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他人にどう思われるより自らの倖せを『汝、星の如く』by凪良ゆう

本屋大賞受賞という事と、前作の流浪の月がとても心に響いたので、すっかり凪良先生のファンになってしまった次第。
ずいぶん読んでから日が経ってしまったけれど、書評を残しておこうと思います。
個人的には、今年読んだ本の中で一番の名作になりそう。
映像化…ありそうだな、くらい社会問題や正しい事とは何か、を訴えかける作品でした。
いつもの様にまとめて書こうかな、とも思ったのですがやっぱりまとめるの下手なので、つらつらと文章を書いていこうと思います。
基本的にネタバレに気を付けて書いていこうとは思うのだけれど、ストーリーが解っていても、何度でも読み返したくなる本だとは思いました。
うっかり本屋で購入して、喫茶店で待ち時間などに読んではいけない本でした。
涙なしには見られない。
そのくらい、切なくて悲しくて大切な人に会いたくなる、そんな作品でした。
うっかり人を待ってる時間に読んで、喫茶店で号泣するメンヘラばりに恥ずかしい思いをした私に言いたい。
家で読め、と。

主役は、瀬戸内海の小さい島で生まれ育った女性である暁海(あきみ)と、その瀬戸内海の小さい島に高校生で引っ越してきた男性である櫂(かい)の二人です。
二人が17歳の高校生から、32歳までの人生を記した物語。
瀬戸内海の小さな島の美しい風景が目に浮かぶ様な文章で、凪良先生の表現力の美しさが際立つなぁって思いつつ、瀬戸内海行ってみたいなって正直思いました。
暁海は、父親が不倫相手のもとにいったまま戻らず、そんな父親や不倫相手に恨みと執着を募らせ、精神を病みアルコール依存になった母親の面倒をみています。
櫂もまた、母親が恋愛体質で男がいないと生きられず、つねに男と息子である自分に依存しその母親の面倒を見ている。
いわゆる親ガチャ失敗、機能不全の家庭に育った者同士です。
お互い解り合える似たもの同士であり、機能不全の家庭で育った故の年齢より大人びた二人は、惹かれ合いやがて恋人同士になっていく。
でも二人は大人になり離れ離れとなり、東京に出た櫂は東京に染まり、だんだんと心が離れていく…。
こう書いていくとありきたりなストーリーと思われるけれど、毒親との関係の二人の描写が、本当につらくて切なくて辛かった。

今まで人生で出会ってきた人を思い返し、まともな親のもとで幸せな人生を送ってきた人の価値観と、お世辞にも親とは思えない毒親のもとで育ってきた人の価値観と精神状態がまるで違う事を見てきました。
例えばわかりやすい例をあげると、結婚相手の親と必ず挨拶すべきという人は大体前者の人です。
人によっては、親と死んでも会いたくないという人間がいるなんて、想像さえもできない人が意外と多かったりします。
会えばわかってくれるよ、という事を相手に言う人は、親に愛されてきたんだな幸せな人生を歩んできたんだろうな、君は幸せだねと心の中で思います。
今まで出会った人の中で、機能不全の家庭で育ってきた人は、たいていメンタルに何かしらの問題を抱えている人の割合が多いです。
精神科にかかって薬を処方してもらっている人や、ギャンブルや恋人や何かに異常に執着し依存してしまうひとなど。
そしてとてもちょうどよく甘える事が下手…、幼少期のころに甘えられなかった反動で異常に無償の愛を求める人も多々います。
作品の中の暁海と櫂も、同じ様に他人に甘えるのが下手で、うまく生きるのが下手な大人になっていく。
その過程が本当に痛々しすぎてリアリティがあって、読んでいて何度も何度も泣いてしまいました。

あとこの物語には、二人を見守る大人が出てきます。
ひとりは男性の担任の独身だけど娘がいる、北原先生。
あとは暁海の父親の不倫相手であり暁海の家庭を壊す要因となった、瞳子(とうこ)さん。
北原先生はまるで、人生何週目なんだろうというくらい、できた大人です。
担任教師として彼らを見守り、そして助言を与えます。
しかし完璧な包容力のある大人なはずなのに、娘の母親はかつての教え子つまりは高校生だったという、むしろ犯罪なのでは…という事実があり、彼の過去もスピンオフ作品として出ているそうなのでいつか読んでみたいと思っています。
北原先生の語り掛ける言葉は優しく、そして弱く若い彼らに寄り添い、学生の頃にこんな先生に出会いたかったなぁと思わせるくらい理想の先生です。
ある意味物語の唯一の救いは、この北原先生だろうなぁと思いながら読んでました。
そしてもう一人が、瞳子さん。
彼女は暁海が本来なら憎しみをぶつける相手であるはずなのに、暁海は瞳子さんをむしろ葛藤しながら、心の中では尊敬し本当の母親より母親みたいに慕っている人の位置づけかもしれません。
だって本当の母親は、彼女に依存し鬱憤を晴らしたりするだけで、彼女に愛を与えてくれない母親だから。
瞳子さんは他人に依存しない、そして自力で稼いで生きていく刺繍作家です。
ただ彼女も素晴らしく大人で自立しているのに、なぜか暁海の父親と別れる事はないという、悪魔の様な一面を持っています。
不倫はいけない事、後ろ指刺される事、他人を不幸にする事なはずなのに、物語を通じてわたしも彼女を嫌いになれませんでした。
なんか人間って、仏の様でもあり鬼の様でもあるという一面を、瞳子さんを通じて突き付けられたなぁという衝撃です。
ネットの書評とか評判見ると、この瞳子さんの存在が結構賛否両論だったイメージです。
正しい事、優しさってなんなんだろう、なんとなくこの人を通じて考えさせられてしまいました。

ラストはぜひ読んで感じてほしいので書きませんが、涙なしには読めません。
何度読んでも、涙が出てしまうくらい、でもそれでもこの結末でよかったと思う様なラストです。
心が温かくなります。
全体を通して、正しい事ってなんなのか、人生ってなんなのか。
愛するとか大切に思う事ってどういうことなのか。
大切な人さえ自分の事を理解してさえくれれば、世間がどう思うってもいいんじゃないんだろうか。
真実は本人たちしか解らないのだから、と。
SNSやネット社会で、他人にどう思われるのを気にして生きて行っているみんなに、そう問いかけている様なそんな小説でした。

長くなってしまいましたが、あまりにもいい本だったので、書き綴ってしまいました。
誰かの参考になれば、幸いです。
また、いい本に出会えますように。
次は東野圭吾先生のラプラスの魔女の続編読もうかな。


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