私と鳩と青空と
一羽の鳩がこちらを見ている。
ベンチに座ってノートを書いている、私の方を。
何を思ったか、こちらにどんどん近づいてくる。
人慣れしているなあ、と思った。
…もしかしたら、魔法で鳩に姿を変えられた、私の運命の人…だったりするのだろうか。
そんなわけないけど。
ついにその鳩は、私の足元まで来た。そんなに近くに来るとは、予想外だった。
ここで、私はあることに気づく。
最初は一羽だった鳩はいつの間にか三羽になっていた。
「君たち、餌狙いだろう。残念だな、私が持っているのはノートとペンだけだぞ。」
私は鳩たちにこう語りかけた。とは言っても目線で。
私が餌を持っていないことに気付いたのだろう。次の瞬間、鳩たちはどこかへ飛んでいってしまった。
私は何だかちょっとだけ、惜しい気持ちになった。
もしかしたら、最初に私を見ていた鳩は、本当に魔法にかけられた運命の人(鳩?)だったかもしれない。
後から来た鳩は、召使とかそういうお付きのひとなのかもしれない。
絵面を想像して、その可笑しさに私はクスッとする。
…
パンくずの一つでも、持っていたらよかったなあ。
そんなことを思いながら、空を見上げる。
青空の真ん中を、三羽の鳩が飛んでいた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?