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艦これ二次創作

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記事一覧

夜間航路 -時雨降る薔薇の丘-

――嵐。

隊列を率いる少女の姿をした影が、荒れ狂う嵐の中を放り出されたように漂っていた。『それ』の数は、少数。波に対する影の小ささもさることながら、人数の少なさが、一層状況の過酷さを物語る。

『それ』……『彼女たち』艦娘の隊列の先頭は険しい顔で海面をにらんでいた。少人数での任務中であった上にこの嵐では索敵も満足にできず、旗艦の肉眼観測だけが危険回避の唯一の手段だ。1時の方角、はるか彼方に渦潮と

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不知火

「今朝提出してもらった遠征艦隊の報告、読み終わったところだ。上々な結果だな」

「は。ありがというございます」

「まぁ、そう固くならなくてもいいぞ。」

「うーん……」

陽も傾きかけた昼過ぎ頃。提督をはじめとした面々は昼食後の予定組と、報告を着ていた。

「報告と一緒に要望されていた、艦隊内の何人かの近代化改装の件は進めておく。それから、錬度の均衡化もな。そっちの方は少し待ってくれ。別な作戦の

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【艦これ二次創作】利根型と星空 1

雨模様の初夏。
こんな日は決まって、利根型の二人がシミュレーター室を借りに来る。
その中でも二人が借りるのは、夜戦演習に特化した特別性の部屋だ。
元々は川内辺りの使用が想定されていたのだが、彼女は本物の夜戦の方が好きなようでこのシミュレーターの使用頻度はあまり高くない。
その為使用用途が限られるこの部屋は割と空きが多く、結構な頻度で利根型の二人が使うこととなっていた。

この部屋は夜戦の演習を主な

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青葉の取材日記 #2

「……さて、こんなところでいいかしら?」
千歳はひとしきり隣の時雨と会話をし終えると、テーブルの低い椅子を挟んで向かいに座っている青葉の方を振り向いて言った。
「はい、これだけ分量があれば、記事を一つ書くのには十分だと思います。お二人とも、どうもありがとうございました。」
「どういたしまして。時雨も、付き合わせちゃってごめんなさいね。」
「いいさ、僕も久しぶりに昔話ができて楽しかったからね。」

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青葉の取材日記 前篇

「えぇと……取材、ですか?」
久しぶりに秘書官として呼ばれた提督室で聞いた命令に、青葉は首を傾げた。
「それも、主に実働部隊の皆さんの誰かを、ですか。」
提督の言葉を聞けば聞くほど、青葉の表情に怪訝さが増える。
「しかしあの、提督は大体の皆さんについて自分でお話はされているかと思うのですが……?」
「まぁそれはそうなんだが。少し違った視点で、改めて皆の普段を記録してきてほしいんだ。」
「はぁ。」

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利根型と星空 2

そんな利根型の、演習室でのやり取りを知ってか知らずか。ある日、提督の提案により鎮守府の面々で夕涼み会を開くことになった。日が沈んでからは天測航法の演習――という名目の、天体観測兼水遊び大会も予定されている。

「ちょっとばかし、涼しくなって来たな」
「天龍ちゃーん?早く割っちゃってー。」
「おうよ!フフフ……俺の棒捌きを見てろよ……!」
「右舷へまわれ!そうだ、そのまま12時の方角だ!」
「天龍、

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