitterもフォローしてるし、インタビューを読んだりして知ってはいるんだけど、このハナの状況はほぼ村山先生自身だ。
彼女は離婚を経験し、今はパートナーとして彼女の従兄弟の年下の男性がいる。
ハナが家で猫を飼っているのだけれど、村山先生も猫を飼っている。
そういう情報を知っていると、ちょっとなんかノロケを読んでる気分になるそんな作品でした。
でも幼馴染っていいね、なんでも解ってるし若干姉弟みたいな関係になるけど、でも男と女という不思議な関係。
ちょっと憧れちゃうな、って思いながら読んでました。

2.情景描写が綺麗

そしてやはり村山先生の作品は、情景描写が綺麗。
主人公のハナは千葉の房総の田舎に住んでいるんだけれど、そこの天気の移り変わりだとか、庭の様子だとかそういうものが細かく描かれてて、とても素敵でした。
庭に咲く色とりどりの花々の様子や、台風の時の風の様子など、なんか季節を描写しているのがとても綺麗だった。
あと基本は、ハナ視点で描かれてるのでトキヲの気持ちを読み取ることはセリフでしかできないけど、そのセリフが全部関西弁なのがまた素敵。
なんかその口調が柔らかく感じて、なんか甘えたくなる感じがある(関西弁に憧れがある関東人だからかもしれないが)。
ハナの我儘な部分の心情描写、そしてトキヲのちょっと頑固者の心情描写と、すべてが細かく描かれてて淡々とした日本映画の心地よさみたいなものが伝わって私はとてもいいなと思った。
正直、山もないし谷もなくて平坦な日常がずっと続いてく物語なのだけれど、ゆっくり読むにはこういう作品もいいと素直に思えました。

3.幸せな日々を描くのって難しい

最後の書評が小手毬るい先生なのだけれど、この作品に流れている幸福が愛おしいとかいてて、不幸を書くのは易しいしかし幸福を書くのは難しいと描いてて、なるほどなって思った。
確かに不幸であることはドラマチック、山あり谷ありを書くのはもちろん大変ではあるけれど、メリハリのない物語をたんたんと描くのは非常に難しいとは思う。
幸せって人それぞれで、人が感じる幸せって本当に難しい。不幸な事のほうが、わかりやすいし共感ができるって意味でそうかもしれない。
本当に、ハナとトキヲは夫婦みたいだけど夫婦じゃなくて、ちゃんと長年付き合っているけど体の関係もあり、そして遠距離だからこそ会いたくて会いたくて震えるみたいな感じになっている。
そんな忘れてしまった10代の頃の恋愛も40代になってもできる、そんな二人の関係が永遠の初恋なんだろうなって思いました。
夫婦だときっとこうはいかないのかもしれない。そうできる人はいるのかもしれないけれど。

そういう意味でとても有意義な作品でした。
愛読書にしよう、と思った。
以上、もし興味がわいたら読んでみてください!

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