見出し画像

「締め切りの存在」 +デザイナーズノート

この記事を、Board Game Design Advent Calendar 2023の19日目に捧げます。


当初は「アニメ原作ボドゲの作り方/スパイ教室 ボードゲーム《ダークリープ》デザイナーズノート」の予定でした。

こちらを期待していた方はごめんなさい。
清書や各関係者への確認に時間がかかることから代わりの記事として急遽、前日(12/18)にこちらを書いています。

この記事では主に「締め切り」について書いていこうと思います。
(書こうと思っていた記事が締め切りに間に合わないので戒めとしてこの題材を選びました)



◆自己紹介


はじめましての方もいると思うのでまずは自己紹介から。
ボードゲームデザイナーの明地宙(メイチソラ)と申します。
2014年よりSoLunerGとして創作活動をスタートし、これまでに18作品を発表しました。
BUNGU GAMESやNagoyaGuildの代表もしています。
代表作は「ゲームマーケット大賞2019」の大賞受賞作『FOGSITE/フォグサイト』です。
昨年から大学や専門学校、オンラインサロン等で講師も務めています。
よろしくお願いします。


◆締め切りの存在-1


早速ですが質問です。

あなたはゲームマーケットでオリジナルゲームを発表したいと思っています。
この場合、次のAとBのうちどちらの方法を選びますか?

A.ゲームが完成してからゲムマに申し込む
B.ゲムマに申し込んでからゲーム作りを始める

どちらの方法でも「ゲムマでゲームを発表する」という目標は達成できると思います。
それぞれの方法について深掘りしていきましょう。


A.ゲームが完成してからゲムマに申し込む

まずはゲームを作るところからスタートします。

「来年のゲムマに出したい」というような目標を定めるかもしれませんが、この時点では明確な締め切りは存在していません。
もし完成しなければ再来年のゲムマを目指してもいいわけですから。

この方法だとプレッシャーもなく、気楽にゲームを作れますね。


B.ゲムマに申し込んでからゲーム作りを始める

まずはゲムマに申し込むところからスタートします。

これにより開催日が最終締め切り(デッドライン)として設定されました。
ゲームが完成しなければゲムマ当日に発表するものはありません。

この方法だとなんとしても間に合わせなくてはならないという気持ちになりますね。


もう一度、視点を変えて質問です。

ここにゲームマーケットでオリジナルゲームを発表したい初心者さんがいます。
(ゲーム経験も少なく、発表したいゲームの内容は全く決まっていないものとします)
この場合、次のAとBのうちどちらの方法を薦めますか?
(選択肢は先ほどのものと同じです)

A.ゲームが完成してからゲムマに申し込む
B.ゲムマに申し込んでからゲーム作りを始める


「Aの方が始めやすいのでは」「Bは厳しすぎる」
などと思った方もいるのではないでしょうか。

私はむしろ、初心者さんにはBの「ゲムマに申し込んでからゲーム作りを始める」を薦めたいと思っています。
(その理由については後述します)

Aには締め切りがなく、Bには締め切りが存在します。
ここでタイトルの「締め切りの存在」について考えていきます。


「締め切り」という言葉にあなたはどんな印象を抱きますか?

「恐ろしい」「嫌い」などネガティブな印象を持つ人の方が多いように思います。
特に締め切り直前まで苦しんだり破ってしまった経験のある人は、締め切りに対して嫌悪感があるはずです。

もし、締め切りをポジティブに捉えることができれば、迫ってくる恐ろしいものから、待っていてくれる心強い存在に変わります。
次の章で「締め切り」を味方につけていきましょう。


◆締め切りの存在-2


「締め切りがあることで計画が立ち、締め切りまでにゲームが完成する」
と私は考えています。

締め切りは完成の一つの指標になり得ます。
締め切りがあるとそこから逆算で今なにを優先してやらなければならないか、どれならできるのかが決まってきます。
(この締め切りは、自分で設定した後ろ倒しにできるものよりも、デッドラインのような絶対に動かせないものの方が効果的です)

ゲームを無計画で作り始めるとなかなか完成に向かいません。

そもそも「ゲームの完成」を見極めることは非常に難しいです。
まず、ゲームの完成を第三者が判定することはできません。
要素を足したり引いたりと、ルールもアートもこだわろうと思えば際限なくこだわることができるからです。
作者が「完成!」と宣言した時が「ゲームの完成」になるのです。

締め切りがあれば、この限られた時間の中で作者が最も納得した段階で「完成!」と宣言し、ゲームを完成させることができます。


初心者さんにB(先に申し込み)を薦めたいのは上記の理由からです。
経験が浅いうちはゲームの完成を見極めようとしているうちに迷路に陥りかねません。

複雑で要素の多いゲームでなければ申し込み後から考え始めても十分に間に合うと思います。
ここで一度印刷の工程も含めて体験することで、次回からはさらにレベルアップしたゲームを作れるようにもなります。
(もちろん時間をかけて作りたいゲームがある場合はこの限りではありません)

制作経験のある方なら締め切りがなくても計画を立て、ゲームの完成も自分で見極めることができるので、A(先に制作)のやり方でも上手くいきますね。

2023/12/19/0:30追記
「未完にならないように」「まずはスモールステップから」などの意図もあってBを推しましたが、こちらの記事を読んで納得するところもあったので下記に引用させていただきます。
こちらの考えの方が賛同者が多いかもしれませんね。

西山氏曰く,「僕らは面白いゲームを一緒に作りたいんです。”ゲームマーケットに出たいからゲームを作る”とか”スケジュール的に作らないといけないから作る”なんてのは,正直止めた方がいい。仕事だったらそれも仕方がないかもしれないですが,趣味で作るのであれば余計なプレッシャーに負けず,“面白いものができた”ときにこそ相談してほしい」とのこと。

 つまり楽しんでゲーム制作に向き合ってほしいということで,イベントに出るかどうかは,その次の話ということなのだろう。

4Gamer.net「ゲームマーケット2023秋」スペシャルステージレポートより

Xにて行ったアンケートも掲載します。
1問目はほぼ半々、2問目はAの方が少し多いという結果になりました。


「計画を立てるのが苦手…」という私のような方へ。

締め切りが近いほど計画は立てやすくなります。
苦手な方ほど締め切りを短く設定するといいでしょう。

もしこれにより時間が足りないことに気づいたらなんとか時間を生み出しましょう。
休憩時間などを制作に充てることができるはずです(睡眠時間は最終手段)。

ちなみにこれは「ゲムマ数日前に新作を作ろう!」という狂気の呼びかけではありません。
締め切りを短く設定するというのは、「〜日までに〇〇を完成させる」というような短期目標のことです。


◆デザイナーズノート


ここから実例です。
(実例と言いつつゲムマ直前で作る狂気のやつなのであまり参考にはならないかもしれませんが…)

私は今回のゲームマーケット2023秋に向けて「ぼくのかんがえたつよいやつ」というポストカードゲームを作りました。

制作に至った流れとしては、
▼ゲームマーケット前に思いついた面白そうなアイデアがあった
制作中の新作が完成したことで新作を作る時間ができた
▼ゲムマ直前にたくさんの新作情報を見聞きして創作欲が高まった
▼ゲームマーケットチャレンジ2023への参加意欲が湧いた
▼名刺の代わりとして配布するアイデアを思いついた
という感じです。


この記事の「締め切り」を意識し、ここからはダイジェストでお送りしていきます。

まずはアイデアのタネを見つけたところから。

「ゲムマに間に合わせるならこれだ!」とこのタネを育てていくことに。
頭の中で考えながらまずは手を動かしていきます。

具体的な内容が思いついていないときは、やりたいこと/楽しいことから取り掛かるのがいいでしょう。
私はロゴ制作が好きなのでタイトル考案→ロゴ制作→アート制作と今回は形から入りました。
ただ、休憩時間はルールのメモを見直すようにして、手を動かしているときも常にルールについて考えるようにしていました。

ある程度進んだら、ゲームマーケット公式の【宣伝支援 スレッド企画】にて制作宣言を行いました。
この時点では実はまだ30%くらいしかできていません。

第三者に見える形で宣言をすると締め切りをより強く意識するようになります。

自分を追い込む形にはなるので万人にはおすすめできませんが、誰も見ていないとサボってしまいがちな私のような人には有効です。

今回の目的は「ゲムマに出すこと」だけなので気持ちは楽でした。
(目的が「たくさん売ること」ならもっと早く締め切りを設定して動く必要がありますが…)

時間がないので自ずとやれることは決まってきます。
頼れるメンバーにも協力してもらいつつテンポよく進めていきます。
テストプレイも同時並行でやっていました。

進捗もこまめに出して、「締め切りに絶対に間に合わせる」という意識が途切れないようにしていました。
流行りのchatGPTにも協力してもらいつつディテールを整えていきます。

出来上がったら告知をします。
この時点ではまだ現物もなく、完成はしていません。

印刷をしてついに完成!

ここで完成を宣言しました。
ゲムマ前日でした。
設定した締め切りに見合うものができたと思います。

さらに時間があれば当然クオリティは上げられますが、納得感はありました。
締め切りのおかげで作品が完成したのです。

やはり締め切りは味方でした。

「ゲムマに出すこと」が目的でしたが、反響があるとやっぱり嬉しいですよね。

この記事を見て「ぼくのかんがえたつよいやつ」が気になった方はぜひご連絡を!
お待ちしております。


最後までご覧いただきありがとうございます。
このリカバリ記事もなんとか締め切りに間に合いました。

読み手として毎年楽しみにしていた
Board Game Design Advent Calendar 2023
に書き手として参加できてよかったです。
他の方の記事もどれも興味深いものばかりなのでぜひチェックしてみてください。

短時間で作る方法については別の記事で書いていますのでよければこちらもチェックしてみてください。

予定していた「アニメ原作ボドゲの作り方/スパイ教室 ボードゲーム《ダークリープ》デザイナーズノート」
については12/31までに公開します!お楽しみに!

《新たな「締め切り」が設定されました》


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?