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三連休に読んでほしい短編集の話するわ

やってきますよ三連休。
大阪ー兵庫間の往来自粛が要請され、こう言われると実家に帰りたくなる不思議。ジムも自粛したほうがいいかなと思い、引きこもりを決意して今日は仕事帰りにスーパーで食料を多めに購入した。

でも普段こんなにまとまった引きこもり時間がとれない方も多いのではないだろうか。映画もテレビもYouTubeも目が疲れるし、でも本を読むのも苦手なんだよね。そんなあなたに!私が個人的に擦り切れるくらい読んでいる短編集を!お伝えします!!好きな作家さんに偏るから!!!本屋に行くなりKindleするなりして!!そして感想を教えて!!!!!

ちなみにほとんどが「最後の数行で突き落とされるようなミステリー」です。好きなので。

『都市伝説セピア』(朱川湊人 著)

「自分の周りには無い、けど近くでは起こっているかもしれないな」と思う不思議な話が詰め込まれた短編集。『昨日公園』は「世にも奇妙な物語」でドラマ化もされた。
本気で惚れこんだのは『フクロウ男』なんだけれど、なにも知らずに読んでほしいので、『死者恋』を紹介する。これもめっちゃいい。ていうか全部いい。

『死者恋』
個性的でダークな絵を描く画家、鼎凛子。あまりメディア露出の無い彼女のもとへ、一人の女性ライターがやって来る。久々の来客に、凛子は自身が画家になるきっかけとなった、淡い思い出を語る……。

鼎凛子の語り口調で進む物語。彼女の甘酸っぱい思い出話は、徐々に雲行きが怪しくなってくる。それでも読み進めてしまうのは、優しく人懐っこい彼女の語り口調に魅力を感じてしまうからだろうか。ていうか語り口調でこんなにのめり込ませる???っていうくらいに彼女の話を「聞いて」しまう。そして、「あ、なんかおかしいぞ…やばいぞ…」と思ったときには引き返せない。


この話の最後4ページ、転がり落ちるような感覚を楽しんでほしい。

『赤々煉恋』(朱川湊人 著)

表紙詐欺とはこのこと。「おっ、可愛い表紙やんけ」と手に取ったら、一話目から後頭部殴られたような気分になったわ(褒め言葉)。

『私はフランセス』
旧友への音声メッセージで語られる物語。閉鎖的な町、偏った考えの家族のもとで育った主人公が、ある事件をきっかけに家を出て、どん底の生活を送る。その中で出会った彼、そして彼との生活……なぜこんなメッセージを、交友の続いていない、親しくもなかったクラスメートに送るのか。

大好き。なんでかって?前に紹介した鼎凛子の絵が出てくるからだよ!!もーーー気づいたときにめっちゃ興奮した!朱川さんの世界!繋がっている!彼女たちは!同じ世界線で生きてる!!!
主人公の壮絶な生い立ちは共感できずとも想像すると辛く、彼女の心情描写に共感すると眉間にシワが寄り、だからこそ彼と出会った時、受け入れられた時の甘酸っぱい感情や、どうしても顔を出す嫉妬心にも頷いてしまう。そして最後、世の中に認められないとしても、彼女達は幸せであるし、そしてそこには……。

『満願』(米澤穂信 著)

これめっちゃいいい。読んでてクラクラするくらいどんでん返しがある話ばかり。ちょっと選べないから2話紹介するわ。

『万灯』
商社で働く主人公は、社の資源開発の最前線で活躍するビジネスマン。インドネシアでの開発が軌道に乗り、バングラデシュでの新たなプロジェクトの開発室長が任命された。しかし、天然ガスが眠る土地近くの村が、この開発の障壁となった……。

主人公の優秀すぎる経験から来る、村の村長への感情、他人の分析、考え、予想には痺れる。格好よすぎる。絶対友達にはなりたくないけど、「優秀な商社マンとはこういうことか」と目が覚める思い。だからこそ彼がマズいと思う描写があるとこちらも冷や汗をかくし、彼が「ああ、ダメだ」と感じると焦ってしまう。彼はいかにして村を説得し、開発を進めようとするのか。あなたも彼らのジープに乗るのだ。

『関守』
フリーライターの主人公は、山中のドライブインに訪れた。この先にある峠の事故を取材し、小さな都市伝説雑誌に載せる記事を書かねばならない。古ぼけたドライブイン、中にいたのは小さな老婆一人。どうやら彼女は長ここで店をしており、峠の事故の件も覚えているというが……。

おばあちゃん!!!!!!!!という気持ち。
おばあちゃんがポツリポツリと話す事故の被害者達、なんの関連性もなく、どうこじつけて霊のせいにしようか、ていうかなんだこの新聞記事の羅列みたいな話は、と思っていたら……いたら……!!
でもおばあちゃん、話し上手なので序盤からスラスラ読める。最後まで読んでから、タイトルにぞわっとする話。

『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信 著)

お嬢様は、好きですか?
夢想家のお嬢様が集う読書サークル「バベルの会」。メンバーを巡る邪悪な事件。「ゴシックミステリー」というジャンルがあるなら、この物語達がそのものなのではないかと思う。表紙も綺麗。こんな絵画に囲まれて育ったような、そんなメンバーをとりまく事件達。

『北の館の罪人』
内名あまりは、六綱のお屋敷の使用人。彼女は母の遺言からすると、六綱の主人と血が繋がっているらしい。しかし主人はもう年老いて、現在家を仕切っているのは光次郎だった。彼の指示であまりは、本館の北にある館、そこに住む早太郎の世話をすることになる……。

この話だけでなく、すべての物語の語りが丁寧、上品、綺麗な言葉で紡がれている。その美しさの端々に見え隠れする「うす暗さ」がたまらない。
中でも『北の館の罪人』は、あまりが最後まで隠し通した本性、そしてそれを上回る衝撃があり、すぐに読み返したくなる。まるで「悲しい中でも最上のハッピーエンド」を迎えたと思った、その次から駆け下りる速度がすごい。落ちるとはまさにこのこと。

『私の家ではなにも起こらない』(恩田陸 著)

レタスクラブとかオレンジページとか好きな人はこの本好きやと思う(軽率)。
小高い丘の上の一軒家、その家で起こった出来事の物語。さも「平和な日常ですが?」という描写で、恐ろしい出来事が起こる。

『私は風の音に耳を澄ます』
主人公は一軒家の地下に住む少女。家の主人と、一緒に暮らす女性の生活に心を寄せる。もちろん主人公も住人だが、街で起こる事件が怖くて、地下で過ごす方が落ち着くのだ。ほら、今日も彼女が起きて、朝ごはんの準備を始める。

生活の描写が最高。パタパタという足音にはじまり、朝ごはんを作る手順、女性の癖、手際よく出来上がる料理、静かな食事風景……主人公が心を寄せ、大切に思っていることがよくわかる生活。だからこそ、言葉の言い回しに、主人達への愛おしさが滲み出ていて、読んでいて心地良い。ええ、ラストシーンがどんなに悲惨でも、そのシーンさえも光が差し込んだ綺麗な場面を想像してしまうほどに。

『ホテルローヤル』(桜木柴乃 著)

はじめて読んだ時は読んでも読んでも重たくて「二度と読むか!」と思った。社会人になってから読むと、視点が微妙に変わって予想外の話が沁みる。辛い。

『バブルバス』
恵は主人と墓地に立っていた。住職がいつまで経っても現れない。確認すると、先方のミスで予約が入っていないという。住職を断り、浮いたお布施を片手に、二人は車に乗り込む。帰りがけにふと目に止まった、「ホテルローヤル」の看板。そして……。

二世帯で住う、裕福ではない夫婦の、ふとした時間の話。ここ数年で一番の思い出、その合間に挟まるお金の描写が生々しい。生活に追われ、お金に追われ、自分たちはいつの間にかここまで来ていたね、ああ、なんか泣けてきた。こんなに切ない夫婦話があるかよ。最後にちょっと希望が見えるのが良かった。夫婦とはこういうものか、私は何十年も一緒にすごして、2人になったときにこんな話ができるような人と出会えるのか。

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てかこの記事書きながらAmazon見てたら欲しい本たくさん出てきたわ。明日本屋さん行こ。
みなさんも良い読書生活を。
おすすめ本とか感想教えてもらえると嬉しいです。





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