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アメリカ大都市でシングルマザーになった話⑤

『MAID』第8話まで観終えて。あまりにも、あまりにも、過去と現在進行形の自分の経験と重なる部分があって、心がザワザワしてしまう。 特に、主人公役のマーガレット・クアリーの演技は秀逸だと思う。実母、実父、子供の父親、どこを向いても、あらゆる方向からdagger(短剣)を突き刺されるように何度も何度も傷つけられ続ける状況。そんな場所に置かれて、たとえどんなことが起きたとしても感情が溢れ出してしまわないように、頑丈な堤防で自分の心をしっかりと覆っておくことが、せめての防御策なの

    • アメリカ大都市でシングルマザーになった話④

      *『MAID』ネタバレが少しだけありますのでお気をつけ下さい。 隣の芝生は青い。貧富の差がとんでもなく激しく、あらゆる背景、あらゆる職種、あらゆる人生を持つ人々が肩をすり合わせながら、この街は呼吸している。私の親しい友人や知り合いは、芸術や音楽関係の職に従事している人がほとんどだ。ある意味で特殊な環境だからか、同じ業種で子供を持つ人はとても少ない。この街で、自分の作品づくりをしながら満足に生活できるお金を稼いで子育てをするのは簡単ではない。家賃はものすごく高い。だけれど、素

      • アメリカ大都市でシングルマザーになった話③

        そういうわけで、私はシェルターに入るという選択肢を選ばなかった。ことを荒立てずに、穏便に、物事を進める。それは、私が子供の頃からいつも選んできた道だった。すでに複雑に絡み合った問題に対して、火に油をそそぐようなことはしたくなかった。とにかく、全員にとってベストの道を選びたい、そう考えていた。 その当時、別居するにあたり何がベストな方法かを考えに考えて、いくつかの選択肢を検討していた。 1つ目の選択肢は、都市部から電車で2時間ほど離れた郊外のエリアにあるアーティストハウジン

        • アメリカ大都市でシングルマザーになった話②

          *『MAID』ネタバレが少しだけありますのでお気をつけ下さい。 元夫になる人の名誉のために言っておくけれど、私はもともと彼の「人柄」を好きになったのだ。人当たりが良くて、いつも笑顔で、時々拙くなる私の英語も辛抱強く聞いてくれる優しい人だった。付き合い始めた当時からずっと、私のキャリアも応援してくれたし、色々と協力してくれた。私達はとても仲が良かったと思う。同じ業界で活動していることもあり、共通の友人もたくさんいて、社交の場でも彼は私のことを褒めてばかりいるような人だった。彼

        アメリカ大都市でシングルマザーになった話⑤

        • アメリカ大都市でシングルマザーになった話④

        • アメリカ大都市でシングルマザーになった話③

        • アメリカ大都市でシングルマザーになった話②

          アメリカ大都市でシングルマザーになった話①

          19歳の時に留学生としてアメリカにやって来て、気づけば約20年が経っていた。夢を追いかけて渡米して、その夢が指の間からこぼれ落ちてしまわないように、ただがむしゃらに走り続けた。20代の頃には、この国で大人として暮らすという事がどんなことなのか右も左も分からない状態で、なんとかビザを取って、なんとかお金を稼いで、なんとか一人暮らしをして、私にとっては夢のような環境の中で切磋琢磨しながら暮らし、それなりに色んな恋愛もくぐり抜けてきた。20歳になる直前でまったく新しい環境に放り込ま

          アメリカ大都市でシングルマザーになった話①