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家庭で出来るトゥションカ(ロシア風肉缶)の作り方


ロシア界隈の一部でトゥションカと呼ばれる缶詰肉の存在が知られて久しい。

特にミリタリー界隈に於いてはレーションとして支給されていた事や、野戦食や艦上メニューの一つである『海軍風マカロニ』(Макароны по-флотски) 等を通じてこの缶詰の存在を知った方も少なくないと思う。

特にレーションとしてのトゥションカは大祖国戦争に於いて、アメリカからのレンドリース食品の一つとして重宝されていたことは、この時代のソ連軍事史に詳しい方ならご理解頂けると思う。



これらは以前著者が作成した動画である。

前者はVK(В контакте:CIS圏版Facebook)の歴史再現グループ «ТИТВСИЙ ГАРНИЗОН»

の動画に日本語字幕を付けたものであるがトゥションカのみならずレーションのメニューやレンドリース食品の種類、労農赤軍に於ける補給任務を考察する上で大変参考になる資料の紹介もなされている。

後者は所謂「ゆっくり解説」形式を取っているが、巷で言われる海軍風マカロニの由来や作り方、ロシア料理に於ける基本までロシア語資料を基に解説しておりミリクラ、歴クラ両方におすすめできる。

どちらも面白いのでもし余力があれば見てほしい。

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さてこのトゥションカだが、結論を先に言えばこれが国内ではまず手に入らない。

一部規制緩和の動きもあるようだが、一昔前に流行ったBSEや口蹄疫、昨年話題になった豚コレラ(こちらは廃棄された中国産肉製品からイノシシを経由して感染拡大した模様。余談だがこの頃筆者は災害派遣で感染豚の殺処分に参加した経験もある)等もあり、指定された国以外からの畜産物の輸入は依然厳しい状況である。

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なので今回はいわば家庭で作れるお手軽『代用トゥションカ』の作り方をご提案しようと思う。

尤も『トゥションカ(Тушенка)』という言葉自体Тушить(トゥシーチ)、つまりは「蒸し煮する』という語が由来であり、同様の食品は缶詰技術の一般化以前から各家庭で作られていたので代用というよりこちらがむしろ本流なのだが…。

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ロシアに於いて大規模製缶技術が一般浸透するのは1930年代のソ連で、当時の食糧人民委員アナスタス・ミコヤンの指導の下アメリカを始めとする当時の先進諸国からの新技術導入がなされた後である。(レニングラード・アイスクリームやドクトルソーセージ等はそれら技術革新の名残りといえる)


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余談だがロシアに於いて瓶詰め保存食は肉製品のみならず、胡瓜やトマト、キノコのピクルスや発酵キャベツ、ジャムやコンポートなど多岐に渡り古代から作られており、農村は勿論都市生活者にとっても夏の間に週末にダーチャで作った野菜からこれら保存食を大量に製造し保存するといった風習は21世紀の現代に於いても健在なようだ。
料理の食材としての他にザクースキ(つまみ)としても非常に優秀なので近いうちにこれらの作り方もご紹介したい。

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肉や野菜は基本的にまとめ買いの方が安いし、コロナ不況真っ只中の現代に於いて買い物に行く機会も減らせることからこうした塩漬食品の作り置きは食品ロスや食費削減といった意味でも優秀だと思う。

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(本邦でロシアンティーと呼ばれ親しまれている紅茶とジャムの組み合わせも恐らくこうした文化からくるものだろう…)

朝鮮のキムチや中東欧のザワークラウトもそうだが、野菜や果物が枯れ果て生鮮食品の生産が悉く途絶える冬に備えて作る食料保存手段の一つと考えれば納得がいく。



さて、まただいぶ脱線してしまったがトゥションカの作り方に戻ろう。

作り方や材料は各家庭によって異なる(玉葱を一緒に煮込む物、スパイスを使わない物等)ので以下のレシピはロシア語サイトに遍く存在する数多のレシピから要所要所を抜粋並びに加筆した一例であるが、作る上でいくつか共通するポイントがあるのでそれらに気をつけつつ、適宜臨機応変にアレンジして自分だけのトゥションカを編み出すのも面白いかもしれない。


・必要なもの


瓶——1リットル分。

200〜500cc用を使えば1食毎に分られて便利。

プラスチックは熱で溶けるので金属スクリューキャップ式がベスト。キャップのゴムパッキンはあらかじめ外しておくこと。

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熱源(コンロ、圧力鍋、オーブン等)

ロシアはガス資源大国なのに何故か昔ながらの電気コンロの方が一般的。

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肉——800〜900g 

牛、豚、馬、鶏、兎等何でも良いが、牛や豚はカレー用など少しサシが入っているものを使うと柔らかくなる。但し兎肉を利用する場合うさぎ好きの筆者がブルーになるのでtwitterには上げないこと。

肉は一度冷凍してから解凍してやると味が染み込みやすく柔らかく煮えやすい。

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脂身(ラード、牛脂等) ——100g 

精肉店やスーパーの肉売り場によくある焼き肉用の牛脂をもらってくればラードを買うより安上がりだ。

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塩——ティースプーン1〜2杯

肉1キロに対し1ティースプーンが目安。

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水——1〜2テーブルスプーン

こちらも1キロに対し1スプーンが目安。

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黒胡椒——5〜7粒

後述する肉を炒めるレシピでは粉末胡椒の方が良い。

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ローリエ——1枚。

こちらは好みで。なくてもよい。

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作り方1:(瓶ごと加熱する方法)


1. 肉は小口切りにカット(好きな大きさで構わない)

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2. 綺麗に洗った瓶にローレル、黒胡椒、肉の順に詰める。

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3. 瓶の上数センチ分隙間をあけ、そこに脂身を載せ塩、水を加える。

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4. 蓋を閉める。

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5. 水を入れた鍋に瓶を入れ沸騰するまで強火で煮る 

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*オーブンを使う場合は水を入れたバットに瓶を入れ200℃で沸騰するまで加熱する

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6. 沸騰したら中〜弱火にし約3時間煮る


*オーブンを使う場合150℃まで温度を下げる。


7. 煮込み終わったら火を消して瓶を取り出し、蓋にゴムパッキンを付けて冷やす(蓋を下にして鍋で冷やしたり、毛布に包んでじっくり冷やしたり多種多様な冷やし方がある)


8. 図のように瓶が密閉され、脂身と肉から出た脂肪の層による蓋が出来て肉が煮凝り状態になれば完成。

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作り方2:肉を炒めてから詰める方法


1. 先に同じ


2. 肉に塩胡椒と水を加え揉み込み15分ほど置く

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3. 脂身は鋳物などの厚手の鍋で炒めて液状化させ、その油で肉を全体的に炒める。

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4. 肉が炒まったら蓋をして弱火で2時間程煮る(圧力鍋を使ってもよい)

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5. 煮込み終わったら肉を瓶詰めする(肉は均等に分け最後に肉汁を一杯まで注ぎ蓋をすること

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6. 保存性を高める為こちらも瓶ごと鍋で煮てから毛布などで包んでじっくり冷ますとよい。

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・使い方

レシピを見て薄々お気付きだろうが、一人暮らしの1食分に肉1キロは余程のフードファイターやボディビルダーでもない限り明らかに多いので、前述のように小分けをおすすめする。


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大体海軍風マカロニに使うなら1〜2人分に対し200cc〜250cc瓶1:カップ位が丁度良いのではと思う。(4人以上の世帯やイベントでの大量調理の場合500〜1リットル瓶を使うのもアリだが。ちなみにロシア語レシピを参照するとトゥションカ1缶(300g)に対しマカロニ2〜300gとあるので概ね 肉:マカロニ=1:1位でよいだろう。


海軍風マカロニ以外にもボルシやシーなどの汁物料理や米や蕎麦、麦のカーシャ、じゃがいもと炒めてメインの1品として出してもおすすめだ。
予め肉が煮てあるので出汁が出ているし、塊肉やひき肉を使うより加熱時間が短くなる。



特に最近はゆる○ャン△などのアニメの影響でキャンプブームだし、肉などの生鮮食品の腐りやすい夏場のキャンプなどでは缶詰と並び重宝するに違いない。

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大自然の中保冷バッグを持たず、ボリュームあるロシアンミリ飯をじっくり満喫するのも乙なものではないかと思う。


*注意事項
・瓶は念のため洗浄、アルコール又は熱湯消毒すること。
・開けた際嫌な匂いがしたら喫食を避けること。
・食中毒等が発生した場合当方では責任は負いかねるため自己の責任の下万全の衛生状態で調理すること

参考サイト

こちらは肉を炒めるレシピ






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