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英語は翻訳すると伝わらない?

"英語学習"をなんとなく勘違いしている人を安心させる何か ②
英語学習に関する誤解を紹介。必要以上に身構えて英語自体を怖がったり、不要なストレスを感じているかもしれません。これから英語学習を始める方のため、"英語学習の誤解"を紐解いて説明したいと思います。

前回の「日常会話レベルを目指す、は間違い?」に続き…、
今回は「英語は翻訳すると伝わらない?」を紹介します。

「"お疲れ様"の英訳ってなんですか?」

日本企業の社内メールであれば、8割方の書き出しは「お疲れ様」ですね。私の職場では英文に馴染みの無い人から、どう英訳するか質問を受ける事があります。"お疲れ様"は正しく英訳できますか?いろいろ訳し方はありますが、下記は一例です。

Thank you for your support.
あなたのサポートありがとう。
I hope you are well.
あなたが元気でありますように。

…全くしっくり来ないですね。"お疲れ様"の英訳に100点満点の英訳はありません。そもそも、"お疲れ様"はとても様々な場面で便利に使える言葉です。挨拶・お礼・労い・励まし・応援…、どれも"お疲れ様"のイメージとして正解でしょう。

思い切って訳さない

では"お疲れ様"はどう訳すか? 
私なりの答えは、「もういっそ訳さない」です。
つまり、"お疲れ様"をそっくり消去してしまいます。伝えたいメッセージが無いなら不要です、無理に英訳する必要はありません。逆に、伝えたい事がはっきりしているなら、その英訳を伝えるべきです。

①昨日、遅くまで残ってくれて感謝している
 Thank you for working late yesterday.
②締め切りが迫っていて最近忙しそうだ、頑張って欲しい
 We are close to the deadline, I appreciate your hard work.
③「お疲れ様はもはや挨拶だから、何か言いたい」という方は、
 Hello,
 Good morning,
 How are you?
常用の挨拶英語を置いておきましょう。

"お疲れ様"は便利ゆえに意味が広い言葉であって、
機械的に英訳しても"無味無臭"のつまらない英文になってしまいます。日本語の中には、当たり前のように使っている言葉でも、そもそも何の意味があるのか?冷静に考えると薄い意味しか無い場合があります。そういう時は、「もういっそ訳さない」を試してみてはどうでしょうか。

便利な日本語は、伝えたい動詞を考える

他にも、便利なビジネス日本語として、展開・確認・対応、があります。

"展開"は、「新たな事業を始める」「みんなと共有する」という意味で、"メールを展開する"のように使われます。
展開だからdevelopやexpandを使うと、全く伝わりません。shareやsendを使いましょう。

"確認"は、「何かを読む」「間違いを見つける」「証拠の裏付け」で使われます。この"確認"が最も用法が広いです、正直日本語同士でも誤解が生まれていると思います。
①添付を確認下さい⇒ 見て下さい
 See the attached.
②資料を確認して頂けますか⇒ 間違いがあるか無いかチェック
 Could you check my document?
③客先の要望をもう一度確認してみて⇒裏をとって下さい
 Please confirm the customer requirement again.

"対応"は、「担当する」「対処する」「回答する」など。
①この案件を対応して下さい⇒担当する
 Please take care of this issue.
②迅速なご対応ありがとうございます⇒返事・回答ありがとう
 Thank you for your quick reply.
①はin charge of、②はresponseを使っても大丈夫です。いずれにしても、直訳のcorrespondは安易に使わないように注意して下さい。

これらは便利というか、TPOで意味が変わります。だから、直訳単語を使うと伝わりません。便利な日本語単語は、伝えたい動作=動詞で考えるとすっきりした文になります

日本語と向き合う

「ご確認頂けますよう宜しくお願いします。」
「ご対応頂ければ幸いです。」
これらの日本語は、前後の文脈の流れで初めて意味が生まれる文章です。この文章だけでは実質中身はゼロです。仮に英訳したところで、文章が長くなり、伝えたいメッセージを分かりにくくし、ただただ誤解の元です。私なら「もういっそ訳さない」で消去しますし、仮に訳しても"確認""対応"の真意を動詞で考えます。

これらの文が日本語社会で伝わるのはなぜでしょう?

それは、受ける側が頑張って理解しようとしてくれるからです。伝える側が、何も考えずに便利単語を使っていても、受け手側が「この人は何を伝えたいんだろう」と歩み寄る態度を持っているからです。日本語社会の潤滑油として、便利な言葉が便利なままで生き続けられる理由だと思っています。

言語の勉強とは客観的に自分の言語を考える機会だと思っています。実際、私も英語圏へ赴任して、英語力と同じぐらい日本語力が向上しました。「伝えよう」という気持ちが強くなると、今まで当たり前に使っていた日本語が、なぜ伝わっていたのか、不思議に思えてきました

それ以来、英語を考える時は、自分の日本語に「伝えたい事は何か?」を5回は問いかけます。受け手側の読解力に頼って、一人よがりな日本語を使っていないか?自問自答を繰り返しています。あなたも伝えたい気持ちを膨らませ、あなたの日本語と向き合って下さい。きっと、すっきり・はっきりした英語が生まれてくるはずです。

まとめ

"お疲れ様"を例に、日本語の便利さ、機械的に翻訳する危なさを紹介しました。翻訳する際には…、
・相手にして欲しい事・伝えたい事は、動作=動詞で考えてみる。
・形式な文章は思い切って訳さない。
・英語力向上=日本語力向上
・「結局伝えたい事は何か?」5回は問いかけてみる
相手の理解力に期待せず、あなたが主体的に伝える側へなりましょう。
きっと伝わらない英訳からは卒業できますよ!

次回は「リスニング力が足りないから、聞き取れない?」をお送りします。

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